第7話 納骨堂

 納骨堂まで来たお菊さんと門将と……盛貞。またしても二人についてくる。まるで背後霊……いや、背後霊そのもの。


 お岩さんが盛貞を連れ戻す。しかし、また奴は現れるだろう。はにかみの続く限り。


「門将様、あちらしゃれこうべが沢山いますね」

「そうじゃのう、可愛らしいの」

 納骨堂の前に骨の怨念がずらり。


 二人は寺の池まで来た。池に映らない二人の姿。それはまるで……いや、まさに幽霊。


 お菊さんは火の玉を出して池の水面に映した。

「時々皆でこうやって遊ぶのですよ」

「いいですな。こういうのも」

「私も好きだなぁ」

 盛貞再び。


 そのしつこさに根負けして、二人の邪魔をしないならついていってもいいことにした。お岩さんも同行して、四人で墓地をまわる。


 門将は墓に刻まれた家紋の話を始めた。

「お菊さん、こいつは竹に雀と言って上杉家の家紋でして、それからこいつは竜胆と言って源氏の家紋で」

 門将の周りの火の玉が真っ赤に染まった。

「こいつが平氏の家紋で揚羽蝶と言って……そこにおる盛貞の子孫が使っておるんじゃ。可愛らしい顔しているが、私には憎らしい顔にしか見えんのです」


 揚羽蝶は「なんやお前は! 調子にのるなよ! 除霊しゅるで!」と文句を言った。


 お菊さんは自分の墓に門将を案内した。

「こちらは、私のお墓なんです。なんといいましょうか」

 そこには溶けこっこだけが留守番をさせられていた。お菊さんは溶けこっこに歌うように合図した。溶けこっこはドロドロに溶けた顔で弾けるように歌い始めた。


「USA! USA! カーモンゾンビあの世から、ぞくぞく出てきてゾクゾク」

「おい! その歌違うわこら! 溶けこっこ、真面目にやれ!」


 溶けこっこは真面目に歌い始めた。

「私のお墓の前で、吐かないでください。そこに私はいます、眠っていますですます」


 お菊さんと門将は溶けこっこの歌声に聞き入る。

「良い声じゃわい」

「ええ、門将様」

「私はもっとうまく歌えますよ」

「盛貞黙れ、二人の邪魔をするな」


 四人が寺の前に来ると、ミトコンドリア花子が「お菊おねぇさん」と近寄ってきた。

「こらこら、二人の邪魔をしちゃだめよ」

 お岩がミトコンドリア花子にどこか行くように促しお菓子を渡す。ミトコンドリア花子は嬉しそうにどこかへ去って行った。


「門将様、あいつは元々はトイレの花子とかいう幽霊でしたが、我々の霊的科学で霊魂のゲノムを解析して改造手術をし……で、昔はおかっぱ頭、今は岡っ引き頭で丁髷を結って……」

 お菊さんは妹分の花子について嬉しそうに語った。門将も嬉しそうに聞いている。


 しかし、寺の中から黄金の光が。観音像が悪霊を退治するために動き出した。


「悪霊め、除霊してやる」

「面白い! 我が名は桓武天皇の…」

 門将は名乗る。一触即発!

 悪霊連合対観音像。


『次回「お見合いの結末」』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る