4. 博多豚骨ラーメンズ
群像劇はピカレスクと親和性が高いらしい。
物語をリードするのが誰なのか中盤になるまで分からないのはストレスでしたが、そこも群像劇を楽しむポイントなのかもしれません。ストレスではあるが、読み進めさせる推進力の一つにはなり得ます。こういう全員悪人の小説って、結局どのグループが大悪を倒すのかが気になってしまうので。
キャラクターは、とにかく覚えられないくらい多いです。アニメのHPでよく見るような勢力図があれば理解しやすかったんですが、作中で勢力図が出来上がっていくタイプの作品なので、自分で作るしかありません。
真ん中あたりで話が繋がり出したと思った時点で、一番ヤバそうな奴の噂が持ち上がります。
このやり方にはバッカーノ!の2・3巻ぽさを感じました。
悪者だらけの中で伝説級の怪人が出てくるというパターンです。
あちらの方がキャラクターの持つ要素に被りがなく覚えやすかったと記憶しています(イラストの力も大きそうですが)。ただし、あまり登場意義のない食わせキャラもいました。
あとがきに書かれていましたが、作者さんはやはり成田(良悟)チルドレンでした。
誰が都市伝説の殺し屋なのかは多分、物書きの方でなくても推測しやすいと思うんですが、納得いかないチョイスで盛り下がるよりは遥かにいい気がします。
最後まで読むとタイトルの意味がわかるようになっている作品です。賛否両論かもしれませんが、私は上手いと感じました。とはいえ私は野球のことはサッパリなので、おまけ要素的なラストパートは少しキツかったんですが……。
ところで、ホラーや流血が苦手な私が、この作品を怖がらずに読めたのは、キャラクターの行動原理がフツウ……復讐が基本だったからです。
バッカーノは快楽系の狂ったキャラしかいませんから、まず理解し難い。一般常識を脇に置かないといけない。
まあ、本作も人を殺めることに何の抵抗もない登場人物がほとんどなので、ピカレスクを読むときは常識や倫理は一旦忘れて、物語に入り込まないと楽しめませんね。
ここまで読んだメディアークス作品の中では、読書家の人にも自信を持って勧められる一冊だと思います。
とくに、博多という土地を舞台にしたのが良いチョイス。独自の世界観を作り上げています。
性格の悪い女装男子が出てくるから評価が甘いんだって? チ、チガイマスヨ!
(2021.6.18読了)
次は、ゼロから始める魔法の書です。その前に番外編として、冲方先生のラノベの書き方講座の感想を書くと思います。
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