第29話 ぶつかる影

ミストレア―薪を拾った林


アッシュ:「…………」


ミゼル:「やっぱり落ち着く」


アッシュ:「ミゼルさん……」


ミゼル:「ごめん。ご飯の後こっそり抜け出すアッシュ君を見つけちゃって」


アッシュ:「そうだったんですか」


ミゼル:「似てるもんね。ここ。生えてるのは普通の木だけど」


アッシュ:「そう、ですね」


ミゼル、アッシュ:「「…………」」


アッシュ:「カルトが、教えてくれたんです。この村を出たい理由」


ミゼル:「……」


アッシュ:「村のみんなに認めてほしいから、すごいって思われたいから村の外に出たいそうなんです。本当は寂しいくせに」


ミゼル:「そう……」


アッシュ:「それを聞いた時、僕思ったんです。僕とカルトは、全然違う生き物なんだなって」


ミゼル:「そんなの当り前じゃない。この世界にアッシュ君が二人いたら怖いわよ」


アッシュ:「そう、ですよね……この世界に同じ生き物なんていない。同じヒューマニアでも全然、個体としては別者なんです……」


ミゼル:「アッシュ、君」


アッシュ:「ミゼルさん、僕たちはいったいどうすれば分かり合えるんでしょうね。どうすればこの寂しさを、孤独を埋めることができるんですかね」


ミゼル:「…………」


(口が動かない。何も答えが浮かばない。アッシュ君になんて言葉をかけてあげたらいいのか……アッシュ君が遠い)


アッシュ:「なーんてね、冗談ですよ、冗談。ちょっとノスタルジーな雰囲気にのまれて言ってみただけです」


ミゼル:「……ノスタルジーに浸れるほど長く生きてないでしょ」


アッシュ:「えへへ、それじゃ戻りましょうかキュリスさんたちが心配してるかもしれませんから」


ミゼル:「ええ、そうね」





ミストレア近く―深い霧の中


???:「ここは」


マーキュリー・シーン:「待っていたよ、ガラトルト」


ガラトルト:「ようやく帰ってきたぞ、キュルート・キュスコポンポス」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る