失った少女たち

哘 未依/夜桜 和奏

失ったもの



美湖みこなんかには分かる訳ないじゃない! そうやっていつまでも、心の底では私のことを笑って、もう嫌。早く出てって」


 私に彼女の悲しみを理解することはできない。私は他人の感じる感情の意味を理解することが出来ない。喜び、悲しみ、怒り、全ての感情。自分のことならわかるのに他人のこととなると察してあげることもできない。


 言われるがままに、私は泣き叫んでいる未彩みさを残して部屋を出た。


 今までに一度も私は理解をされることはなかった。誰からも、親にすら。

 

 そんな私は捨てられた。私たちと貴女の最後の旅行に行きましょうと親に言われた。その時の親の表情は楽しそうだった。私もなぜだか嬉しくなった。そして旅行先の島に置いていかれた。足を、手を、口をテープで動かないようにされた。そして縄で木に括りつけられた。なんで?どうして?と何回も心の中で叫んだ。そんな私の声なき声は誰にも届くことはなかった。

 どれくらいの時間が経過したのか、私は生きる気力も失っていた。人間は本能的に体をきゅっとして粗相をしないように耐える。だけど、私からは蛇口が常に開きっぱなしになっているかのように流れ出ていた。



 ただ息をするだけの人形。私に相応しい名前だった。




 どれくらいの時間が経過したのだろうか、畳の上で目を覚ました。どうやら、変な格好をして寝ていたらしい。身体の節々が痛い。大きな伸びをして身体をほぐす。そして立ち上がり、スカートのポケットに手を入れた。


 ボロボロになった木のかけら。そこには私は美湖、幼馴染の結花ゆいかと刻まれていた。









 

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