2:何を思って!? ギルド名

 キャラシが出揃い、シナリオを考えるGM。

 今回は単発、テキストセッションで4時間前後の予定である。じっくりロールプレイして個々人を深堀りするには心許ない。ならばみんなの表面的な設定をさらえるような形で…………こいつら、問題児ばかりだな?

 じゃあ、そういうことで導入される話にしよう。となれば、出したいエネミーも自然と定まる。よしよし。


 と、1週間の調整期間を設けていよいよセッション日。


GM:おはよう諸君!

GM:直前のボイスチャットで設定も温まってきたことだし、はじめて行こうか

一同:よろしくお願いしまーす

GM:というわけでね、導入してくよ~、ティグリスくんちゃん。

ティグリス:はい。

GM:君は本来所属しているギルド支部の支部長に呼び出される。それも個室。なんか内密な話があるらしい。

ティグリス:ふむ。まぁ極秘の依頼か何かでしょうか。素直に向かいましょう。

GM/支部長:「おはよう、ティグリスくん。実を言うとだね、今日来てもらったのは他でもない。君に任せたいことがあるんだ」

ティグリス:「ええ、まぁ、そうでなければ呼ばれないだろうな、とは。どのようなご用命でしょうか、支部長様」

GM/支部長:「ある町でね、幾人もが消え去る事件が確認されている」

GM/支部長:「その行先まではなんとか判明したんだがね。その犯人の根城の調査と討伐のため、特別チームの編成が超都市の冒険者ギルドとして決定された」

GM/支部長:「君はそのメンバーに選出されている。というわけで、そちらに向かってもらいたいんだ」

ティグリス:「なるほど……」(やや憂鬱そうな美女フェイス)「……いえ、支部長には日ごろお世話になっていますしね。拝命致しました」

GM/支部長:「了承してくれて嬉しいよ。貴重な犠せ、ンッンッ!」

リン:あやしい

ジャスミン:すごく怪しいですね

アムラシウス:一体何を隠しているんだか……


 ナ、ナニモナイヨー?


ティグリス:「ぎせんっん……義戦……義の戦い、ということですか。なるほど」

GM/支部長:「あ、ああ、そうだとも。うんうん。君は実に素直でいいな」

ティグリス:「照れます」

GM/支部長:「集められたメンバーは”犯人に対抗できそうな者”と聞いている。或いは――――なんともなさそうな女、かな」

ティグリス:「ははぁ。よくわかりませんが……いえ、信頼からの依頼ということは理解しました。尽力しましょう」

GM/支部長:「まず集合してもらうのはタコンショという町の〈ぐちゃぐちゃのおもちゃ箱亭〉というギルドだ」

アイズ:ぐちゃぐちゃの……なんだって?

ジャスミン:何を思ってそんな名前に……

リン:そういえば、『○○の××亭』って名前、よくあるけどなんなんでしょう

ティグリス:識字率低い時代は絵で店名を表してたので、その表現ですね

アムラシウス:ということは、中のおもちゃがぐちゃぐちゃになってるおもちゃ箱が描かれてるのか

ジャスミン:何を思ってそんな絵に……

GM:この文法にこだわる必要はないんだけど、慣例的にね。

ティグリス:話を戻しましょう。「かわいい名前のお店ですね。わかりました」

GM/支部長:「では、健闘を祈るよ」

GM:そんな感じで君はタコンショへと向かうことになった――――

GM:――――まあ、他の面子の個別導入案はないんですけどね

リン:ないんだ


 というのも君たち、名の知れた厄介者ばかりだからね! ティグリスを監督者にして事件を言い訳に厄介者を纏めて島流しにしてしまおうというギルドの思惑でメンバーが選出されたのだ。


GM:それぞれ、直属のギルド支部長なり神殿なりから派遣を告げられます。

ジャスミン:じゃあ例えばプリーストの私は似たような流れで神殿から命を受けた、と

リン:たぶん一緒に受けた

アムラシウス:俺はギルドからだろうけど、こいつに声をかけるのは間違っていると思う

アイズ:フフ……全ては流れゆくままに……聞こえたのだよ、民の咽び泣く声が……

GM:そ、そうか……そうかもな……うん。というわけで〈ぐちゃぐちゃのおもちゃ箱亭〉にシーンを移そう。





GM:こちらの支部長は男性ですね。最初は誰が着くかな

アムラシウス:じゃあ、着こうかな

GM:カランコロン、と音を立ててドアを開くと、リカントの男性が出迎えた

GM/支部長:「ああ、いらっしゃい……いえ、ようこそ来てくださいました。アムラシウス様……ですね?」

アムラシウス:「俺のような者にそうかしこまる必要は無いぞ。如何にも俺がアムラシウスだが」

GM:あ、他のみんなは任意のタイミングで乱入していいよ

リン:乱入!?

アイズ:ほう

GM/支部長:「いえいえ、滅相もございません。この町をお救いに来てくださった方ですから」

アムラシウス:「人が消えているそうだな。さて、ダブラブルグかドッペルゲンガーか……」(ニヤニヤしだす)

GM/支部長:「魔神の仕業……という考え、ですか……いえ、私では専門外ですから、お任せいたしますけど」

リン:何か知ってそうですね

GM/支部長:「ああ、お客人にはお茶をご用意しなければ」

アムラシウス:「お構いなく。他の者が来るのをゆっくり待たせてもらうとするさ」とんがり帽子を机に置いて

ティグリス:「お邪魔致します」ノック! 入店! カランカラン!!!

リン:う、うるさい

GM/支部長:「おお! お待ちしておりました、ティグリス様」

ティグリス:「おや、名乗る前からご存じの様子……美人の恩恵ですか。如何にも、“幕引きの”ティグリスです」

GM/支部長:「こちらからお呼びしたのです、情報には目を通してありますとも。さて、お茶が入りました。お茶請けもご用意しております、どうぞお召し上がりください」

ティグリス:「お気遣い感謝します」アムラシウスさんの前に座りましょうか。誰でしょうこの人。術士っぽいですね。

アムラシウス:「(ティグリスを見てにこりと笑う)(不気味な笑み)(本人に悪気は無い)」

ティグリス:「?(美形微笑みスマイル)」

GM:言葉で通じ合えよ

ジャスミン:ではここで店の前に着きますね。「リン、ここが目的地の《ぐちゃぐちゃのおもちゃ箱》亭ですよ。」

リン:「やっと着きましたね、お姉様。」

リン:「どうぞお先に」(扉を開けるけど先にジャスミンを入れるムーブをする)

ジャスミン:「こんにちは。ミリッツァ神殿からの2人。到着いたしました」

リン:(ペコリとお辞儀)

GM/支部長:「ミリッツァ神殿から……ああ、ジャスミン様とリン様ですね」

ジャスミン:「他の方々はもういらっしゃいますか?」

GM/支部長:「ええ、あと一人といったところです。揃ったら、依頼の詳細をお話しましょう」

ジャスミン:「おや、思ったより皆様早いおつきなのですね」

ティグリス:「あ、どうも。ティグリスです。足は速い方なので」

ジャスミン:「ああ、これはどうも。よろしくお願いします。私はジャスミン。そして、こちら連れのリンです」

アムラシウス:「のんびりやってきたつもりだったんだがな」

アムラシウス:そういえば、俺は帽子脱いだから角が見えてるね

リン:「どうも」(ぺこり) ……こいつ従者か?

GM:じゃあアイズくん、オチは任せた(?)

アイズ:全部投げられた。「フフ……どうやら役者は揃っているようだ」カランコロン

GM/支部長:「ああ、いらっしゃいましたね。アイズ様」

ジャスミン:「ということは、あなたが最後の……」

アイズ:「アイズ・ブラックウッド。……そう、“あの”アイズ・ブラックウッドだよ」

アムラシウス:「(“あの”アイズ・ブラックウッドか……)」変人仲間として知ってる

ジャスミン:(あのアイズ・ブラックウッド!?)

アイズ:狂人が狂人であることを認識するな

ティグリス:「(ああ、“あの”……)」聞いたことあるある。

GM:フランベルジュ級だから都市内合同くらいだけど、まあ割と噂漏れてそうだよね

リン:(あの……? どの?)

ジャスミン:「ちょ、ちょっと待ってください。“あの”アイズ・ブラックウッドと組めというのですか!?」

GM/支部長:「ええ、この5名の特別チームで事件に対応してもらいます」

アムラシウス:「それなりに実力者が揃っているようだ。肩身が狭いな」1人だけ冒険者ランクが低いため

リン:「お姉様、ご存じなのですか?」

ジャスミン:「私たちと同じ聖職者…とはいえないでしょうね」

ティグリス:「あ、このクッキー美味しいですね」ぽりぽり

ジャスミン:「なにせ彼女は、自分自身が神そのものだと標榜するような頭のおか…自信に満ち溢れた冒険者です」

アイズ:「フ。気が乗らないなら構わない。運命に反逆するもまた業なのだから」

リン:「なんと、私も神に至りたいとは思っていますが、まだそのような域には達せておりませんのに……すごいお方なのですね?」

GM/支部長:「ですが、これはアルショニアにある冒険者ギルド支部全体として決定されたことです。メンバーに関しては、私の関知できうる範囲を超えています」

ジャスミン:「これもミリッツァ神の采配だと信じて受けるしかないのでしょうね」

アイズ:「この現身は神に非ず、されど神の目であることに相違はない」

GM:気の弱い人なのか、ちょっと声が震え気味ですね

ジャスミン:(あるいはリンに反面教師として学ばせる良い機会なのでしょうか?)

アムラシウス:「ああ、そういえば自己紹介が必要かな。俺はアムラシウス。巷では”倒錯の”などという二つ名で呼ばれているがね」

アムラシウス:「ここに集ったメンバーからすれば取るに足らない一介の術士だ」

GM:あ、いいタイミングなので、そのまま自己紹介しようか

ティグリス:「(男性ですか。このパーティは女性が多いのでやや親近感ですね。いえ、今の私は女性なのですが)」

GM:次は……ティグリスさん

ティグリス:「あ、では改めて。戦士“幕引きの”ティグリスです。斧働き以外にできることはありませんが……尽力しようと思います。どうぞよしなに」

GM:次はどっちかな、ジャスミン?

ジャスミン:「初めまして。女神神殿の者です。冒険者というよりはプリーストが必要な時に手助けする形で参加しているのですが、それでもみなさんの足を引っ張ることはないと思います」

ジャスミン:「こちらは同じく神殿から来ている、妹分のリンです。さ、リンみなさんにご挨拶して」

リン:「はい、ご紹介にあずかりましたリンです。よろしくお願いします」

GM:それだけなのか……じゃあアイズ

アイズ:「アイズ・ブラックウッド。神の現身、夢の産声。胡蝶ここにありて、ただ理を見るのみ……フフ。民草に導かれるもまたかくあるべし、というわけか」

アムラシウス:「(筋金入りだな……)」

GM/支部長:「(噂に違わぬ方ですね……)」

ティグリス:「何言ってるのか全然わからないですね」

リン:「解釈違いって事だけ理解できたんですけど、それで合ってますか?お姉様」

ジャスミン:「ああはなっていけませんよ」

リン:(はてなを浮かべている)「……理解しちゃいけないってことですね」

ジャスミン:「あなたの信仰も少しばかり特殊な形をしていますがグレンダール様が祈りに応えてくれるうちは『本物』です。ですがアレは…」

アイズ:「フフ、責務に身を窶しても壊れぬ心と魂なくしてこの在り方は有り得ないのだよ」

アムラシウス:「己を信じているという話だろう?そう批判してやるものではない」


ジャスミン:ロールプレイで自己紹介するとそれぞれ話してないことが多すぎますね

アイズ:言わなければ伝わらない、黙して語らず秘めるのみ……フフ、既にそれは充分なのさ


次回:語らないのは依頼も同じ

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