欠陥品な俺の学校生活

影束ライト

第一話 特異体質

 現代世界では、数はそれほど多くないが、様々な人が「特異体質」を持っている。

 この「特異体質」とは、漫画やアニメみたく、火が出せたり、物を創り出すことができるようなものでは無い。


 ここで言う、主な「特異体質」とは、例えば

 体が人よりかなり柔らかい。だったり、少し遠くの物を見ることができる。だったりと地味なものが多い。

 それでいて、ぎりぎり普通の人間でもできないことは無い。と、思える範疇のものである。


 だがやはり、例外は存在する。

「特異体質」中には、人間の限界を越える身体能力を発揮できるものや、百発百中の占いなどの、

 あまり華やかさは無いが、普通ではできない、正しく特殊と言える「特異体質」がある。


 ちなみに、この話の主人公は「特異体質」の中でも後者。つまり、普通の人間では不可能な、ことができる力を持っている。

 だが、彼は普通の人間にある物を持っていない。


 この話は、そんな人間として「欠陥」している少年の話だ。









 _______________________


「ふわぁぁ〜。カケル君、今日は温かくて眠いね」


「温かいのは分かるが、ヒトミお前が眠いのは、昨日遅くまでゲームやってたからだろ?まったく新学期早々、何してるんだよ」


 そんな会話をしているのは、制服に見を包んだ男女。


 眠そうな声を出した方は、長い黒髪に整った顔立ちをしている女子高校生。千里瞳せんりひとみ


 それにツッコミを入れ、カケル君と呼ばれたのは、一見平凡そうな見た目をしながらも、どこか年離れした落ち着きを感じさせる男子高校生。最上さいじょうカケル。


 二人が何気ない会話を交わしながら歩いていると、


「なぁ、俺らと遊ぼうぜ」


「ちょっとだけだから、な、頼むよ〜」


「すいませんわたし達の急いでるので…」


 遠くからそんな会話が聞こえてくる。


 カケルとヒトミは、顔を見合わせる。


「……ヒトミ」


「はいはい、ちょっと待って」


 ヒトミが、会話をしている男女の方を見る。


「う〜ん。完全に男に言い寄られて、女の子たちが困ってる展開だね」


「さすが、ヒトミの特異体質『遠見』。よく見えるな。…それじゃあ」


「はいはい。鞄は持っててあげる。いってらしゃい」


「ああ。いってくる」


 カケルは、鞄をヒトミに渡し、会話をしている、男女の元へと行く。


「ほんと、お人好しだなぁ」


 そんな言葉をヒトミはつぶやくが、すでにカケルは、その言葉が届かない距離にいた。






 _____________________


(あぁ、もう最悪)


 絡まれている女子の一人は、そんなことを思い、背中に隠れているもうひとりの女子を庇いながら男に対応をする。


「ちょとだけだから、な」


「すいません。本当急いでるので」


(せっかく今日から、楽しい高校生活が始まるはずだったのに)


「ほら、後ろの子も一緒にさ」


「やめて、私の妹に近づかないで」


 妹、と呼ばれた後ろの女子は怯え。現在対応している姉である女子の後ろで身を縮めている。


「ほら、実は俺特異体質者でさ。ほら、こうやって指の関節を゛ゴキゴキ゛な、いつでも音を鳴らすことができるんだぜ」


「なら俺も、ほら、俺はこうやって中指を逆に曲げるんだよ」


 二人の男は、自慢をするように、指の関節を鳴らしたり、中指を逆に曲げたりする。


 そんなことをすれば当然、


(なに!?この人たち、いきなり特異体質自慢して、気持ち悪!!誰か、助けて)


 姉である女子は、突然の恐怖で顔を下に向け、妹を庇いながら、助けを求める。

 そして、


「あの、……」


「……え?」


「彼女達が嫌がってるんで、どいてくれませんか?」


 助けはやってきた。










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