変えることのできない未来


「ねっ、あなたの名前は未彩だよね? 」


 透き通った瞳で彼女は私に尋ねてくる。これは私の罪、だから私は短く肯定する。


「未彩は何で変な格好で座ってるの?」


 私は無言を貫く。


「ねぇ? 未彩? あれ、生きてるよね?」


 私は無言を貫く。


「んぅ、仕方ないなぁ」


 そう言うと彼女は、私の唇に自分の唇を合わせた。少し甘い、ほんのり温かい彼女の唇。


 私は声を漏らしてしまう。


「あはっ、生きてるじゃん! 良かったぁ 」


 私は彼女にきつい視線を向ける。


「やっぱり未彩は可愛いね! 」


 私は全力で叫んだ!目から涙が溢れ出てくるけど、そんなのは関係ない!


「美湖なんかには分かる訳ないじゃない! そうやっていつまでも、心の底では私のことを笑って、もう嫌。早く出てって」



 不思議そうな顔をした彼女は部屋を出ていく。


 私は泣き叫んだ。


 変えることのできない未来に私は絶望した。

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