第17話 合流!


 あんなを抱きかかえたまま、僕は屋上へたどり着いた。


「ミュナ!!無事……おわっと!!」


 勢いよく、屋上後方のドアの方、僕たちのところへ地面を擦り吹き飛ばされてきたのは銀髪の少女ミュナだった。

 アスファルトに靴を滑らせて、スピードを凝らした少女は、僕の声に目を丸くしてこちらを振り返った。


「え!!え!?カナタくん!?」


「いや、そんな幽霊を見るような顔をしなくてもさ……」


「生きてるの!?」


「生きてるよ!!」


 むしろいきなり飛んできたミュナの方が心臓に悪いよ。とは言えなかった。

 ミュナは、はたと僕が見知らぬ少女を抱きかかえていることに気がついたらしく、疑わしそうな目で僕とアンナを交互に見た。


「な、なな、なんで。だっこなんか……」


「え?あーえっと」


「あの!!ダイナは!?」


「え!?だ、ダイナ!?ダイナなら、今、闘っているところだけど…」


「あんな、行きましょう!」


 困惑するミュナを置いてきぼりにして、あんなと楓は主の元へと駆け出した。


「あっちょっと!危ないってば!!カナタくん!」


「はいよ!」


 ミュナに腕を取られ、僕は大鎌へと変化する。

 鎌を持って、ミュナは軽く地面を蹴りつけ、先に行ってしまった双子の少女たちの頭上に飛びあがった。僕を振り上げる。


『おい!?ミュナ!!』


 ミュナが何をする気かわからず、僕は叫んだ。あんなと楓の怯えた表情がはっきりと見えてしまった。


『んおおおおおおっ!?』


 こうなったら、武器化を解いて。なんて考えた時、ぐるぐると鎌を廻された。金属がぶつかりあい、弾く音が聞こえる。

 そして僕は理解した。飛び道具か。周囲を俯瞰すれば、鎖の付いた飛び道具がアスファルトの地面の隙間に刺さっていた。


「あなたたち、大丈夫?ケガは?」


「だ、だいじょうぶ、です」


「よかった。ダイナの側まで私が守るわ」


 ミュナが尻もちをついていた少女に手を差し伸べた。声音は優しい。少女は双子に笑いかけているのかもしれない。アンナの頬がうっすら赤くなっている気がした。


『ミュナ、僕も武器化を解いて一緒に……』


「だめ」


『え、いや……』


「だめ。だめったらだめ」


『え??あ、うん』


 拗ねられているのか、怒っているのか感情が共有していてもよく分からなかったが、頑なに断られてしまった。なんなんだろう。


「それじゃあ、行くわよ。ダイナ!!」


「——!?。あんな、かえで!!」


 ミュナの声に姉と対峙していたダイナがこちらを向く。銀色の剣を持っている。あれは、ミュナの剣だ。共闘でもしていたんだろうか?意外だ。シンヤに話を持ち掛けられて渋々かな?


「くっ!!武器なんて持たせないわあ!」


 僕たちの姿を認めたミュナの姉が激昂して蛇のように鎖をうねらせる。


『ミュナ!二時方向とまわって六時方向から仕掛けてくるぞ!』


「了解!カナタくん!」


「あんな!かえで!こい!!」


 僕たちが攻撃をふさごうとしている中、ダイナが双子に手を伸ばす。


「たあああああああああああ!」


 ミュナが力強く踏み込んで、僕を手首を返して持つとボールを打ち返すように鎌を振るった。正確に的確に飛び道具の刃に鎌の刃を当てて弾く。あともう一つ。

 一つ目の飛び道具の鎖が、鎌の刃に絡まって動かせない。


「う、りゃあああああ!!」


 ミュナはそのまま力任せに右足を軸に回転。六時方向の武器も、地面に叩きつけ、鎖の端を持つ女の方から「きゃあ」と悲鳴が上がり、なにか落ちた音がした。


「ふふーん!俺様、大復活だぜ!」


 無事、合流したようだ。


「ミュナ、俺様は勝ちにいくけど邪魔、すんじゃねーよ」


「あら、奇遇ね。私もそのつもりだったんだけど」


 にやりと、吸血鬼の少年少女は兄妹らしく笑みを浮かべた。

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