第5話 コウモリになって遊ぶ

 あの後どういう仕組みかわからないけど小さくなった、あの手のひらサイズにだ。


 そしてその後、まさかの展開になった。

 生き残った盗賊をギルドマスターに報告すると、あの盗賊達だが最近街で噂になっていた盗賊団だったそうで。

 ギルドも手を焼いていて、奴らの討伐ランクをAランクに引き上げ対応していたそうだ。

 しかしなかなかアジトどころか、団員すら見つけることが出来ずにいた。

 そんな時、ギルドに入会したばかりのアリスが見つけ、討伐そして確保したと聞いたギルドマスターは何度もアリスに詳細を聞いていたそうだ。


『まぁぼくはその時アリスの中にいたので経緯は知らないんだけどね』


 そして現在、再度召喚されぼくはアリスに抱えられている。

『なんかもう、定位置になってしまった』

「へぇ〜、こんなちっこいクマがねぇ〜」

「今は小さいんですけど、その時は凄く大きくなって怖いくらいでしたよ」

「そら山一つ吹き飛ばす程の力だろ!」

「確かに」

「今回の件で、ランクがDランクに上がりました」

「え? そうなんですか?」

「はい、本当はCでも良いんじゃないかって話が出たんですが、流石にそれは出来ないそうで……ただ、実績だけは残るので、直ぐにCランクまでは行くと思いますよ」

「わかりました」

「では、アリスさん。報酬や他詳しい事がわかりましたらまた連絡をさせて頂きますね」

「はい、わかりました。よろしくお願いします」


 ギルドを後にした後、流石に疲れた様子で家ではないが寝る所に帰るなり横になったアリス。

「ねぇ、アグー。やっぱりしゃべれるんだね」

 ぼくの方を見て話しかけてくる。

「良いよ、話しても! もう驚かないから、私ねずっと話し相手が欲しかったんだ。確かに話す人はいるけど、そんなに親しくは無いし。仕事上での話ししかしないしね」


「アリスはしゃべる召喚獣は怖くないの?」


 少しビクッとなるアリス、しかし。

「やっと話してくれた。改めてアリスよアグー」

「ごめんね、ビックリさせて」

「ううん、本当は本当に話してくれるのか半信半疑だったからね。ねぇアグー、君は何で話せるの?」


「うん〜、わからないな」

『天使に召喚獣にされたなんて言えないよ!!』


「私が召喚魔法で初めて出会ったのが君なんだよ、アグー。その後一度失敗してるけどね」

「失敗?」

「うん、動揺しすぎて蜘蛛の召喚獣を出しちゃってさ、あれにはビックリしたよ」

「……アリス、言いにくいんだけど」

「うん?」

「その、蜘蛛の召喚獣ってカエルの時のだよね?」

「カエル!? あぁーエルダーフロッグね、でも何で知ってるの?」

「あの時出てきた蜘蛛の召喚獣さ、あれもぼくなんだよね」

「……え?」

「うん、今はクマのアグーだけど、あの時は蜘蛛のアグーだったんだよ」

「………私頭悪いからよくわからないんだけど!?」

「体は蜘蛛と、クマで違うんだけど、中身はぼくだったって事。もしかしたらだけど、アリスから出てくる召喚獣はみんなぼくが操っている召喚獣なのかもしれない。まぁまだ何とも言えないけどね」


「へぇー……」


『こりゃあんまり分かってないな』

「アリス、試しにクマの召喚獣じゃなくて違う召喚獣を思って呼び出してみてよ」

「……うん、わかった」

 そういうと、ぼくは一旦アリスの中へと入った。

 数秒後、例のアレが来て再度アリスの前に戻ってきた。


『アリス大きくなった?』


「えーっと、そんな事はないと思うけど……それより、本当にアグーなの?」

「……うん!? あぁごめん間違いなくぼくだよ!」

「……本当なんだ!!」

「ちなみに何に召喚させたの?」

「……え〜とねコウモリかな!」

「……コウモリ!」


『コウモリ……なんで、コウモリ?』


「いや、見た目がガラッと変わったほうが良いかな〜と」

「まぁ良いけど……」

「はーぁー、ごめん眠たくなってきちゃった」

「色々あったしね」

「ううん、気にしてないよ。アグーも寝る?」

「いや、せっかくコウモリになったから、色々試してみるよ」

「色々?」

「そう、色々ね」

「まぁ良いか、じゃあ私は寝るねおやすみアグー」

「おやすみアリス」

 


『さて、行きますか』



 ぼくは夜の街へと飛び立った。

 しばらく飛び回り色々試したところいろんな事がわかってきた。

『召喚獣って凄いのね』

 クマの時はパワーやスピードが凄かったけど、今はコウモリだ。

 コウモリといえば探知系が得意かなと思い試してみたんだけどこれが凄いのなんのって、壁の向こうの事、家の中の事、何キロ先までの事など手に取るようにわかるのだ。


『こりゃ凄い! 何か面白い事ないかなっと』


 コウモリの超音波にて周りを確認すると……

『うん? 一人、いや二人か。あれは昼間の盗賊の仲間か、どこに行くんだ? うん〜、流石にこの距離じゃ話してる内容がわからないな、どうにかして聞けないかなった』


 超音波の性能を上げ、それまで街中に集中していたものを奴らに全て向けてみた。


「この先みたいですね……」


『おお、聞こえた聞こえた、さて何をしているのかな!』

「そうみたいだな、まさかあんな女にやられるとはな……」

『……うん? 最後なんて言ったんだ? あの女ってやっぱりアリスの事か?』

 しばらく様子を見ていると徐々にアリスが寝ている場所に近づいて来ていた。


『やっぱりアリスが狙いか』


 ぼくは盗賊二人に催眠術をかける。

『とりあえず今日はお帰り頂くか』


「おい、あれ!」

「なんだよ、もうすぐ目的地だろうが」

「ち、違うんだよ。あいつ、こっち見てないか?」

「あいつって誰だよ! ひっ!」

「何だあの甲冑!? それになんだよあの異様なオーラは」

《カシャンカシャン》ゆっくり近づくその者は異国の甲冑を着て手には細長い剣のような物を持っている。

「あいつ、ぜってぇーやばい奴だって!」

「どうするよ?」

「どうするったって……」

 その直後、雄叫びを挙げたその者が盗賊目掛けて走って来たのだ。

「や、ヤバイ!」「いやぁー」

 そこから追いかけっこが始まった。


 甲冑は剣を振り回しながら盗賊に襲い掛かっている、と思われる。

『見えないからねぼくには、ぼくが見えているのは盗賊が悲鳴あげて逃げている姿だけだから』


 まぁあんだけ悲鳴をあげてりゃ騒ぎにもなりますわな。

 いろんな人が出てきて、変な奴がいると騒ぎになっていった。

 その後、盗賊達は助けを求めて詰所に飛び込みそのまま御用となったそうだ。


『めでたしめでたし、さてぼくも楽しんだし主人の胸の中へ、にひひ!』 


 アリスの元へ戻りしっかり胸元へダイブしましたよ、はい!



 

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