山を切り開こう1

展望台からの夕焼けを堪能した2人はマンションに戻り、そのまま山に戻った。


翌日、戸籍の問題が解決して心配事が無くなったヒロシはこれからのことを考えていた。


「さあ、何から手を付けて行こうかな?とりあえずは飲み水の確保か。」


川から水は引いてきたがあくまで発電用と農業用としての役割しかない。


飲み水とするには濾過して浄水してやる必要があった。


ヒロシはスマホを取り出してネット通販で浄水器を探す。


20数年前に発生した世界規模の疫病パンテミックでキャンプ需要や田舎への移住ニーズが急速に高まり、それにより高度で手軽な浄水器が安価で入手できるようになっていた。


数あるネット通販の中から実績のある大きめの物を選ぶ。


「送り先はマンションにしてっと。在庫があるからすぐに届きそうだな。

1時間後には到着か。ほんと便利な時代になったものだ。

ミーア昼飯を喰ったら浄水器を取りに行こう。」


「わかったー。」


最近のネット通販は大手であれば自社でドローンによる即時配送設備を持っているところも珍しくない。


近くの倉庫に在庫があればすぐに梱包して出荷・ドローン配送してくれる。


まだ各家庭とまでは難しいが、マンションの屋上や敷地内にドローンの駐機場が設置されているところも多い。


ヒロシのマンションの屋上にも駐機場が存在する。



「さあミーアそろそろ浄水器が届いているはずだから取りに行こう。」


有り合わせの食材で作った昼食を2人で食べていると1時間なんてあっという間だ。


2人で転移用の魔方陣に向かう途中、スマホに荷物が到着したと連絡が入る。


「ちょうど着いたみたいだね。ミーア魔方陣に乗ったかい?いくよ。」


薄い光と共にマンションの一室に出る。


屋上に上がるとドローンと大きな箱が駐機場に置いてあった。


無機質な箱に通販の派手なロゴと榎木広志宛の表示がある。


通販から送られてきたスマホの画面を箱の側面についているカメラにかざすと受取確認したことになり、箱の全面が開く。


中には頼んでいた浄水器が入っていた。


浄水器を取り出し、再度スマホの確認ボタンを押すと箱のふたが閉まり、ドローンが回収し戻っていく。


ちなみにドローンは30分くらいその場所で待っているが、その時間に行かないと持って帰ってしまう仕様になっているのだ。


「結構な大きさがあるのに軽いなあ。」


浄水器の大きさは20kgのミカン箱よりも一回り大きいくらいだが、金属に変わる炭素繊維の普及により見た目よりかなり軽い。


一緒に頼んでおいた取付金具等も一緒にヒロシは自室に運んで行く。


室内に入ると包装を解いて魔方陣に載せ、自分とミーアと共に山に帰っていった。


今回購入した浄水器は川の側に設置するタイプ。


浄水能力も高く、毎分100ℓは浄化できる優れもの。


5つぐらいの蛇口を全開にしてもこなせる位の処理能力がある。


別にこんなに大きいのはいらないのだけど、能力が高い方が故障も少ないだろうということで選定。


まあ金はあるからね。


川の側に設置する形だから、水道管を延長することで家以外でも飲料水用の蛇口を設置できるし。


「さて次は土管の作成と埋設、それから蛇口工事か。」


土魔法で土管を大量生産していく。近くにある土を直径20cmくらいの土管の形に生成、1500度を超える火魔法で加熱。

すぐに結界を巻いたらそのまま保温でしばらく置いておくと出来上がり。


300個ほど作って今日の作業は終了。


2日後取りに行くと程よくできていた。


「ゴーレム生成。土管を並べて!」


ゴーレムを数体生成し浄水器から家まで土管を埋設させる。


土管の端は特別に成型した取付器具で浄水器と家の蛇口に接続して完成。


「さてと、浄水器の電源を入れてスタート。おっ、思ったよりの静かだな。」


ちなみに浄水器には標準で太陽光パネルが付与されており付属バッテリーと共に常時稼働がOK。


一応土管埋設の時に電線も一緒に敷いといたから、水力発電も利用できる。


梅雨時期に飲料水が出ないなんて最低だからね。


ともかく飲料水の確保が出来たから、これでペットボトルの水を使う必要はなさそうだ。


「ヒロシー、エレクトスの時より楽ちんだねー。」


「そりゃそうさ。電気もあるから電子レンジやオーブンなんかも使える。水も蛇口をひねればすぐに使えるから水汲みも不要になったし。


いちいち魔法なんか使わなくてもネット通販に大抵のものは売っているしね。


食材も全て買っちゃってもいいけど、まあ時間はあるから狩りや農作業くらいはしてもいいかも。」


「ヒロシはそれもゴーレムと魔法でやっちゃうんじゃない?」


「いやーあくまで暇つぶしだからね。それは趣味の範囲で自分でやるよ。...きっと?」


魔法とゴーレムの便利さに慣れたヒロシに実現できるのであろうか。

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