籠屋縁にようこそ!!

春子

はじまり

第1話

何処かで見たことがあるような場所で、何処か懐かしい場所。


瓦の家々が並び立つ家がずらりと並び立ち、

提灯の灯りがつく。

夜につく提灯の灯りがとても風情がある。

その瓦の家々を見下ろす形にある建物が、

゙籠屋縁"<かごやえにし>

今は、夜なので、静まり返っている。

今宵は誰が迷い込んでくるだろうか。



真夜中に、一人の女が、赤子を抱えて、走っている。

余分な荷物を持たずに、赤子だけを抱き締め、身なりを気にせず、裸足で駆け出す。

捕まれば、大変なことになる。

必死に、掛けていく内に、見ず知らずな場所まで来てしまった。

夜なので、静かだが、見たことない場所に辿り着いた。

(どこかしら?ここ?)

無我夢中で走っていたので、息を乱し、辺りを見渡すと、今は珍しい瓦の家々。

提灯も何だか、物珍しい。

事情を話して、今晩だけでも、泊めて貰えないだろうか。

息を整えて、目についた家の方へいく。

「夜分に申し訳御座いません。」

声を掛けたが、既に就寝してるのか、応答が無い。

どうしたものかと悩み、辺りを見渡す。

すると、橋の向こう側に、旅館が見えた。

(大きな旅館。もしかしたら、泊めてくれるかも知れない。お金はないから、しばらく、働かせて頂いて…返すしかないわね。)

誘われるようにその旅館に向かう。



「人間の女の人と赤ちゃんがいる。」

子供部屋にしては、豪華な部屋で、ひとしきり、喜ぶ幼い娘。

縁起物の刺繍が施された着物を気にせず、跳び跳ねる。

「うるさいぞ!手鞠!!もう寝ろ。」

兄である喜春(きはる)が言う。こちらは、若草色の甚平を着た男の子。

「春ちゃん。春ちゃん。人間の女の人と赤ちゃんがいるよ!」

「はあ?」

ほらと妹が見せる水晶玉を見ると、明らかに客でも里の人間でも無い女と赤ちゃんが彷徨いてる。

「またかよ!」

「ふへへ。」

喜ぶ妹に注意しながら、渋々、出口まで向かう。それはもう幼い少年がするような顔ではない。


随分大きな門構えだ。

もしかしたら、物凄い高い旅館なのかもしれない。

けれど、一晩だけ、せめて、泊めては貰えないだろうか。

中に入るのを躊躇ってると、提灯に灯りがつく。

すると、門が開いた。

「あんた、何しに来たの?」

息を飲むほど、見たこともない美しい少年が、自分に問いかけてきた。


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