第6話 魔物襲来

姉が王都に行ってから数ヶ月、僕は日課のように魔力を使い切っては休むを繰り返していた。


ただ、昔と比べて変化がないわけではない。


一つは姉がやっていたお手伝いを僕がやることになった。

畑に水を撒くのが僕の仕事になったが、水魔法を使える今ならそんなに手間ではない。

創造に回す魔力を使ってしまうのが少し勿体無いと思うくらいだ。


ちなみに姉の場合は魔力を使い果たすには畑が小さすぎるので、怪我もしてないのに自分に回復魔法を掛け続けていた。

回復魔法を使うことで気絶することを回避していたのは素直にスゴイと思った。実際は気絶した瞬間に回復されて、一瞬で目を覚ましていたみたいだけど……


もう一つは僕も気絶しなくなったことである。

何故気絶しなくなったのか、それは気絶耐性というスキルを創造したからである。

このスキルのおかげで気絶せずにいられる。魔力が回復するまではまともに動けないけど…。

その為に魔力回復ポーションも創ってストックしてある。飲むことで回復量は少ないが動けるくらいにはなる。


回復量に対して創るための魔力量が割に合わないので、飲んで、使っての無限ループが出来ないのが残念だ。


今は魔力回復率上昇というスキルを創造しようとしているが、とてつもない量の魔力を要求されている為、このままいくと獲得するのに3ヶ月くらいかかるだろう。しかし、獲得してしまえば効率が上がるため、今は他のスキルを創るのは我慢している


そんな毎日を過ごしていたある日、村に向かって魔物の群れが来ていることに気づいた。

他の人はまだ気づいてないと思う。

今までも魔物が村を襲うことはあったが多くても三体くらいだった。村の男性陣を中心になんとか撃退していたのだが……今回は規模が桁違いだった。

わかるだけでも100体はいるな…


うーん、どうしようかな。

僕が創造ってスキルを使えるのは家族しか知らない。

畑に水を蒔いてるのは見られているので、他の人は僕も姉と同様に水魔法が使える程度に思っているだろう。


あの数が村を襲ったら確実に滅びるよな……

今から逃げても全員は間に合わないだろうし。

家族だけ連れて逃げても後味が悪いな


コソッと倒しに行ってくるか。遠距離から攻撃して近づかなければなんとかなるかも知れないし。

さいわい、誰も気づいてないし


僕は両親に「ちょっと出掛けてくる」と伝えて魔物がいる方へ走っていく。嘘は言ってないからセーフだろう


魔物はゴブリン多数に、コボルト、それからオークも数体いた。どれも遠距離から風魔法を使って攻撃することで問題なく全滅させる事に成功する。

ここまではよかったんだけど、まさか、これが大事になるとは思わなかった。


実は魔物が大群で押し寄せてきたのはスタンピードという現象が発生していたみたいで、森の奥で強力な魔物が発生していたようだ。

それを討伐する為に、冒険者が2パーティ派遣されていた。

魔物はAランクパーティによって討伐されたが、スタンピードの対処を担当したBランクパーティが何もせずに、スタンピードが収まってしまった。

向かった先には魔物の血痕があるのみ。


ありのまま冒険者ギルドに報告された為、調査の為にギルド員が村に来てしまったのだ。


僕は隠れて、両親と王都から派遣されてきた男性との会話を聞いている


「数日前、この村から少し離れたところで魔物が発生しました。しかし、冒険者が討伐に向かった所、魔物がいませんでした。現場には戦った跡と思われる血痕が残っているのみでして……。我々はその調査に来ているのですが、何か知りませんか?」


僕が倒した魔物の件だ。マズイな、両親は僕がやったのは知らないけど、この話を聞いたら気づくかもしれない。

あまり目立ちたくないから黙ってて欲しい


「……いえ、魔物がいたことさえ気づきませんでしたので」

母さんが答える。


よし!さすがに息子を売りはしない。


「もしかして、エル…グッファ、ゴホッ」

話出した父さんの脇腹に母さんの肘が刺さる


父さん、もっと考えてよ


「大丈夫ですか?」


「……大丈夫よね、お父さん。」

母さんは目で父さんに訴えかける


「ああ、大丈夫だよ。ちょっとむせただけだ」


完全に疑われたな


「それで、何か知りませんか?」


「…私も魔物がいたことにさえ気づきませんでした」

父さんが答える


「さっき何か言いかけませんでしたか?」


「……なんのことでしょうか?」


「まあいいでしょう、私は明日までいますので何か思い出しましたら教えて下さい」


男性は家から出て行く


少ししてから母さんに呼ばれる


「エルク、ちょっときなさい」


「はい」


「何か言うことがあるんじゃないの?」

顔は笑っているけど、有無を言わさない威圧感を感じる


「はい、僕がやりました」


「なんでその時に言わないの!」


「心配掛けたくなくて」

母さんは呆れた顔をする


「はぁ、エルクがおかしいことはもう十分わかってるつもりよ。今更魔物の1体や2体倒したところで驚きはしないよ」


「……もっとなんだ」

僕は小声で答える


「え、なんて?」


「倒したの1体や2体じゃないんだ」


「……ちょっと待って」

母さんは深呼吸する


「いいわ、続きを聞くわ」


「100体……くらい」


「……」

母さんは言葉が出ないようだ


「本当なのか?」

父さんに聞かれる


僕は違う意味に捉えてしまった

「ゴメン、わかっちゃうよね。本当は200体は倒したよ。でも遠くから攻撃して近づいてないから危ない事はしてないよ。」


「……」

父さんも黙ってしまった


「どうしようか……」

どうしたらいいのか僕にはわからない


沈黙がしばらく続いた後、母さんが口を開いた

「エルクが決めなさい。黙ってて欲しいなら黙ってるわ。」


さっきの男性が何者かはわからないけど隠し通すにはリスクを伴うだろう。それでも隠してもいいと言ってくれている。


「正直に話すよ。信じてもらえるかはわからないけとね」


僕は作り笑顔をしながら答えを伝えた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る