『この曲すごいよくない??』

歌い終えた君が、

背伸びしながら聞いてくる。

いいね、とても。でも‥

「誰の曲??」

とってもいい歌だし、綺麗な声だけど、誰かわからなかった。

『あぁ、木村結っていう人の曲!マジ上手すぎ!』

ちょっと、それ以上褒めないでよ‥妬いちゃいそう

『声も綺麗だしなぁ‥背も高いらしいよ』

あぁ‥君ね、もうちょっと女心を勉強なさいな。いいや、話題変えちゃえ!

「雨、やだなぁ‥」

そう。私が今なんとなく不機嫌なのは、連日続くこの雨のせい。今年はちょっと異常で、秋になった途端に台風やら前線やらですっごく雨が多くて、なんとなくネガティブになりやすいっていうか‥。

『確かに、ちょっと多いよなぁ‥。今度のデートの日、大丈夫かなぁ?』

なんか、君がそういうとちょっと不安になる。雨だったら、会ってくれないのかなって‥。だから、思い切って聞いてみる。

「雨だったら、会ってくれないの?」

途端にものすごく驚いたような顔でこっちを見る。

『え??いやいや会うよ!雨でも俺は会いたい!カラオケでもなんでも、雨でもできることはあるじゃん??』

なんで君が焦ってるのよ。可愛いなぁもう。

でも、こうやってストレートに言ってくれるから、私はいつも安心できる。

「よかった。そうだよね、雨でも、遊べるよね!」

ちょっと元気でた。ありがと。

『うん!さぎりに会えるなら雪でも迎えに行くよ!ちょっとおおげさか。』

あ、照れてる。言うと怒るから言わないけど、この照れた顔、可愛くて好き。

付き合って、もうすぐ3ヶ月。なんとなく倦怠期っぽい時もたまにあるけど、君が好きな気持ちに全然変わりはない。これからも、ずっと一緒にいたいなぁ。

「あ、ねぇ、例のこと、前田君に聞いてくれた?」

前田君っていうのは、彼と仲良しの男の子。私の友達がどうもその前田君を気にしていて、好きな人とかいないのか調査中なのです。で、この際だから思い切って4人で遊びに行く約束でもして、無理にでも2人で話をさせたらいいんじゃないかっていう超強引な計画を2人で立てていました。

『ん?あぁ、ごめん‥忘れてた』

え?珍しい‥

「そう‥なんだ」

『うん‥ごめん‥』

え?なに?元気なくなった?

「あの」

『あのさ』

同時。

「え?」

『いや、いいんだ、なんでもない』

嘘。どう見たってなにかあるでしょ。でも、私は付き合う前から知ってる。

君は、なんでもないって言った後はどんなに聞いても答えてくれない‥。付き合って、お互いのことが少しずつわかっていって、安心できるようになったら、いつか答えてくれるようになるのかな‥?

大袈裟かもしれないけど、私は、君がなんでもないって言うと、ちょっと拒否された気になっちゃう。君のこと知りたいし、助けたいのに、なにも言ってくれなくなっちゃうから‥。

『もう、5時か』

え?うわっ本当だ。

『帰ろうか。これ以上残ってたら、見回りの先生きちゃうから』

ちなみに今は教室で話してました。

「うん‥。そうだね。」

『気をつけてね!暗くなる前には帰れると思うけど。』

笑顔で言ってくれたから少し安心したけど、やっぱりちょっと元気ない気がする‥。気のせい??

「うん。あ、あのさ!」

『ん?』

「今日、電話していい??」

やっぱり、ちょっと心配だし、さっきのこと気になる‥。

『いいよ!解禁になったら教えて!』


君と付き合う前、君はとっても不思議な人だと思ってた。今は段々君のことがわかってきて、もっともっと好きなった。これからもどんどん好きなると思う。けど‥やっぱり遠くに感じることがたまにある。不思議とはちょっと違うんだけど‥。

どこにもいかないよね?

今、雨が続いて私がちょっと気持ちが落ちてるからこんなこと思うだけだよね?

私達、上手くいってるよね?






ああ言う雰囲気で会話を終えてしまうと、とっても後味悪い‥。

バイバイする前にぎゅーってしてもらえばよかった‥。

私は、時々怖くなる。君のことを好きになればなるほど、君が私を助けてくれればくれるほど、自分が弱くなっていってる気がする‥。そのうち、君がいないと生きていけなくなるんじゃないかって‥。そうやって私が不安定になってしまったら‥君が‥私のこと嫌いになるんじゃないかって‥。それで君がいなくなってしまったら‥私は‥。


「!」

突然携帯が鳴ってびっくりした。

画面見てさらにびっくり。

『もしもし』

「‥もしもし」

君の声、やっぱり暗い‥?

『あ、さっき、電話しようって言ってたから、かけてみた。今、大丈夫?』

うん。大丈夫。っていうか、むしろベストタイミングというか‥。

「うん。大丈夫だよ。」

『なんか、話あった?』

うん、なんだっけ?

あぁ‥

「いや、前田君達との話。進んでないみたいだけど、なんかあったの?」

直球すぎかなぁ‥でも直球でいかないと話してくれない気がしたから。

『あぁ、あの話さ、やっぱりやめない??』

え?

「どうして?」

『いや、やっぱり、俺らは付き合ってるからいいけど、前田と、厨二さんは、ほぼ初対面なわけでしょ?それで、話なんてできるのかなって‥』

それは前にも話したはず。

「だから、そこは厨二がうまく自分からいくって言うことで‥」

『それは厨二さんが勝手に言ってるだけでしょ?』

ちょっと強目に、しかも私の言葉さえぎっていう。こんなの初めて‥どうして?

『前田はさ、ちょっと‥シャイなとこあるからさ‥。』

嘘。初耳だし、私が見ている限りそんなことはなさそうだけど‥。ひょっとして‥。

「あの‥違ってたらごめんなんだけど、君は、厨二があんまり好きじゃないの‥?」

『え?なんで?』

なんでって‥

「いや、私が見ている限り、前田君ってそんなにシャイでもなさそうだしっていうかむしろ、修学旅行の時に厨二と話してるとこ見たけど、結構いい感じだったから、そんなに初対面っていう感じでもなさそうだなって‥思うんだけど‥」

なんか日本語変になっちゃった‥。ちなみに厨二っていうのは私の友達のあだ名です。本名じゃないです。

『‥』

あれ?

「ねぇ」

『え?』

ちょっと

「聞いてる?」

『聞いてるよ。木村結の曲』

はい‥?

「どういうこと?」

『それはこっちのセリフだけど‥』

怖い‥なんか君の声が怖いでも聞かなきゃ

「‥なにが?」

『前田君はって随分詳しいんだなぁと思って』

え?なに?どういうこと?

「どういうこと?」

『そのままの意味。もう話すことないなら俺は木村さんの歌聞きたいんだけど。』

あのねぇ。

「ちょっとなんなの?元々2人で始めた話だったのに全然進んでないし、口を開けば木村結ってそればっかりだし‥。ちゃんと話す気ないならなんで電話してきたの?」

違う‥そこまで言うつもりはなかった。けど私の勢いは止まらない‥。止められない。

「厨二は私の大事な友達で、それは君もわかってくれたじゃない?だから前田君とのことにも協力したいって、私の友達のことなら協力したいって言ってくれたのに‥どうして?最初から嫌だったの‥?本当は最初から嫌だったの?」

あぁ、私自分のこういうところ‥嫌い‥。自分の中にある疑問が解決できなくなると、とにかく人にぶつけちゃうんだ‥。ごめんなさい‥。

『‥ない』

え?

「ごめん、聞こえなかった。なぁに?」

『そうじゃないけど‥今はあんまり乗り気じゃない。』

「どうして?」

『それは言いたくない。言ったら‥よくないと思う。』

どうしたんだろ‥このまま殻にこもっちゃいそう‥。嫌だ、私はそんなの嫌。そろそろ私も入れてよ。

「言ってよ。ちゃんと聞くから。」

『今日はやめよう。言うなら会って言いたい。』

そうか‥言う気がないわけじゃないんだ。

「わかった。ごめん、私のわがままで‥。

『いや、いいんだ、俺が悪い。』

そうじゃないけど‥

「ごめん、わがままついでだけど、私このまま電話切りたくない‥もう少し話さない?」

断るかな‥

『うん、いいよ。なに話そっか?』

断られなかったのはよかったけど、話題には困っちゃうな‥そうだ!

「聞きたかったんだけど、君が告白してくれた日、あるじゃない?あれ、どうしてあの日だったの?」

『どうしてって‥』

「だって、あの日誘ったのは私じゃない?だから、あの日私が誘わなかったら、どうなってたのかなって」いう素朴な疑問なんだけどなんだこの異様に冷たい空気‥。

『どういう意味?』

いやだからそのままの

『俺はあの時期、いつさぎりに言おうかずっと考えていたよ。さぎりが誘ってくれたけど、話を強引に進めたのは俺でしょ?俺こそ聞きたいよ。俺が告白しなかったら俺達は付き合うことはなかったのか?って』

あぁ、だめだ‥。今日はもうなにも話さない方がいいんだ‥。ごめんなさい。

「ごめん、そんなに深い意味はなかったんだけど‥今日はもう、話すのやめよっか‥」

話したいって言ってほしいけど、なに話していいかわからない‥。

『ごめん。俺も言いすぎた。ちょっと冷静になれなくて‥。今度ちゃんと話そう。』

今度?今度っていつ?待って‥っていいたいけど、言えない‥。

「うん。おやすみなさい。」

『おやすみ』

その日‥付き合ってから初めて、私は泣いた。




あれから丸2日間、彼からの連絡はない。

私は私なりに考えたけど、どうしてあんな風になってしまったのかは全然わからなくて‥。


結局、君が話してくれるのを待つしかないんだけど、待ってるだけじゃだめだと思った。

君は、俺が告白しなかったら俺達は付き合うことはなかったの?って言ってた。

だから、今回は私から連絡して、ちゃんと話そうって言うのを待ってるんじゃないかって。

考え過ぎかもしれないけど‥。

だからメールしてみた。

内容は至って簡単。「今日の放課後会えないかな?」って朝に送ったから、もし私からのメールを待ってるなら、きっと昼休みに携帯見てくれるはず。

もうね、午前中の授業なんて全然聞いてなかった。君のことばっかり。連絡取らなくなってたったの2日だけど、私はやっぱり君が好きなんだってよくわかった。君のこと‥思い出す時なんてなかったもん。だって、一度も忘れてないから。


きた。メール。


『大丈夫だよ。雨降りそうだから、この間みたいに教室にする?』

よかった‥。本当。返事くれただけでも嬉しいのに、ちゃんと会うこと考えてくれてる‥。

「公園にしよ?私、学校終わったらすぐいくね」

学校では、ちゃんと話せない気がしたから。

『わかった。俺もすぐいくね。』


いつもの公園のベンチ。君は先にきてくれてた。

「この間はごめんね」

第一声がそれ?って思うかもだけど、謝らずにいられなかった。

『いや、俺こそ‥。』

「ねぇ、やっぱりちゃんと話してほしい。厨二達のこと、どうして急にやめたくなったの?」

君には絶対ストレートがいいと思うから思いっきりいった。

『うん‥それは‥。』

うん。聞いてるよ。

『前田が、俺よりかっこいいからだよ。』

‥え?

「それってどういう‥」

『4人で出掛けるってことは、さぎりと前田の距離も近くなるってことだ。あいつは、俺よりずっといいやつなんだ。だから‥』

私が取られるって?そんなこと

「私は、君のことだけ好きなんだよ?」

『わかってるけど‥』

けど?不安‥なの?私、安心させてあげられてないの‥?

「私、君のこと、ちゃんと支えられてないのかな?‥」

『そんなこと』

「だってそうでしょ!?こんなに大好きなのに、君は不安なんでしょ?支えてあげるどころか、それじゃかえってお荷物じゃない‥」

逃げたい‥私‥自分のこういうところ本当に大嫌い‥

『そうじゃないんだって‥』

逃げたい‥そう思ったら、自然と歩き出していた。

『ちょっと‥どこいくの?』

あ、雨降ってきた。でもいいの。濡れてもいい。私、頭冷やさなきゃだからちょうどいい。








『ねぇ、風邪ひくよ?』

しばらく黙っていた君がそう声をかけてくれた。

「私、君の彼女に相応しくない‥」

『そんなことないよ。俺がこんなにさぎりを好きなのに、なんで相応しくないんだよ』

「だって‥すごく不安そうだったから‥」

『さぎり。それはね、さぎりのことが本当に好きだからだよ。逆に言うと、この不安は、さぎりにしか消せないんだ。自分でなんとかしたいけど、できないんだ。』

そう‥なの?

「私も、本当に君が好きだよ。それじゃ足りないの‥?」

『足りないよ。』

え‥?てっきり、十分て言われると思ってたのに‥。

「なにが‥足りないの?」

『さぎりと俺の違い、なにかわかる?』

どういうこと?

君が、私を傘に入れてくれた。それだけでなんとなくあったかい感じがする。

「違い‥なんだろ‥?」

『具体的に言えば、俺はしているけど、さぎりはしていないこと。』

それって‥

「告白のこと?」

『それもそうだけど、今日誘ってくれたのは、告白の変わりだろ?だとしたら別のことじゃないか』

気付いてたの‥。やっぱり君って不思議。

違い‥君と私の違い‥さぎりと俺の違い‥



「あ!」




「あ!」






もしかして

『気付いた?』

私‥私は‥

「君を‥名前で呼んでない‥」

違うかな‥?

『よくわかったね。さすが!』

君が‥いつのまにか笑顔になってる。

「ごめん‥全然気づかなかった‥。君って呼びなれてしまったから‥。」

『いや、いいんだけど、やっぱり名前って特別じゃない?俺だけの物だし。だから、例え苗字でも、ちゃんと呼んでもらってる前田に、ちょっと妬いてた‥。ごめん。』

そっか‥それで‥

「い、いや、私こそごめん‥ちゃんと名前で呼んでなくて‥しかも、気づけなくて‥」

でも名前で呼ぶなんて‥恥ずかしくて‥考えただけで顔が赤くなっちゃう‥。

『大丈夫?顔赤いけど‥熱っぽい?』

いや、これは‥

「だ、大丈夫!全然大丈夫!!」

『そ、そう?‥えっと、ごめん。なんか言ったらちょっとすっきりしてしまった‥えっと、でも、時々は名前で呼ばれたいなぁなんて‥』

「〇〇‥」

はっずかしい!!死ぬ程恥ずかしい!!

『え?』

え?じゃないよ!私がどれだけ恥ずかしいの我慢して呼んだと思ってんのよ!

「〇〇!」

『お!?』

「恥ずかしい!本当に恥ずかしいけど、なんとか呼べるようにする!だから不安にならないで、私が好きなのは、〇〇だけ!!」

もうね、顔文字にするとこんな感じでした(>_<)

私、必死。

『あ、ありがとう‥ごめんね、こんな小さなことで妬いて‥』

君がそっと抱きしめてくれた。あったかい。傘があるだけで、なんか2人っきりって感じが強くて‥安心する。

「私こそごめんね‥君のこと、ちゃんと考えられてなくて‥」

やっぱりずっと名前では恥ずかしい‥。でも、これも言っておきたい。

「私も一つお願いしていい?」

『え?うん。いいけど‥』

「木村結さんの話ばっかりしないでほしい‥綺麗な声だし、歌上手だから私も好きだけど、君が夢中になりすぎたら私は嫌いになっちゃいそうだから‥」

『わかってるよ。』

え?わかってたの?

『前田の件の、仕返し。』

もう!

「〇〇って、ちょっと意地悪だよね‥」

『そうだな。でも、こうしてる時なら、冗談で済むだろ?』

確かに‥ぎゅーってされてると、なにも怖くないし。

「雨もいいかも‥。」

『ん?あれだけ嫌いだったのに?』

うん。だって。

「傘の中で、〇〇がぎゅーってしてくれるから」





なんていうか、とんでもなく恥ずかしい時期の話でした(>_<)

前回の私とはちょっとは変わっていましたかね?

私的には、〇〇と付き合ってから自分がよりオープンになったなって思ってました。

冒頭では、自分がどんどん弱くなっていく気がするって書きましたけど、今はそうは思いません。

だって、人は皆弱いですよね?だけど、それを隠してるんですよ。

私が弱くなっていってる気がしたのは、初めて弱さを見せられる相手を見つけたからです。そういう相手がいて初めて、人って自分の弱さを認められるんだと思います。

それに、弱さを知ってるから強くなれるんですよね!

〇〇と付き合って、それを知りました!




え?〇〇がなんて名前かって??

書いてあるじゃないですか!

ちゃんと。


え?どこに?って?

第1話の書き出しですよ。

最初の4行の最初の文字を立てに読むと‥??














(>_<)

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