第3話


 レクシアの処刑から8年が経ち、セルヴィスの真の番だという女性アメリアが見つかった。


 宰相主導のもとに行われた厳しいチェックでも、不備は見つからなかったというお墨付きの「番」だ。


 番を示す赤い痣は成長とともに鮮明になる。

 一般的には、それを神殿に行って登録することで、神官が痣の照合を行い番が判明するという仕組みとなっている。


 アメリアが番だと分かったのも、事前に登録されていたセルヴィスの痣と合致したからであった。


 今年で17歳になったアメリアはエルランド王国の侯爵令嬢だったが、例の騒動があった時分はまだ幼く番の反応も殆どなかった為、神殿へ登録に行くことも無かった。


 皮肉にも、セルヴィスとアメリアが一回り以上も年が離れていた為にあのような事件が起こったともいえた。


 二人がもっと近しい年齢で生まれていれば、不要な悲劇は訪れないはずだった。


 ◇


 件の騒動の為に、婚期が遅れていたセルヴィスに配慮して婚約期間は短縮され、すぐに婚姻が進められることとなった。


 結婚式当日、セルヴィスの髪と瞳の色を思わせる金と翡翠色を基調としたドレスを纏ったアメリアは光り輝くようだった。


 対となるようにアメリアの色である黒と銀を纏ったセルヴィス、二人の姿はまるで一対の美しい人形のようで招待客たちは思わずため息をついた。



 アメリアがセルヴィスを見つめる目はとても優し気で慈愛に満ちていた。


 そこに、恋焦がれるような熱も加わって、端から彼女を見ている者の方が赤面してしまいそうな程に美しく神々しかった。


「辛いこともありましたけれど、兄上がやっと幸せになれると思うと私も嬉しいです。あんなに素敵な方を妃に迎えられるなんて・・・少し妬けますよ」


 王弟で今は公爵の立場をとるナーヴェが、そっとセルヴィスの耳元で囁く。


「私のことばかり気にせず、早くお前も相手を見つければ良いだろう」


 そう返すセルヴィスに、ナーヴェは曖昧に微笑んだ。



 式はつつがなく進み、壇上から距離のある招待客側の席からは二人の表情を確認することはできなかったが、終始熱い視線でセルヴィスを見つめるアメリアとは対照的に、彼は一度も彼女と目を合わせる事はなかった。



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