第2話

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 翌日、佐竹はカフェで人を待っていた。匿名だが自分に会いたいというメールが来たからだ。来社する目的は昨日の老人、猪子部銀造と同じ『東京オリンピック』に関することだ。

 匿名の個人と言うのは結構多い。まぁ、それは個人としては語れない事情というものもあるわけだが、だが語りたければ『匿名』となる。人間と言うのはどうも黙ってはいられない性分なのかもしれない。壁時計を見れば、もうすぐ午後二時になる。その二時が相手との待ち合わせ時間だ。

 佐竹はメール本文に目を遣る。メール自体は定型文だが、文末にある「わたくしの一身上の理由から匿名でお願いします」という一文から、恐らく女性ではないかと推量している。『わたくし』とはあまり男性は使わないだろう。それも若い人ではない、となるとそれなりの年配の婦人と考えている。

 そんな簡単な当て推理をしながら、佐竹は待ちあわせ迄の数分で昨日の老人の話をまとめようとキーボードを打ち始めた。

 仕事は時間の隙間を利用して進めなければならない。


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