第11話 宿命の再会2


 トイレから出てきて、問題が発生した。

「アレ? どっちだ?」

 とりあえずわかっているのは、ここはサイバーダイン社の通路ということだけで、端的に言うと……。

「道に迷っちゃった」

 道を聞こうにも、人がいない。不安に思いつつも第一歩目を出す。

 二分経ってようやく気づいた。

「完全に迷っちゃったな。ここに泊まらなくちゃならないかも。枕持ってくればよかったかな」

「落語みたいなこと言ってんなよ」

 守人のリュックサックがもぞもぞと動く。そしてそれは飛び出した。振り向いた先には誰もいない。

「こっちだよこっち」

 視線の先、足元にいたのは……!

「ラディすけ!」

 ラディすけは「よっ」なんてウインクしながら挨拶してくる。

「ききき、キミってヤツは! どうしてここに!」

「道に迷ってんだろ? だったら進もうぜ」

 そう言ってラディすけは何事も無さげに、鼻歌まじりにサイバーダイン社の中を歩き始めた。守人はその後をついて行く。

「キミ、道を知っているの?」

「あ? 知らねえよ」

 大きくうなだれながら、守人は止まる。

「しょうがないなあ」

「へへッ、そうこなくっちゃ」

 守人はラディすけを肩に乗せると、再びサイバーダイン社内を歩き始めた。

「こっちかな?」

「いやいや、あっちかもしれねえぜ?」

 わいわいやっていても誰も来ない。本当に人間が働いているのだろうか? 心配になってきた。

「大丈夫だって、オレがいるだろ?」

 根拠の無い自信だが、今の守人にはありがたかった。

「ここはどこ?」

「研究室って書いてあるな」

 ラディすけは守人の肩から降りると、研究室の扉の前に立つ。

「ラディすけダメだよ。開くわけないよこういうところは、カードキーとか必要なんだ」

「そうかー」

 ラディすけが守人の方に振り向いた瞬間だった。

『ピシュコァー』

 未来な道具が出てきたチックな音を立てながら、自動ドアは開いた。

「入ってみようぜ」

 と言い切るより先に、ラディすけは研究室の中へと入っていく。守人も「勝手に入って大丈夫かな?」と、不安に思いながらも好奇心に負け、ラディすけとともに研究室へと入って行く。

 そこは真っ白な空間だった。ただ一つ異質なのは、人型のバトルアーツが一体立てかけてあったのだ。

「なんだここ?」

 辺りを見回す守人に対し、ラディすけは立てかけてあるソイツに向かって歩いて行った。

「新作バトルアーツかな?」

「勝手に触っちゃって大丈夫かな?」

「平気平気、誰か来たら謝ればいい」

 行き当たりばったりなラディすけに、守人は「もー」と言うばかりだったが、本人も気になるのだ。サイバーダイン社の新作が。

「なんか書いてあるな」

 ラディすけはそのバトルアーツを拘束している、拘束具に書いてある文字を読む。

「わぐ? いや……ワーグか」

「へえ、新作はワーグっていうんだ」

「なんかぞっとしねえな。行こうぜモリト」

 守人とラディすけは、揃って研究室を出ようとした。しかし、

『ピシュコァー』

 閉じ込められた! 自動扉が閉じたのだ。

「おいおい、マジかよ」

「すいません! 出してくださーい」

 扉を叩くも、誰も出ない。当然だ、あれだけ人がいなかったのだから。

「命令受諾。目標バトルアーツを駆逐する」

 思わず聞こえてきた声の方を振り返ったところ、そこに居たはずのワーグの姿はなかった。

「うおっ!」

 思わず声を上げたのはラディすけだった。ラディすけは思い切り壁に叩きつけられる。

「ラディすけ!」

 守人は思わず悲鳴を上げた。剣で防御はしていたものの、ラディすけは壁にどんどん押し込まれている。

「ヤメロ! なんだコイツ!」

 守人はラディすけに襲いかかっているワーグの体を掴み、遠くへと投げ飛ばした。

 それを合図に壁から這い出たラディすけは、ワーグに襲いかかった。

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