三枚 邪悪なる婚姻の章

第9話 暗黒披露宴

 お菊さんは結婚式に備えて皿を数えていた。封印寺の幽霊達は大忙し。お岩さんを中心に幽霊達が走り回った。


 一つ目小僧も唐傘も楽しそうに準備をしている。

「お菊さん良かったね」

 一つ目小僧が話しかけると、カランコロンと返事をした。皆、心から祝福をしているようだ。


 溶けこっこは、歌の練習をしている。端切れのいいラップだ。

『俺達ゾンビは消費期限切れ、肉も溶けたし骨丸出し。バサバサと空飛べば、落ちる、切れる、終わる、崩れる、ああー! 涙を飲んで離婚。ああー! 重ね重ねー! 離婚。別れ別れの肉体と魂。元他人がまた他人へー離婚!』


 幽霊達は溶けこっこに歌を変えろと厳しく注意。呪殺婦人も何度注意しても懲りないのであきらめていた。そのしぶとさ、ゾンビの鑑である。


 今回だけは強引に、呪われた結婚式の歌に差し替えた。


 お菊さんはその頃、人知れず悩んでいた。

(本当に私、この幽霊ひとと結婚してもいいのかしら……)

 しかし、お供え物を頬張ると全て忘れた。


 そして、結婚式は始まった。廃屋の教会で……、なんでじゃ! 普通和装だろ!


 神父は怪しい悪魔がやった。

「えーと、やめるときも健やかなる時も……今噛んだからもう一回いい?」と悪魔は嫌がらせをする。


 誓いの言葉を述べよの時に「はいっ!」と大きな声で述べた盛貞。二人より早い。


 ――そして、披露宴が始まった。


 ゾンビも元気になる丑寅の刻に怪しい曇った夜空。関係者達のテーブルにするために、寺中の墓を並べた。規則正しく並べられた墓に不規則に悪霊が座した。


 新郎新婦のテーブルは例の銅鑼烏帽子の墓だ。和尚と観音像も呼ばれた。


 司会はお岩さん。

『まずは、ケーキ入刀』

 門将は腰の日本刀を抜き放った。そして、お菊さんと共に銅鑼烏帽子の墓の上のケーキを切断した。切れ味は抜群で、銅鑼烏帽子の墓も、とばっちりをくらった。


 そして、スピーチ。まずはお岩さん。

「えー、私はお菊さんの友人で……」


 次に盛貞。

「これからは三人でがんばって行こーうね」

 盛貞は皆に叱られた。盛貞の肩に溶けこっこが留まり「バーカ」と言うと去って行った。


 一つ目も何か言った。


 溶けこっこもスピーチ。

「お二人共、笑いをありがとう。後ご馳走もね。それ以外は知らん」


 和尚もスピーチした。

「お菊さん、門将君、ご結婚おめでとう。お菊さん達悪霊は私の子供の頃から寺に出てきて、いつか冥界に送ってやると思っていました。その悪霊が……感無量です。門将君、盛貞君、観音像の友となってくれてありがとう」


 そして、涙ぐんでいった。

「神も仏もなんぼのもんじゃーい!」

 観音像も「遺影いえーい」と叫んだ。そして、二人で日本酒をラッパ飲みした。


 和尚も観音像も夢で仏に説教されまくるのはいうまでもない。


『次回「最終話、悪霊よ永遠に」』

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