第37話 輝きの代償3

 両者は互角の戦いを繰り広げていた。

「シーザ!」

「ラディ!」

 剣の一撃を槍で受け止める。

「なぜ悲嘆の種なんか! お前ならアレの悲惨さがわかるはずだ!」

 竜騎士はその話を鼻で笑う。

「そんなものとうに忘れたね!」

 竜騎士は青の剣士から間合いを取り、高速で槍を幾度も突く。

 青の剣士はそれをかわし、いなし、そして間合いを縮めて一撃を繰り出す。

 竜騎士はそれをバック転でかわし、十分に間合いをとる。

「それにな、悲嘆の種を使ったのはな……」

 竜騎士は跳んだ!

「お前を再び殺すためだからな!」

 高く跳び上がって太陽を背にした攻撃!

 同時に青の剣士も跳ぶ! 竜騎士が頂点に達する瞬間に、青の剣士は竜騎士に蹴りの一撃をくれていた。

「ゴフッ!」

 竜騎士はそのまま落下。青の剣士は見事着地する。

「シーザ、オレを殺したいなら正攻法で強くなって来い」

 竜騎士はそれでも青の剣士に突っかかっていく。竜騎士は弱くはないのだ。今の実力の差は、ただ単に武器に慣れているか否か、ただそれだけの違いだった。

 そう、竜騎士は本来竜騎士ではなく魔法使いなのだから。


 青の剣士に蹴り飛ばされた竜騎士は、舌打ちし槍を地面に突き刺す。そして呪文の詠唱を始めた。

「闇よ……我が前に集いてかの者を打ち砕かん!」

 青の剣士は舌打ちする。竜騎士が放とうとしているのは闇の大魔法。避けたら後方の仲間たちが危険だ。しかし後方の四人はそれを知らない。

 青の剣士は剣を空に掲げる。剣に雷が落ち、そのまま剣を肩のあたりでかまえた!

「食らえ! 我が大魔法!」

「必殺……! ヴァリアントブレイク!」

 青の剣士は竜騎士に向かって突進する。竜騎士はその様子を見てニヤリ笑う。

「やった! ラディすけの勝ちだ!」

 守人の叫びと同様に、その場にいた全員が青の剣士の勝利を確信した。しかし竜騎士はお得意のジャンプでヴァリアントブレイクをかわしたのだ。

「テメエ!」

 着地した場所は、ヒロ太の目の前。

「目覚めよ我が眷属。真の姿を見せるがいい」

 呆気に取られていたヒロ太の右手に竜騎士は触れる。

「何をする!」

 ヒロ太は剣を抜き、そのまま竜騎士に一太刀浴びせようと薙ぐ。

 しかし竜騎士はその場に既におらず、ジャンプで誰からの攻撃も届かない位置へ着地する。

「シーザ!」

「いいのかラディ。お友だちが苦しんでるぞ?」

 青の剣士は振り向く。そこでは右手を押さえて苦しんでいるヒロ太がいた。

「ヒロ太!」

 竜騎士は大きく笑う。

「テメエ! 悲嘆の種を!」

「ああ、そうだ。最初にバトルした時に植え付けた。種は芽吹き、いい感じに熟したぞ」

「みんな、ヒロ太から離れろ!」

 青の剣士はヒロ太の前へと駆けつける。

「離れろ、ラディすけ」

「大丈夫だ。オレがなんとかする」

 青の剣士は剣をかまえる。

「ちょっと痛いけどガマンな」

「なんだと?」

 青の剣士はヒロ太の肩へと剣を振り下ろす。

 しかし剣は、いや、青の剣士はヒロ太の右手から大量に放出される光の魔力によって吹き飛ばされたのだ。

 ヴァルきちは吹き飛ばされ、ミサの胸にぶつかる。守人も吹き飛ばされないよう必死に耐える。

 そして、ヒロ太の右手は黄金色に巨大化した。

 人間と比べればちっぽけだろう。しかし、バトルアーツとしてみれば巨大な、輝きを放つ右手だった。

「痛い、痛いが……今ならどんなヤツにも勝てる!」

 ヒロ太の確信だった。

「ヒロ太……」

 青の剣士は一度剣を向け、ヒロ太に向かっていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る