2. アクセル・ワールド
最初は、ダメ主人公のBMG(ボーイミーツガール)のテンプレ祭で、続きが気になる引っ張り方と心情描写が良かった『ロウきゅーぶ!』のほうが面白いと思っていたのですが。
1日で150ページ読ませるやつでした。
先輩の目的が明かされてから一気に面白くなった感。webならもっと早い段階でこれを持ってこないとダメなんでしょう。
悪役が歪んだ理由を主人公のコンプレックスと対比(関連?)させるのは上手いし、敵も含めて、物語を主要人物だけで完結させるのも大事なのではと思います。
学校一の異性から何故か凡人未満の主人公が好かれるのは、少女マンガでもよくあるパターンで、主人公が誰も手にしていない力を手に入れる展開も王道です。
が、この作品のキモは、おそらくそこではありません。あまり思い出したくない思春期の、『うまくやれない』歯痒さでしょうか。
この作家さん、劣等感を描くのが上手いですね。
いじめられっ子の心情については新しい発見がありました。
同じ学校にいない子には憐れまれずに済むから友達でいられるって、なかなかツライ話だ。
同じ作者の作品としては、SAOとは陰陽の関係かもしれません。キリト君は主人公ながら人気があるでしょうから。アクセルワールドは、共感できる人は好きだろうけど、万人受けはしないかなという印象。
同作者が対照的な主人公を書くとき、だいたいは主人公は明るい・強い・美人etc.憧れの対象であるほうが万人ウケして代表作になっているような気がします。
文章の話をすると、これは素人じゃないですね……、電撃文法は出てこず、引っ掛かりの一切ない没入できる文章でした。
ちょっと用法が怪しい言い回しがあるけど、カッケェからいいやって感じです。
公募派の文体のお手本と言えそうです。
その他に考えたこと。
ゲーム世界って『制約』『戦う理由』が大事ですね。
SAOは負けたら死にますが、アクセルワールドはアプリが削除され、現実世界でも使えるチート能力が二度と使えなくなるという制約があり、一度美味い汁を吸ったらやめられなくなる。
また、ヒロインの目的が主人公が戦い続ける目的となるのですが、『周囲とは逆に、戦うことを肯定する』というヴィラン的な香りに、厨二病心がくすぐられること間違いなし。
この二点で読者を納得させ、面白くなりそうだと思わせたら勝ちではないでしょうか。
(2021.3.30読了)
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