第5話冒険者登録をし、初めての依頼を受ける
その騒動の後、再び受付に呼ばれる。
「はい、ユウマさん。これが貴方のギルドカードとなります」
そこには、手のひらサイズの銅プレートに十級という文字が刻まれていた。
「へぇ……こういう感じなんだ」
「ええ、では説明はどうなさいますか?」
「ランクや昇格の条件はわかるので、それ以外に注意点はありますか?」
「では……十から八は下級冒険者、七から四が中級冒険者、三から一が上級冒険者と呼ばれます。プレートもそれぞれ、銅、銀、金となっております」
「なるほど……俺は十級で銅ということか」
「あとは、先ほどのような諍いにはギルドはなるべく関与いたしません。ただし、殺し合いとかになるならば別です。なので、出来るだけ問題は起こさないように」
「はい、以後気をつけます」
「素直でよろしいです。依頼は三回失敗すると取り消しとなります。十級の場合は冒険者登録を剥奪となりますのでお気をつけください。あとは、犯罪者も取り消しとなります」
「わかりました」
「あと、依頼は一つ上のランクまで受けることが可能です。おや、すでにお持ちですか?」
「ええ、これを受けたいのですが……」
ついでに、依頼書をいくつか持ってきていた。
「えっと……十級の薬草集め、九級のコボルト退治、十級の荷物の配達……了解です」
コボルト……二足歩行の犬みたいな奴だな。
繁殖力が高く、街道を行く人々を襲い、盗みや屍肉を漁る迷惑な魔物だ。
その後すぐに処理され、ひとまず終わったようだ。
「とりあえずはこんなところですね。またわからないことがあれば、遠慮なくおっしゃってください」
「ええ、そうします。ありがとうございました。では、失礼します」
きちんと頭を下げてから、その場を後にする。
外に出た俺は、早速依頼をこなすことにする。
「配達から行くか……」
これを受けた理由は簡単だ。
俺が住む王都はとても広い。
屋敷の中とその周辺なら土地勘はあるが、それ以外の場所はそこまではない。
貴族であるゆえに、学校や軍には馬車で行っていたし。
「えっと……南区から、東区にお届け物か」
この王都は五つの区に分かれている。
衣服やアクセサリー、平民の方々の住処を中心とした東区。
飲食や娯楽を中心とした西区。
冒険者ギルドや商人ギルド、武器防具を中心とした南区。
教会や貧困街を中心とした北区。
そして貴族街や軍の施設、王城を中心とした中央区となっている。
「まずは食材を買い、それを届けると」
商人ギルド付近の店で食材を買い、東区に向かっていく。
「この辺を歩くことなんてないからなぁ……」
基本的に貴族は平民街にはいかない。
行く理由がないと言った方が正しいかも。
価値観も違うし、諍いの元にもなるし。
たまに趣味の悪い貴族街が威張り散らしには来るらしいけど……。
「恥ずかしくないのかね?上に立つ者こそ、謙虚でなくてはいけないのに……」
俺も貴族学校に通い、辟易したのを今でも覚えている。
親が偉いと、自分が偉いと勘違いする同年代の子供達。
爵位が高ければ、何をしても許されると思っている高位貴族達。
「……まあ、貴族じゃなくなる俺には関係ないか……」
そして、とある民家に到着する。
「ごめんください! 冒険者ギルドから依頼を受けた者です!」
扉から、年を召した女性が出てくる。
「こんにちは、リラさんでよろしいですか?」
「こんにちは。ええ、そうです。おやおや、すまないね……はい、確かに」
依頼書に判子を押してもらい、これで依頼達成となる。
「ありがとうございます……お身体が悪いのですか?」
「え?え、ええ……ご覧の通り怪我をしてまして……買い出しにも一苦労なものですから……」
膝が不自然に曲がり、杖をついている。
年齢だけによるものじゃないってことか……。
「失礼……触れてもよろしいでしょうか?」
「え、ええ……」
ふむ……腫れているな。
だが、これなら……。
「かの者の傷を癒したまえ、ヒール」
「え……?」
「これで平気なはずです」
「……ホントだわ。で、でも! お金なんて……!」
相変わらずのクソ教会め……!
回復魔法を使える者は希少だ。
なので、治療を受けると……。
教会が神の奇跡として、お布施という名のもとにお金を徴収する。
それも望外な額を提示する……平民には払えないほどの。
例えば、今の初級であるヒールでも、平民の一ヶ月分の給料くらいは取られる。
「いえ、お代は結構です。俺は自分のためにやっただけなので。ただ、このことは内緒にしてください……貴女のために。教会がうるさいですからね」
「若いのにしっかりしてるのね……貴方、お名前は?」
「ユウマと申します」
「ユウマさんね、覚えたわ。本当にありがとうございます。これで、買い物にも行けそうだわ」
「いえ、完全にはひいていないはず。二、三日は様子をみてください」
「あらあら……はい、わかりました。ふふ……良い方に来て頂けたわ」
「ですが……」
「もちろん、わかってますよ。好意につけ込んで頼むような真似はしませんから」
……フゥ、見た目通りの方で良かった。
たまに、それを良いことに利用する人もいるからな。
だから、いつも迷うんだよなぁー。
こうして、初めての依頼達成をした俺は、家に帰宅するのだった。
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