ポップコーン・ストーリー

桜雪

第1話 次の階まで

 歳の差があるから…だからなに?

「もう、おばあちゃんなんだよ…だから、そんな目で見ないで…」

 定年を迎えてアルバイト先の20歳も年下の彼に、少しだけ気持ちが揺れている。

 いい男でもない、ただ真面目に働いてくれるだけ、話をしていると楽しい…だけだったのに…。

(気になる…週末しか会えないから)

 週末になると気持ちがウキウキするのはなぜ?

 時々…感じる。

 アナタの視線が…

 だから

「もう、おばあちゃんなんだよ…だから、そんな目で見ないで…」


………

「心配したんですよ…誰よりも僕が一番…」

 体調不良で2週間も休んでるって聞いたから。

 連絡しようかな?

 でも…僕がそんなことするのは変かな。

 いつからだろう…女性として見ているのかもしれない。

 付き合いたいとか、そんな気持ちじゃないんだけど、だけど僕はアナタが気になるんです。

「忙しい時に休んですいませんでした」

 そういうアナタに伝えたかった。

「心配したんですよ…誰よりも僕が一番…」


 今日はアナタと組んでの仕事でした。

 狭いエレベーターで、少し手が触れた…。

(今…手が触れた)

 指先を少しだけアナタの指に…そっと…そっと。

 ほんの数秒だけ、それだけの恋心。

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