〜真莉さんと一緒〜

「はぁ、、はぁ、、はぁ、どこまで行くんですか!真莉さん。」


「いいから、いいから、着いてきてー!」


僕は真莉さんに連れられ、電車から降りたのだが、駅名を確認したところ僕の家からの最寄駅の隣の駅だった。まぁ、ここからなら歩いても帰れないことはないな。


「それにしても驚いたな。あのクールビューティーの真莉さんにこんなに無邪気な一面があったなんて。、、、あ、はい!今行きますから!」


その後も、しばらく連れられていると浜辺に着いた。そう、ここは神奈川県であり江ノ島なんかも近くにある。今は時間で言うとまだ15時くらいであるため、浜辺の先にある海はギラギラと輝いていた。


「アハハッ、どうよ優馬君。浜辺は、海は!心が落ち着くでしょ。」


浜辺についてから真莉さんは裸足になり、海の水を手ですくって遊んでいた。


「そうですね。こんな広い海を見ると、僕のことなんて、本当にちっぽけでなんでもないものなんだなって思います。」


もしかしたら学校からも海見えてんのかな。基本的に僕は下を向いて歩いてるから分からなかったけど、いつか自信を持てたら前を見て海を見たいな。

そんなことを考えていたら真莉さんから声が掛かった。


「ねぇ、優馬君。」


真莉さんは僕にそう声をかけると、海の水で遊ぶのを止め、浜辺で待っている僕の方へと歩いてきた。


「なんですか?真莉さん。」


「ねぇ優馬君、優馬君が好きだった子ってどんな子なの?その、振られちゃったこととかは聞いたけどさ、、、」


「、、、、えーっと、な、なんでですか?」


何で真莉さんはそんなことを聞いてきたんだろうか?


「教えてくれないの?」


今度はそう返された。

何でそんなことを聞きたいんだ?何でなんだ?

でも何故だろうか、今ここでちゃんと言った方がいい気がするのは何でなのだろうか?


そう不思議には思ったが僕は、もう終わったことだし、もともと望みも薄かったと分かっていたことじゃないかと内心で自身に告げ、真莉さんに話すことにした。


「えっと、、その子は明るくて優しい子なんです。僕は学校では、からかいをいつも受けているような所謂陰キャなんですけど、その子、彼女はそんな自分と対極にいるかのような僕にも分け隔てなく話してくれたりしたんです。」


僕がそういうと真莉さんは、また悲しそうな顔をした。


「そこで僕は、どうせ振られるとは心の中で思いつつも、もし彼女が僕の活動を知ったうえで支えてくれたらな、そう思って告白をしたんです。、、、まぁ、ダメでしたけどね、、、」


と、僕が言い終えると隣で何か真莉さんが下を見てブツブツと呟いている。

そこで僕は真莉さんに「真莉さん?」と声をかける。だが反応はない。そしてそれから、ほんの少しだけ経ってから真莉さんから反応が返ってきた。


「私じゃダメなの?」


ん?今、真莉さん、なんて言った?


「えーっと、真莉さん?今、なんて?」


そういうと真莉さんは顔を上げ、僕の目をしっかりと見て


「それ、私じゃダメなの?」


と言った。

えーー!?それってつまり、、えっ?いや、んな訳あるはずがない。


「ふーっ、」


僕は一度落ち着いて、そうしてから真莉さんにこう質問した。


「いや、あのー、真莉さんが支てくれるマネージャーとして不満があるとかいうことはないですよ。ただ、、」


「だから、優馬君違うって、はぁここまで言ったら分かるでしょ。君の彼女になって、私がもっと側で君を支えるんじゃダメなの?ってことよ。それとも、、、こんなオバさんじゃ嫌、、かな?」


やっぱり、そういうことだったのか。でもいいのか?本当に僕なんかで、、、僕としても綺麗なだけでなく、よく接してくれる真莉さんは本当に好きだ。それは単にマネージャーという職についているというだけではなく、だ。

それに真莉さんがオバさんなんて思ったこともないんだが、、だって彼女はまだ今年22になるだけで、高校生で17歳の僕とも全然離れていないし。それに、年齢何かをおいておいても彼女はとても美人で綺麗だし、なんなら異性として意識した時だってあった。


「いえ、そんなことではなくて、、、その、僕なんかでいいんですか?僕は自分に魅力を感じないんですが、、、イタッ!」


僕はそう言った途端、真莉さんにデコピンされた。


「優馬君、君は十分魅力的だよ。それに、君の魅力は君を好きになった人が気づくべきものなんだよ。それに君にはカシユウという立場もある。、、、」


その後も真莉さんはゆっくり僕の心を癒すように優しく話してくれた。


カシユウは明確に君自身なんだから、誇りに思っていいということ。

君は優しい、じゃないとあんな物語は書けない。だから君のことを人格的にも技術的なんかでも、すごく尊敬しているということ。

君は虐められたりなんかしていても、それを耐えて自分の活動をちゃんと責任持ってやってきた。それは本当に凄いことで、自信を持っていいということ。

そして何より、君を愛してる人もたくさんいるということ。


「、、、真莉さん、、ありがとうございます。」


真莉さんが話し終えるころには、もう僕は涙を抑えていられずにいた。それはまるで心の中での大きな氷塊が溶かされたような気がしていたのだ。

そして、僕は泣いてしまったのだが、真莉さんはそんな僕に


「大丈夫、本当によく頑張っているよ優馬君は。よく耐えてきたね、本当に偉いと思う。でもこれからはもっと私とか家族を頼っていいんだよ。君の居場所は思っているよりも近くでいつも君を待っているんだからね。そのことを分かっていてほしいな。」


と言ってくれた。


「はい、ありがとうございます。お陰でもう少し頑張れそうです。改めて、これからもお願いします、真莉さん。」


「それは、どういう返事なのかな?まぁいいやまた今度で、これからもよろしくね優馬君。それじゃあ行こうか。」


真莉さんはそういうと、浜辺を歩いて行った。僕と手を繋いで、、、



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