リザートマンニイル③

一瞬だった


妖怪同士の戦いを初めて見て俺は一回もその間に割って入れなかった


最後に槍を投げたのも後ろでぬらりひょんが手で合図を出したからだ。 そしてあんな狂暴だった山の主の妖怪をおとなしく従えてしまった。 最初は殺す気だった俺もあんなに圧倒して山の主を倒されたらあまりの早い決着に拍子抜けしてしまった


「おい、ニイル」


「なんだ」


「俺達はこの山から出る、近くに村はあるか?」


「この道をまっすぐ抜けた先に標識がある。 それに従えば村にたどり着くはずだ」


それを言うとぬらりひょんと猩々は村へ向かって歩き出した


「なあ! あんた名前は!」


「ぬらりひょんのユラだ」


ぬらりひょんのユラはそう言うと山を下りて行った





日が昇り、森の鳥たちが鳴き始めたころ


「ニイルさん、生きてますか~!?」


サグリの声が聞こえる、どうやら仲間たちが迎えに来たようだ。俺はその後自分達の村があった場所に行って、廃墟化した村を見てた


「サグリ、ここにいるぞ」


俺は目の前を走り抜けようとしたサグリを呼び止めた。どこを見てるんだ


「あ、ニイルさん生きてる! みんなここにニイルさんいるー!」


サグリはそう言うと、散らばって探してたと思われる仲間達が集まってきた


「おー! 無事だった!」


「ほんとだ! 生きてる!」


みんな俺を取り囲んで喜んだ


「ニイル無事だったか」


奥から傷跡だらけのリザードマンが現れた


「村長...」


このおびただしい傷の数は猩々と戦った時につけられた傷だ


「うむ、大怪我もしてなさそうで、良かった」


「申し訳ございません。 猩々を自分の力で倒せませんでした」


本当は猩々を自分の力で倒したかったが、ぬらりひょんが倒してしまい、自分の面目が立たなかった


「いや、いいんだ。 それより森の動物がいつもより活気付いてる妖怪がいなくなったのは確かなようだな」


俺は今まであったことを全部話した。 村長はそれを聞いて全部理解してくれた


「なるほどな。 2年前突然現れた妖怪は猩々ってので、それを倒したのが同じ妖怪のぬらりひょんのユラってやつなんだな」


「はい。 そうです」


「猩々はその後、なぜかぬらりひょんのユラについていったんだな」


「はい」


村長はしばらく黙り込んだ


「サグリ、山の外で隠れている女性や子供達を呼んできてくれ」


「はっ!」


「この山から妖怪はいなくなった! 討伐したいのはわかるが、今はこの廃墟化した村を立て直すのに全力を尽くすぞ!」


「「おー!」」


仲間達は村の立て直しに、倒れた木材を回収したり、家の修理をし始めた。


「ニイルよ」


「はっ」


「私達はこの通り村の再興に手がいっぱいだ。 それでだ、ニイルはその猩々の後をつけてくれないか、隙があったら殺しても構わん」


「りょうかい!」


そして、俺は荷物をまとめると足早に山を降り、ぬらりひょんのユラが向かったと思われる。村へと向かった




「村長~」


子供のリザードマンが村長に話しかけた


「どうした?」


「これからここに住むの?」


この子供のリザードマンはこの村から離れて生まれたリザードマンの子供だ。 以前ここに住んでいたなんて知らないんだろう


「あぁ、ここは以前に自分たちが住んでいた村だ。 ここからまた始まるんだ、わかったな」


「うん!」


サグリが女性と子供達も呼んできたので廃墟となった村の復興もはかどりそうだ


「あれ、ニイルさんは?」


「ニイルにはあの妖怪たちの尾行を任せた」


「なるほど、無茶しないといいですね」


「よし、俺達は村を直すぞー!」


「おー!」




一方ぬらりひょんのユラ達は


「ここをまっすぐに行けば〈桜流さくりゅう村〉か」


村はまだ先だが、さすが桜って名前だけあって桜の数が多くなってきたな


「てか」


俺は自分の肩を見た、自分の首に白い狐が巻き付いている


「猩々お前そんな小さかったか?」


「しゃあないろ、猩々は夜行性だ。 日が出ている間は体内の妖力が少なくなって、動物に変化するんだから、俺にはなんもできない」


だから動物になったのか、夜行性の魔物は大変だな


「てか、毛は白いんだな」


「あぁ、人間はこの白い毛しかない動物や魔物などのことをアルビノっていうみたいだぞ」


「アルビノねぇ」


突然変異みたいな感じだろ。 人間はこうゆうのに名前を付ける好きだな。 ただ見た目が違うだけで中身は一緒じゃないか


「そういえば名前はなんていうんだ」


「ハクビだ」


「じゃあ行くか、白蓮卿のハクビさんよ」


「うるさい、早く酒飲みに行くぞ」


しばらく歩くと、村の中心に巨大な桜の木がある村についた


「ここが桜流村か」


俺は桜の花びらが舞う中、村に足を踏み入れた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る