第3話冒険者登録

 無事に叔父上に認められた俺は、叔父上の住処へと入る。

 平屋タイプの家だが、そこそこの広さはある。


「うわっ! きたなっ!」


 酒の空き瓶やゴミが散らかっている。


「あぁ?これくらい普通だろ」


「そうだった……この人戦うこと以外はダメな人だった……」


 滅多に会うことはないから忘れてた……。

 俺は会いたいけど、親父がうるさかったからな。


「おい?一応、師匠で叔父だからな?」


「それとこれとは別です! 片付けるので——出て行ってもらえますか?」


「……義姉さんにそっくりだな。発言も顔も……わかったよ」


 叔父上はぶつぶつ言いながらも、部屋を出て行った。


「さて……これから世話になるわけだし、これくらいはやらないとな」


 その後、部屋を掃除する。




 二時間くらいで、どうにか片付けが終わった。


「つ、疲れた……」


 俺も一応貴族の端くれではあるから……。

 こういう作業には慣れていない。


「でも、もうミストル家を名乗ることはないだろうな……」


 つまり、ただのユウマとして生きていくということだ。

 ならば、こういったことにも慣れていかないと……。


「おっ、終わったか?……俺の家じゃないみたいだな」


「というか、なんでまだここに住んでるのですか?」


 伯爵待遇なので、望めば良いところに住めるはずなのに。


「いや……まあ、アレだ……」


「……さては、追い出されましたね?」


「し、仕方ねえだろ。あんな綺麗なメイドがいたら……」


「ハァ……女癖は相変わらずですか……まあ、無理強いしないだけマシか……」


「そ、そんなことより! お前、これからどうする?生活費までは面倒見れんぞ?」


「もちろん、そこまで甘えるわけにはいかないですよ。とりあえず、今から冒険者登録をしてきます」


「そうか……まあ、お前には向いているかもな。人当たりも良いし、優しいし協調性もある。ただ、その真っ直ぐさを嫌う奴もいるから気をつけろ」


「そういうものですか?叔父上は何故登録しないのですか?」


「向いてないんだよ、俺は。魔物と戦うのは悪くないが、俺は対人戦……剣と剣で戦うことがしたいからな」


 そうだった、この人は戦闘狂だったな……。


「そうでしたね……それで、大陸中を武者修行の旅に出たんですもんね」


 確か、十五歳で出て行って……十九歳で帰ってきて。

 そっから三連覇して、現在に至ると……。


「ああ。とりあえず三連覇したが、しばらくはここにいるつもりだ。お前も考えとけよ?どうしたって生き辛いからな……兄貴とバルスがいる限り……」


「ありがとう、叔父上。うん、一応考えてはいるよ。じゃあ、早速行ってくる」


「まあ、待て……これでいいか」


「ん?洋服……?」


「お前のその格好じゃ、貴族ですって言ってるようなもんだ」


 俺の格好はトレンチコートにマント……。


「……確かに、そうかも。ありがとう、叔父上」


 すぐに着替えて、庶民が着るようなゆったりとした格好になる。


「とりあえずは平気……じゃないが、仕方ねえな。さて、アイツがちゃんと……」


「ん? アイツ?」


「いや……ほら、さっさと行ってこい。日が暮れるぜ?」


「誰のせいですか……」


 家を出て、そのまま冒険者ギルドに向かう。




「そうだよな……そのためにも登録をしなくちゃいけない」


 いずれ、この国を出て行くことも考えなくてはいけない。

 もしくは、辺境の地に行くか……。

 そのためには、大陸のあちこちにある冒険者ギルドが頼りだ。

 ランクの高い者は入国審査が楽だったり、依頼なんかでも通過できるらしい。

 それにお金も稼がないとだし。


「えっと……確か」


 学校や軍の授業で習ったよな。

 冒険者とは、国や民からの依頼を受けたり、未開の地の探索や宝物を見つける者。

 上から一級から十級、そして特例として特級があるんだっけ?

 依頼をこなしたり、ギルドに貢献することでランクが上がっていくと……。



 そんなことを考えつつ、ギルドに到着する。


「よし……行くとするか」


 ドアを開けて、中に入ると……。


「へぇ……こういう感じなのか」


 椅子はなく、テーブルだけがいくつかある。

 そこで立ち話をしている人や……。

 壁に貼ってある、依頼書と思わしき物を見ている人もいる。

 奥には受付看板があり、その下には人が座って待機している。


「あそこで登録するのかな?」


 とりあえず奥に行き、受付の女性に話しかけてみる。


「あの……すみません」


「はい、なんでしょうか?ご依頼でしょうか?」


「いえ、登録をしたいのですが……」


「……わかりました。登録ですね。年齢とお名前を教えて頂けますか?」


「ユウマと申します。年齢は十八歳です」


「ありがとうございます……ではカードを作りますので、少々お待ちください」


「はい、よろしくお願いします」


 受付を済ませ、とりあえず依頼書を眺めることにする。


「なるほど……多岐に渡るな」


 魔物討伐から賞金首、護衛の依頼や素材の調達、街の清掃や荷運びなどの雑用まで。


「ねえ、あれって……」


「いや、しかし格好が……」


「それに……意外と隙がないわよ?」


「立ち姿は堂に入ってるな……」


 ……目立ってる?

 格好は普通のはずだが……。

 さっさと終わらせて、依頼を受けて帰るとしよう。


「貴方!? なんなんですの!? お退きなさい!」


「おいおい、こんな美人滅多にいねえぜ?」


「その格好、魔法使いか?しかも新人だな?ほら、俺らが色々教えてやるよ」


 ……なるほど、そういう人間もいるよな。


 さて、お節介かもしれないが助けるか。


 幼い頃から、これだけは耳タコが出来るほど母上に言われたし。


 困ってる人がいたら助けなさいってな。

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