7. ブギーポップは笑わない
ブギーポップはパズルっぽい。
読んだのに忘れかけている場面にちょいちょい戻らないといけない。
一言で言うと、変な小説です。これは褒めているつもりです。
構成力自慢の作品かと思っていましたが、生きた人間もよく書けていると思います。口当たりが良くなるようデフォルメされた『キャラ』ではない。
この伏線の張り方と構成方法で作品を練り上げるには、主軸のストーリーを作って逆算し、綿密な地図を書いておかないといけないでしょう。ものすごく計算力が要る。
逆に、一度コツを掴めば出来てしまうものなのかもしれないですが。
この構成方法は既にこの作品が実践してしまったから、真似しようとしても劣化版の二番煎じにしかならないかな、とも思います。
キャラクターの話をすると、紙木城さんと木下くんの話が一番面白かったのですが、ほんの数ページしか視点人物にならない紙木城さんは印象的・魅力的に書かれています。その理由は最後まで読めばわかるようになっていました。
しかしブギーポップ自身にはあまり活躍場面がない。可愛い女の子の中身が少年ってのは、私の好みにクリティカルヒットだったので惜しかったのですが。そう呟いたら、続編を読めと言われました。
先述した二人の部分が一番面白く、ラストシーンは収集をつけるためのまとめでした。電撃大賞作品は捻りが最低二つは用意されていると思い始めていたので、欲を言えば、もう一捻り欲しかった。とはいえ群像劇ものは一捻りつけるのが難しいのかもしれません。
文章について。たった20年で書き言葉はこれほど変わるものなのか、と少し時代を感じてしまいました。
いや、話し言葉に比べると変化速度は遅いと思うのですが。今の文章は、やはり明治大正時代のものが基準でしょうから、そう考えると随分のろのろと変化しているのでしょう。
つまり、会話文とくに女性の話し方に時代を感じたのだと思います。男性の、書生っぽい話し方もそうかもしれません。
ブギーポップは、いろんな感情を揺さぶられる作品だと思います。哲学的な会話もある。物を書きたいと思わせる力がある気がする。
傍観者も異端者も出てきて、読者層はどちらにも感情移入できます。
人間というのは、みんな自分は個性的で特別だと思っており、他人はみな凡庸だと思っている(『選択の科学』)が、やはり大多数の人間は凡庸なのだと気付かされていくのが、大人になる過程だから。
受験戦争時代の暗い世相を反映しているせいもあって(と作家仲間が言っていました)、少しばかり色褪せてはいますが、アイデンティティを確立しようともがく青少年の心に寄り添う、名作だと思います。
(2021.6.4.読了)
次は何だったっけ…、たぶん博多豚骨ラーメンズだと思います。
今も電撃作品は読みつづけてはいるのですが、エッセイの更新が滞っているのは、どうも上から目線の批判ばかりしてしまう自分に嫌気が差してきたせいです。もう少し肩の力を抜いて、楽しみ方を模索してみたいと思います。
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