イマドキJK娘と先生の交換日記を読んで親父呟く100日間

@michiseason

第1日目 プロローグ 担任との交換日記4月

 「今日はやっと校章を買えました。 昨日はお母さんのお迎えを侍っていて買えませんでした。やっと校章を買えてよかったです!

 今日は医院を決めることになりました。私は配り係がいいです。なぜなら配り係 は、10人だからです。いっぱい友達ができて良いと思いました。私は、院長だけにはなりたくないです。なぜなら私はすごく恥ずかしやだからです。

今日は、初めて電車で帰りました。

2時間30分かかりました。」


「なんだこれ ? 日記?」

 

 会社から疲れて帰ってきた親父は、ダイニングテーブルの上に置いてある ノートをおもむろに取り上げた。 ページが開いたままで置かれてある。

  内容からすると、娘が学校でのことを日記のように書き記しているようである。


「あいつ、こんな趣味あったのか? いや、違うな」

 

 すぐに、娘が自主的に書いた日記ではないことが分かった。なぜならその娘の文章の下には、赤い文字で返事が書いてあったからだ。


『 配布委員にはなれましたか?たくさん仕事を頼みますが、よろしくお願いします。

電車で帰ると遠いのですね 。

学校に残って 、お迎えを待っている間は勉強しましょう!』


「なるほどなぁ。先生との交換日記ってとこか」

 

 過保護と思いつつも、毎日娘の送り迎えをするため、妻の職場近くの学校に入学したばかりなのだ。その学校の方針でイジメ防止のために、先生と毎日交換日記をすることになっていると妻から聞いたような気がする。


「それにしても、 誤字脱字が多すぎるんじゃないか?待つが、侍(さむらい)じゃなぁ。一本足りねぇ」


 誤字脱字が多い文章であったが、先生も時間がないせいか、それともまだ入学したばかりで慣れていない生徒に気を使ってくれたのか、 その間違った文字を正してはいなかった。


「よく、こんな間違いだらけで合格したもんだ。院長にはなりたくないって、あいつの将来の夢は医者だったろ? 今ぐらいクラスの委員長にでもなっとけよ!

ははっ!」

 

 娘も妻もいないリビングではあるが、酔ってもいないのに饒舌になっている親父だった。


「昨日入学式だったのに、もう校章失くしてんの? 失くすの、早っ!」


 ふぅっとため息をつきながら、次から次へとツッコミが口から飛び出してくる。


「それにしても、電車で帰ったところで1時間かかんねぇだろ? なんで、2時間30分も?」


 親父が、不思議に思うのも無理はない。学校から家まで、電車とバスを乗り継いでも1時間はかからない距離だ。実はこの娘、多数の生徒の流れに乗って全く違う路線である真逆の駅から帰ったので、県内をぐるっと一周したことになる。一旦中心部まで行ってから田舎の家まで帰ったので、次の日娘から高額の交通費を請求された妻はさぞかし激怒したことか。


「面白いなぁ。イマドキのJKってやつか?」


 開いたままの交換日記を、そっと元の場所に戻した。

 

親父は、機嫌の良い足取りでそのまま風呂場へ向かった。


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