大空より舞い降りる空の剣

 今日は晴れ。雲が千切れて空を彩る。今日は風が強いので、いつもより低空で鳥たちと並んで飛んでいた。人懐っこく、私の黒い三角帽に止まったり、手を差し伸べたら休憩するように羽を休めたりしていた。


(今日はなんか平和な感じがするけど、物足りないな。適当に魔物探して狩っても良いかも。どうせ予定なんてないんだし)


 連日の依頼なしの日が続き、平和なことの喜びと同時に、魔法を思い切り使えない消化不良感がぬぐえない。まあ、探そうと思えば旅人組合の色んな所にある支部から依頼を探すことも出来るのだが、今は自分から探す気にはなれないのだ。なので、最近は組合もとい、ギルドから依頼が入るのを待っているスタンスに変えている。


「だ、誰か助けてくれー!」


 そんな呑気に考えごとをしている時、下方から男性の叫び声が聞こえた。見ると、魔物の小規模の群れが、ある男性を追っていた。男性は手に剣は持っているが、明らかに戦闘に慣れておらず、今も逃げ続けている。しかも、完全に魔物たちに誘導されており、挙句は崖に追い込まれていた。


(ちょうど良いな。思いっきりぶっぱなしてやろう」


 私はそう意気込み、急降下を始め、同時に魔法も発動させる。

2重に重なった中魔法の魔方陣から、黄色に閃光が迸り、目で追うのがやっとのほどの速さで雷が、男性にとびかかろうとしていた魔物3匹を貫いた。直撃した魔物たちは真っ二つに引き裂かれ、大地をえぐった。耳を解きさすほどの轟音がとどろき、逃げていた男性が私の方を見やる。私は浮遊の魔法を解除し、箒を片手に着地した。着地の衝撃で薄手のベージュロングコートがふわりとなびく。


「あ、あなたは」

「通りがかりの旅人だよ。安心して、すぐに終わらせるから」


 私はそう答えると、箒を構えて魔物たちを見る。すでに魔物たちは私を襲おうと走り始めていた。全部で7匹。うん、余裕だと、心の中でにやける。

 私はある中魔法陣を展開した。すると、周囲から風が空へと急速に舞い上がり、そのすぐ後に、地面に叩きつけるほどの強風がやってくる。そしてそれは魔物たちに向けて襲い掛かり、魔物たちはすべて吹き飛んだ。


「空の雷槍、這い寄る闇を貫く光となり、その威光を指し示せ。『ランページピアース・ゼウス』」


 私の最後に大魔法を発動させた。激しい上昇気流を伴い、空にはどす黒い積乱雲が発生する。そして、黄色い閃光と共に、槍の形を成した雷が7本、目に留まらぬ速さで魔物たちに目掛けて落ちた。魔物たちは一瞬にして消滅し、素材だけを残して消えていった。

 

「はい、これで終わったよ。確かこの近くに村があったから、そこでもう今日は落ち着てもいいんじゃないかな」

「……はい、そうします。すみません、本当にありがとうございました」

「いえいえ、それじゃ、気を付けて」


 私はシンプルにそれだけ伝え、箒にまたがって再び空の散歩を楽しむことにした。私が魔法で出した積乱雲はすでになくなっていて、自然な雲と空が広がっている。


(思いっきり魔法出せたし、私ももう今日は宿探して休もうかな)


 そんなことを想いながら、今日ものんびりと旅を続けるのだった。


 

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