ブスだから母と妹に婚約者を取られ胃が痛くなったので新しい恋を探そう

黒月白華

第1話 婚約者を取られた私

 私…オレリー・クローデット・ルネ・ラヴァル侯爵令嬢…17歳…、髪色は黒茶色で肌質もあまり良くないし見目も不細工。太ってないだけマシ。目はつり目で、細い。瞳は茶色。


 つまるところブス。

 が…ある日素敵な美青年のジョゼフ・テランス・ギャブリエル・オトテール伯爵令息さんとお見合いし婚約が成立した。髪は青く夜空のように澄んでいて、瞳も輝く銀色をして色白で言葉も仕草も丁寧な方で第一印象は良かった。愛想もよく話も弾んだ。ブスにも優しい!!


 うちは父が早くに亡くなり美しい母と妹と私で何とか生きてきた。母は女侯爵として領地を治めてきた。私がジョセフさんと結婚すれば母も安心して引退できるだろう。

 そう思っていた。


 ある日の午後、薔薇の咲く温室で読書でもしようと出かけたらなんか甘ったるい声が聞こえた。何処の使用人かとそっと覗いたら…

 なんということか!


 美しい母のエリーヌ・シゴレーヌ・ラヴァルが私の婚約者といたしておった!!


「エリーヌ奥様…っ!」


「ジョセフさん…!」

 お互いに服をはだけさせ名前を呼び合い母は聞いたことない甘い声で熱烈に愛し合っていた。

 ショックで声も出ずフラフラと私はその場を後にした。


 あまりにも青ざめていたのでこれまた美しい妹…16歳の美少女ジャネット・エルミーヌ・クリステル・ラヴァルが声をかける。母とよく似た顔立ちに金髪碧眼で閉まるところは引き締まり胸も母と妹はナイスバディそのものだ。


「お姉様どうしましたの?顔色が悪いですわ?お休みになられたら?今にも倒れそう」

 と心配されて侍女に連れられ私は部屋で休むことにした。

 そりゃ自分の母親がまさか婚約者と浮気してるなんて!この場合、父は死んでるから浮気?と言えるかは知らんけどジョゼフは確実に浮気だよね。


 ああ、頭が痛いわ。薬を飲んで横になる。

 それからひと眠りした。悪い夢だと思った。


 夜になり起きて侍女さんに夜食を少し持ってきてもらい黙々と食べた。

 それからトイレに行ってまた寝ようと廊下を歩いていたら妹の部屋から甘い声がした!!


 ええっ!?

 思わずドアに耳を張り付けてしまった!!

 中から卑猥な音やら声が聞こえる。よく聞けば


「ああっ…ジャネット!!可愛いっ」


「やだっ…ジョゼフ様っ!ああんっ!」

 と。

 一気に吐きたくなった。妹と婚約者がヤッとるがな!!


 え?昼間ジョゼフさんは母とヤッて夜は妹とヤッてる!!


 なぁああああ!!?


 ちょっとプチパニックに陥った。

 とりあえずトイレに行きちょっと吐いた。

 嘘だろ?

 現実とはなんと厳しい!

 しかし洗面所の鏡を見て理解した。


 私…ブスやんけ。


 太い眉に細い目に…頰にソバカス。鼻は低く唇も分厚い。

 ブスだ。まごうことなきブス。

 こんなん…私なんか浮気されまくられるに決まってるわ。

 私との婚約なんて侯爵家の跡取りが目的であり私が目的ではないなんてことちょっと考えればわかることやんけ!!


 全体的にパーツが悪いのだ。

 むしろ私…本当にあの美しい母と妹と血が繋がってんだろうか?父もここまで不細工ではなかった。

 普通ののっぺりした顔。


 は?おかしい!!絶対になんかおかしい。



 *

 次の日から侍従に内密に調べさせて何とか調べたが…私はなんと…生前の父の隠し子だったようだ。

 本当の母親は娼館のブス女でその人が父にあんたの子が出来たけど金がないから産んだら捨てる気だと言うと母と父は同情し引き取ったらしい。


 なんてこったい。

 そりゃあの母の遺伝子が一つもないんだからブスに決まってるしブスから産まれたのだからブスに決まっている!!


 むしろここまで育ててくれた育ての母に感謝すべきだろう。婚約者を寝取られたくらい、妹にも取られたくらいどうってことないよね。


 と私は我慢することにした。

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