第10章 さくらとの出会い 【3】

 その後、何だか落ち着かないそわそわとした時間を過ごし、店の閉店時刻である夜9時を迎えた。

帰り支度のついでに通り魔事件の続報をググったが、『犯人は依然として逃走中』のままだった。

……マジか……。素直に捕まれ、バカ野郎……

白石先輩の警護決定じゃないか、と俺ががっくりしているところに、当の先輩がやってきた。

西浦にしうらくん、もう帰れる?」

「あっ、はい。俺は大丈夫です」

「何見てたの?」

「あぁ、例の通り魔について……。あれからどうなったかと。でも、まだ逃げてるみたいですね……」

「明日の朝までには捕まえてほしいよね〜、警察も。じゃないと明日、どこも大学生がサボりまくるんじゃない?」

「ありそうですね、『通り魔の犯人が捕まってないので、大学に行けません』とか言っておいて、繁華街で遊び歩いている……」

「ふふふ」

「俺はそんなことしませんよ! 明日は1限から必須単位の科目が詰まってるんで‼︎」

「私もよ。3年生になっても、学部の必須単位からは逃げられないから。般教の必須単位は、2年生までの間に大方片付けたんだけど」

「先輩、優秀ですね」

「そういう、西浦くんだって、真面目じゃない。」

「いや、俺の場合は、サボると期末考査の受験資格がなくなるパターンなんで。とりあえず、3回まではサボっても問題ないらしいですけど。でも、余裕があることとサボって良いことは違いますからね。」

「じゃあ、お互い、明日も早いってことだ。なら、そろそろ帰ろっか。」

「そうですね。先輩、帰りましょう。」

 俺たちは、バイト先を後にして、駅へと向かった。

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