第11話
(オスカー視点)
マリオンから長い手紙をもらった。
正直、ショックを隠せない。
理解できなかった。
折角、マリオンが相応しい女性を迎えて、ようやく全てが上手く収まったと思ったのに・・・。
マリオンは一体何を考えているんだ。
大体、彼女に失礼ではないか。
それに、よりによって自分を選ぶなんて・・・何の嫌がらせなのだろうか。
よく日付けを確認して見れば、明日彼女が来るのだという。
彼女には、恥を忍んでこちらの事情を話さねばなるまい・・・。
そして、協力できないとはっきり伝え、黙って引き取ってもらうしかないだろう。
本人が許して望んでいるとはいえ、友の妻を寝とるようなろくでなしには、なりたくなかったし、何より今の関係を壊したくはない。
マリオンとはこれからも今まで通り、同僚で、ただの遠縁の友人で・・・というのがお互い一番良いのだ。
◇
約束の日が来た。
侯爵家の口が堅い使用人に、オスカーの私室へと通されたクリスティーナ。
オスカーは深いため息をついてから、クリスティーナに問いかけた。
「まず、確認しよう。君がこのマリオンのろくでもない企みについて同意があるのかどうか」
「正直、気が進みません・・・。私ははじめは金銭的な理由から断る事など出来ないと考えていました。しかし、その後マリオン様は決して金で私の頬を打ちつけるような真似をなさるおつもりは無いのだと分かりました。
私は本当のマリオン様について、何一つ知らないのではないかと思ったのです。」
「ほう・・・」
「私が今日ここへやってきたのは、オスカー様がこの事についてどうお考えなのかを知る為、そして私の知らないマリオン様がどんな方なのかあなたに教えていただく為です。
そして、その上でこれからどうするか、自分であらためて決めたいと思ったからです。」
「そうか、良く分かった。
だが、今すぐ相手とどうこうしようという気も無いのに、夫の頼みとはいえ、不用意に他の男の部屋に入ったりしたらどういう事になってしまうか、考えた事は無いのか?」
一瞬、オスカーがクリスティーナに昏い視線を送った。
「・・・」
彼女の背中を冷や汗が伝った。
しかし、次の瞬間、オスカーはおどけるように言った。
「なに、少し脅かしてみただけだ。相手が俺でよかったな?他の奴の前で、そんなに不用心で居ると食われてしまうかもしれないから、気をつけろよ?」
「はい・・・」
クリスティーナは、己の不用意さを指摘され、少し恥ずかしくなったのだった。
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