第8話 いざダンジョンへ!


「小烏丸、手を出してくれ」

「手を?」


 言われた通りに手を前に出すとなぜか握手された。


「転移!」


 そして目の前の景色が一転した。



「なっ!?」


 一瞬で石壁に囲まれた部屋に移動して驚愕する。

 ベッドやらソファーやら色々置いてあって、普通に生活感のある部屋だ。

 なぜかベッドの周りには木彫りのクマが大量に置いてある。


「今のは魔法!?」

「そうだぞ」


「一瞬にして移動出来るとは、今のが時空魔法ってヤツか!」

「ほう?時空魔法を知ってるとか、魔法に詳しいのか?」

「日本にいた時に俺、小説を書いてたんだよ。異世界モノのヤツ。なのでどんな魔法があるのか調べたりしてたからある程度ならわかる」

「へー、小説かあ。ところで小烏丸って何歳なん?」

「19だ」

「んじゃオレの方が年上だな!今22歳だ。アニキは28歳だっけかな?」


 やはり二人とも年上だったのか。目の前の彼は中二病全開な風体だから、年齢が非常にわかりにくい。

 名前を呼び捨てにしてなくて良かった。そんなに心の狭い人じゃないと思うけど、こっちは助けてもらっている立場だから機嫌を損ねたくはない。


「最初ココに来た時はオレ、まだ小学生だったけどな!」

「え?小学生の頃異世界に来たん?」

「小五だったぞ。しかもいきなりダンジョンだ」


 小五にしてダンジョン?なんつーヤバイ人生歩んでんだよ。


「アニキは18歳だったらしい。ココで魔物と戦ってたらいきなり出会ったんだ。でもホントにたまたまだったらしくて、ココに他の人間は一人もいない」

「ダンジョンで日本人に出会うとか、・・・それって偶然なんだろか?」

「まあその話はいいや。ココで暮らすのに注意事項だけ言っとくよ」

「注意事項?」

「一応ココはオレとアニキの部屋だから、ベッドとソファーには触らないこと。そこにある毛皮はいくらでも使っていいんで、その辺でテキトーに寝てくれ。あと鍛冶の道具も揃ってるから勝手に使っていいぞ」

「鍛冶道具!?それは本当に有難い!あ、でもどうやって火を付ければいいん?」

「あーそっか。えーとな・・・」


 とにかくベッドとソファーには触れちゃダメってことだな。でも毛皮が使えるってのはすごく助かる!それと何と言っても鍛冶道具だ。これで刀を打つことが出来るぞ!


「これが火をつける魔道具だ。このボタンを押せば先っぽから火が出る。んで火がつかなくなったら、後ろのココを開けて魔石を交換すれば復活する」

「魔道具か!素晴らしいな。でも魔石はどうやって集めればいい?」

「ああ、そこからか。魔物には必ずどこかに魔石があるから全部回収するように。ココでは魔石集めが最重要だからな!」

「ほ~」

「ちょっとついて来て」


 虎徹さんが移動したので、その後ろについて行く。


「これは女神の泉なんだが、言わば聖水だ。とにかく聖水を使いこなせ!飲めば傷が回復するし、肉や毛皮をぶち込めば浄化も出来る優れモノだ!」

「聖水だと!?」

「そこの通路の先にスケルトンがいるから、最初はソイツに、この柄杓を使って聖水をぶっかけろ。それだけで倒せる」

「なるほど!アンデッドだから聖水が効くのか」

「そういうことだ。ここで体も洗えるしホント女神の泉は最高だぜ!」

「ハハハッ!」


「でな、この部屋以外にも一か所だけ女神の泉が設置された部屋がある。少し遠いが場所は同じく1階だ。他人の部屋にずっと住むのもぶっちゃけ嫌だろ?そのもう一つの部屋だったら好きに使っていいぞ」

「そりゃあいい!確かに自分の部屋ってのは欲しい」


「んで重要なことなんだが、女神の泉がある部屋以外に物を置いておくと、地面に吸い込まれて消えてしまうから注意しろ」

「あー、ダンジョンのシステムがそうなっているのか」

「スケルトンを倒すと剣が手に入るんだが、そのままだと数分で消えてしまうのですぐに回収するんだ。貴重な鉄だから色々と重宝すること間違いナシだ」

「わかった。剣は全て回収する」


 えーと、まずスケルトンに柄杓で聖水をぶっかけて倒し、剣と魔石の回収か。んで俺の部屋を探し出すと。攻略法があると楽でいいな。


「ゴブリンには注意しろよ?マジでつえーから」

「え?ゴブリンなら普通に倒してたけど・・・」

「ここのゴブリンをそこいらの雑魚と一緒にすんな!ちょっとついて来い」


 ゴブリンが強いとか言われてもなあ・・・。まあついてってみるか。


 虎徹さんの後ろについて行き、横にある通路に入って行く。


「そっと見てみろ」


 言われた通り慎重に進むと、悠に身長2メートルはある怪物が見えた。

 おいマジかよ!アレがゴブリンだと!?


 見てるだけで冷や汗が出て来た・・・。



「へい、ゴブさん!久しぶりだな!」


 え?オイ、ちょ、ちょっと待て!アレはヤバいって!!


「グギャアアアアア!」


 巨大ゴブリンが凄い剣幕でこっちへ走って来た!


「うわあああああ!」


 すると虎徹さんがどこからか槍を取り出し、巨大ゴブリンを一撃で叩き斬った。


 マジか!?この人無茶苦茶つええ!


「とまあこんな感じだ。ここで修行すりゃゴブさんも余裕で倒せるようになるぞ」



 ・・・うん。がんばろう。

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