第6話 村の娘達に恐れられる私

 今日は村に月に数日滞在する旅商人が来る日でついでに仕入れを頼んでいた品が届いたから取りに行くとヴァンサンは手押し車を引っ張ろうとしていたので手伝うと言い付いてきた。


「お嬢様に手伝わせるなんて俺殺されるんじゃ?」

 とヴァンサンは心配したが私は


「貴族が皆そんな酷い奴ばかりじゃないわよ。それに療養に来てるのは私一人だしね」


「療養ってどっか悪いの?病気なんかお嬢様?」

 わ!やべえ!


「あの、違うの。病気とかじゃなくてほら心の問題よ!ストレス!ほら!」


「ああ、そっか、そうだな!最初ストレスで大変とか言う話してたもんな」


「そ、そうよ、ほほほほ」

 とやり過ごしていたら旅商人や村娘達がざわついて私を見た。


「?」

 村娘のひとりが私を見て明らかに怯えたように


「ひっ!!?べ、ベス!?」

 と口走った!!


 えっ!!!?

 今ベスって言った?え、私?


 旅商人のおじさんも髭を触り


「こりゃ、驚いたな!!お嬢さん!あんたベスにそっくりでねぇか!!わはは!!も、もしや生まれ変わりか?」

 と言われてショックを受ける私。似ているとは思ってたけどそこまでなんだ!!


「おじさん…そうだよね。似てるよね!!おじさんが描いてくれた絵!俺大事に飾ってるよ!」

 とヴァンサンがにこにこして言う。

 あの絵この旅商人のおっさんが描いたんかい!!上手いやないか!!


 いや違うだろ!時を戻そう。


「あの今日は…私…オレリー・クローデット・ルネ・ラヴァルと申します。一応侯爵家の令嬢で今はあのちょっと心の療養にこちらに来ていまして…」

 と言うとザッとおじさんの顔つきが変わった。胸に手を当て


「と、とんだご無礼を!お嬢様に犬に似てるとか!!わ。わしはなんてことを!!」

 すると周りがまたざわついた。


「見て!おじさんがベスに謝ってる!!」

「やっぱりベスなんだわ!私ベスに威嚇されたし」

「それはあんたがヴァンサンに色目使おうとしたからよ…ベスはあの頃からヴァンサンを私達から守っていたわ…」

「私…ヴァンサンが見てないところで手を噛まれたもの!」

「ヤバイ!これはもうベスの呪いに違いないわ!」

「やっとベスが死んだと思ったら生まれ変わってくるなんて!!なんて恐ろしい犬!!」


 と囁かれる!!ベス!どんだけ!?

 つか私ベスじゃねぇよー!?


 仕入れを受け取り荷を手押し車に乗せて行くヴァンサンは


「どうかした?」

 とキョトンとした。

 渦中の人物はベスに守られていたことも気付いてないのか??

 そんな中一人の綺麗な顔立ちの村娘さんがこっちに来た。


「バカらしいわ!ベスの生まれ変わりだなんて!!ねぇ、ヴァンサン!今度私の靴も新調したいの!」

 とヴァンサンの肩に手を置きやたらペタペタ触っている。


「えっ!?また?村長の娘だからって贅沢がすぎない?村長は知ってるの?」

 とヴァンサンは言う。


「父さんなら私の言うことなんでも聞くわよ!!大丈夫よっ!私可愛い靴がいいなぁ!」

 と近寄るので私は


「バウっっ」

 と吠えてみたら娘が驚き離れそして青ざめた!


「ひっ!ひいいっ!ベス!!やっぱり貴方ベスなの!?いやああごめんなさいごめんなさい!後で骨つき肉持って行きます!許して!!」

 あんたベスの生前何をしたんだ!?


 娘は逃げて行きヴァンサンがジーと私を見てる。


「べ、ベス?」

 とそろりと手を出した。


「いや、ベスじゃないからっ!!」

 ペチンと手を叩く。


「ああ…そっか…そうだよな」

 と残念そうだ。

 しかしこの一件で私はベスの生まれ変わりという事が完全にこの村で広まりナタリーさんに後で爆笑されてしまった。


 ベスじゃねぇよー。

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