バトルアーツ

ぴいたん

青の剣士

第1話 たたかうフィギュア

 プロローグ


 バトルアーツ! それはサイバーダイン社が開発した、全く新しいフィギュア!

 コレクションしたり、ポージングを取らせたり、眺めたりする。それだけのフィギュアではない! バトルアーツは意思を持ち、自立可動する最新のフィギュアだ!

 最大の醍醐味はフィギュア同士でバトル出来るというところ!さあ、キミも戦って戦って戦い抜いて! テッペンを勝ち取ろう!

 さあ、全国のオモチャ売り場へみんなもダッシュだ! 新たな友だちが君を待っているぞ!



         1



「天野守人」小学五年生の男子は、オモチャの箱を抱えていた。

「やった、ついにバトルアーツを手に入れた!」

 その一心で、家電量販店から走って帰り、ようやく今家に到着したところだった。

「ただいまー」

 なんて言うのもそこそこに、手を洗って守人は部屋に籠った。これでもう邪魔は入らない。

 守人はビニール袋から箱を取り出し、開封の儀を始めた。

 まず、箱を開ける。コス〜ッと音をたて中身が登場する。

 内容物の確認。人型のノーマルフレームが一体。プラモデルみたいなプラスチックのランナーが数枚、そしてフレームに入れるメモリーカードが一枚、最後に取扱説明書。

 完璧だった。

 保護用のビニール袋を開け、まずフレームにメモリーカードを差し込む。起動はまだしない。

 ランナーを取り出し、工具箱からプラモデル用のニッパーを取り出す。

「ようし」

 取扱説明書に書いてある順番通りにパーツをランナーから切り離し、フレームに組み込んでいく。

 足ができ、腰と胴体ができ、そして腕ができて、最後に頭を取り付ける。忘れずに武器パーツも作る。

「できた……。できたー!」

 そう叫んだ守人は、出来たてホヤホヤの湯気が立っていそうなバトルアーツを起動させる。

 バトルアーツは目を覚ます。

「ん……、ここは?」

 起きたバトルアーツは、目をグシグシとこすったあと、おおあくびをブチかましながら伸びをした。

「おお! 動いたぁ!」

 守人は感動のあまり、うずくまって転がって、喜びを身体中で表現していた。

「キミ、ライアンだろ? ボクは……」

「ちげーよ」

 最初の会話は否定から始まった。

「え? キミの名前はライアンだろ?」

「オレはラディだ。それよりアンタ誰だ?」

 おかしい、バトルアーツは最初にデフォルト名を名乗るハズだ。このバトルアーツの場合は「ライアン」そう名乗るべきなのに。「ライオンみたいな名前でカッコいいから」と、このバトルアーツにしたのに。守人はパッケージを見る。「青い剣士ライアン」と書かれている。しかし現にこのバトルアーツは自らを「ラディ」と名乗った。何故だろうか? バグと呼ばれる例のアレだろうか? よくわからないが、守人はそれすらもクールに感じた。

「ボクは守人、天野守人。みんなには『アマノ』とか、『モリト』とかって呼ばれてる」

「なんとなく状況が読めないが……まあいいや、よろしくなモリト」

 ラディは手を出してくる。守人はその手を取って、握手した。

「よろしくラディ。でもラディって呼びにくいな」

「そうか?」

「ちょっとね。じゃあ呼びやすく、『ラディすけ』で」

 ラディすけは腑に落ちない顔をしていたが、「まあいいか」とニコリ笑った。守人も笑って返す。

「そうだラディすけ、さっそくで悪いけど公園に行こう」

「公園に何しに行くんだ?」

「決まっているだろ? バトルアーツを手に入れたんだ。バトルしにだよ」

「ちょっとまてモリト、バトルしたいのは山々だけどな、オレは……って話を聞けぇ!」

 守人はラディすけを右手に握りしめ、公園へと向かった。


 公園に到着したころには、ラディすけはあきれてモノも言えない感じになっていた。

「ここが公園だよ。ってどうしたのラディすけ?」

「ったくよ、オメーは人の話を聞けっての」

「話って何?」

 ラディすけは守人が広げた左の手のひらに飛び移る。

「オレもうすぐ……多分三十分もしないうちにバッテリーが切れるぞ」

「え?」

 守人の顔は、中国四千年もびっくりというくらいに、意外そうな顔だった。

「ちょっとまってよラディすけ。バッテリー切れるってどうして?」

「オメーが充電しなかったからだよ。取扱説明書全部読まなかったのか?」

 守人はハッとした顔をする。そうだった。取扱説明書には、「組み上がったら起動する前に充電してください」そうあった。確かにそうだった。

「しまったークソー」

 ラディすけは金色の髪を抑えながら、頭を二度三度と振る。

「じゃあいいか? 一旦家に戻るぞ」

「うん」

 帰ろうと一歩目を踏み出そうとしたその時だった。ラディすけの青い鎧を銃弾がかすめたのだ。

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