第24話 勇者たちの挑戦3

 アナウンサーは語った。

「あの忌まわしいバトルアーツ暴走事件から一ヶ月が経過しました。未だ傷の癒えない方もいらっしゃいます。しかし! 本日この、『バトルアーツ選手権大会』を開催するにようやくいたりました!」

 そんなテレビ画面に映っている選手の中に、守人の姿があった。

「がんばろうねヒロ太」

「目指すは優勝だからな」

 ヒロ太は不死鳥の鎧を返却し、元の赤い戦士の姿に戻っていた。しかしながらその姿はボロボロのボロ雑巾状態だった。

「ホントに大丈夫?」

「余裕だ」

「膝をつきながら言っても説得力ないって知ってた?」

 ヒロ太は「ああ、知っているさ」なんて言いつつもフラフラだった。

「本当にもう!」

「あっ! いたいた」

 手を振りながら守人のところへ来たのは、研究員だった。あの、倉庫で守人とともに、隠れていた研究員だ。

「いやー探したよ」

 そう言って歩いてくる彼に、守人は見覚えがあった。

「研究員さん」

「今から試合なんだ。後にできるか?」

 ヒロ太は少しナーバスになっていた。それも仕方ない。試合前の大事な時間なのだから。

「ヒロ太くん、君どうしてそんなにボロボロなの? これから選手権大会でしょ?」

「ちょっとした事情がありまして」

 守人は思わず頭をかきながら笑う。

「それも大事だけど、今日はこれを渡しに来たんだ」

 研究員の手の中にあったのは……。守人は何も言えなかった。

「電源を入れてごらん?」

 守人は言われるままに電源を入れる。

 目を覚ました青い鎧の彼は、伸びをして目を擦る。

「あーよく寝たぜ」

 そして守人の手の中で立ち上がる。

「ようモリト、ヒロ太も久しぶり」

「「ラディすけ!」」

「おいおい声がデケーよって、うわ!」

 思わずモリトに抱きしめられた。

「でもデータが消えたハズじゃ……」

 研究員は鼻高々といった感じでフフンとやった後、ご丁寧に解説を始めた。

「守人君から預かった方。つまりボディの方にバックアップがあったから、それを使ったんだよ」

 略すとそんな感じだった。

「よかった。ホントによかった……」

「モリト、男泣きか?」

「ラディすけ、よく帰ってきたな」

「おうヒロ太……って、オメエまたボロボロじゃねえか。キャットにやられたのか?」

「まあ、そんなところだ」

 すると、守人を呼ぶアナウンスが聞こえてきた。

「行こう! 二人とも」

「わかった守人」

「行こうぜ!」

 そして三人は選手権大会のステージに立ったのだった。



    エピローグ




「ラディすけーお菓子とって」

「お前、自分で取れよモリト。しかし、落語ってのは面白えなあ」

 ラディすけは落語のCDのデータを読みながら大笑いしていた。ヒロ太に至っては、昼寝などしている。

 平和だ。平和な時間が流れていた。

 守人は本棚に飾ってある、一回戦負けの参加賞を見あげた。

「来年こそは!」

「その息だぜ、モリト」

 振り返るとそこには、ラディすけとヒロ太がいた。

「今日もそうだけどよ、ここのところバトル無しだからウデが鈍っちまったかもな」

「全くだ」

「じゃあ、明日は公園に行って、バトルしようか」

 三人は今日も笑って過ごしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る