世界そのものを想像することの愉しみをくれる物語

 魔女と不死の兵の長い旅路と、その後の小さな「おまけの一生」の物語。
 ファンタジーです。異世界から、現代の日本に転生してきた人のお話。
 転生前の長い冒険と、転生後の平穏な人生がほぼ交互に描かれており、一見挑戦的なスタイルにも見えるものの、しかしどこまでも実直で真っ直ぐな物語でした。
 いやもう、本当に面白かった……メッセージ性というか、主題の分厚さとそれを描ききる筆力。いろいろ語りたくなっちゃうのに、圧倒されて言葉が出てこないこの感じ。
 転生前の異世界、ファンタジー要素の独創性が最高です。ありきたりな感じが一切なく、といってイメージしづらいわけでもない。わかりやすさや想像のしやすさではなくて、こちらに「想像させる愉しみ」を与えてくれるファンタジー性。壮大で、かつ退廃的でうらぶれていて、気づけばすっかり浸っていました。読み終えたいまもなかなか余韻が抜けない……。
 スケールの表現もすごい。独特の構成、物語の場面場面を個別に抜き出したかのような描き方で、要は全体から見たらごく一部のダイジェストでしかないはずが、でもしっかり壮大な物語の全体像を描き出している。正直、ちょっと何されたのかわかんない感じです。手品かな?
 いやもう、ほんと好きなところがいっぱいあって困るんですけど、でも一番好きなのはやっぱりテーマ性というか、この物語を通じて語られていることそのもの。特に最後の二話のあの感じ。最高でした。とっても面白かったです!