第4記:戯言

 今月中旬から『次元鍋』を始めた。突発的な起動であった。カテゴリーは「エッセイ・実用」になっている。自分では一応随想を書いているつもりなのだが、実際は「おっさんのたわごと」みたいなものである。

 みたいなものだが「小説」より「随想」の方が、比較的楽に書けるのは確かである。書き慣れているということもあるし、俺の性格や性質に合ってもいるのだろう。

 長文は苦手だが、短文は得意とは云わぬまでも、頭に浮かんでくる。浮かんでくるままに筆を進めれば、大体1000字ぐらいになる。今日も思惑通りに進んでくれた。他人様が読まれて、面白く感じられるかどうかはわからないが、本人はかなり楽しんでいる。


 記すまでもないけれど、次元鍋のイメージはお洒落な宮廷料理ではない。その辺に転がっている食材を手当たり次第に放り込む。即興重視の鍋だ。蛮人式のごった煮であり、冷蔵庫の残品一掃を兼ねた賄料理(カレーやシチューなど)のようなものである。

 俺にはそれしか書けないし、それで良いと思っている。創作では、相当無理をしているので、こちらでは無理をしないようにしている。小説に行き詰まると、随想が書きたくなってくる。振り子の関係が形成されつつある。

 かの『美味しんぼ』に登場した「浜鍋」や椎名(誠)先生のアウトドア随筆に出てくる「雑魚鍋」が俺の理想である。美食家や薀蓄屋が見向きもしない下魚(失礼な呼び方だ。魚が怒るぜ)を素材に選ぶところが面白い。浜鍋や雑魚鍋のような滋味に富んだ文章を書きたい。


 などと云いながら、今月の次元鍋に投入された素材や材料のほとんどが一流品であった。浜鍋はともかく、雑魚鍋とは呼べぬだろう。迂闊に呼んだらお叱りを受けます。雑魚鍋どころか、これほど豪勢な鍋は世に稀ではあるまいか。但し、料理人(俺)の腕が悪いので、鍋の仕上がりもそれなりになってしまっている。せっかくの良材も台無しである。反省反省。

 睦月よりも如月、如月よりも弥生、少しでも美味しい随筆をこしらえたいと考えている。最後まで悩んでいた章名も決まったし、あとは書くだけだ。100次元まで、残り87次元。〔1月31日〕


♞補綴中、失笑した。またぞろ、振り子の関係が出てきたからである。その後も次元鍋の作成は続き、500次元の時点で一旦終了した。同日、旧友から「お疲れ様でした」というメールが届いた。深謝。

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