壮絶な運命に翻弄される兄妹のお話

 16歳のみなしごの兄妹が、職業適性試験のために王都を目指すところから始まる、大きな運命の物語。
 異世界ファンタジーです。いろんな種族や職業制度などの想像のしやすさ、とっつきやすさが魅力のライトファンタジー。冒頭部はどこか童話にも似た趣があり、まさに「少年と少女の冒険譚」という雰囲気バリバリの、ジュブナイル的な冒険の物語です。
 最大の魅力はキャラクター、というかもう単純に狼さんが好きです。絶妙なツンデレ具合が可愛すぎる……という個人的な趣味はさておくとしても、結構真面目な葛藤を担っているところが好きです。
 獣人としての彼の、人間に対する複雑な感情。さまざまな種族の存在する世界にあって、決して揺るがせにはできないものを抱えながら、でも主人公の兄妹とスッと仲良くなれちゃう、この根明さが本当に素敵でした。ええ人や……かわいい……。
 もちろん狼さんに限らず、アルスのこれでやるときはやる感じや、しれっと有能天才キャラしてる妹のミリア、そしてあからさまに曲者っぽい先生も。個性あるキャラクターたちの掛け合い(というか、彼らの間に縁のできていく様子)が楽しい、真っ直ぐなファンタジー作品でした。