噂の真相 5

(後日談…… )



あの後…大谷さんは散歩にも出ずに、部屋に籠って仕事をし始めた。



「コレよ、コレ!私が求めていたのは、コレなのよ♪♪」



と言いながら、凄い勢いでPCに文章を打ち込んでいた。

どうやら大谷さんの職業は、ドラマの脚本家だったらしい……



結局、何のドラマの脚本を書いているかは、教えてくれなかったけどね。



そして私達の中間試験が終わった頃、大谷さんは東京に帰る事になり、私達【オカルト研究同好会】と徳さんと満月は、空港まで送って行く事になりました。



「あなた達のおかげで、良い脚本が書けたから今日は奢りよ♪」



と皆んなにランチを奢ってくれた。更に、帰りの交通費までくれたの。

私達、そこまで感謝される様な事したかなぁ?



「また、来るからねぇ~♪♪」



そう言い残し、大谷さんは上機嫌で東京に帰って行った。



「そう言えば薫ちゃん、この前ずいぶんと大谷さんと話が盛り上がってたけど、何の話してたの?」



すると薫ちゃんは、バツが悪そうな顔をしながら、大谷さんとの話の内容を教えてくれた。



「この前の【スクモ塚事件】の話…… 」


「えぇっ!?アレ内緒って言ったじゃない!」


「だってせっかく私達で解決したのに、世に出ないの悔しいじゃない!それに大谷さん、ネタに詰まっていて見てて気の毒だったんだもん!


私…アクションシーンとか書くの苦手だから、プロの大谷さんが書いたらどうなるか見たかったし…… 」


「気持ちはわかるけどねぇ。」


「それにアヤメさんも【謎の暴走族事件】の事話してたわよ。」


「そ…そうなんだ…… 」



【謎の暴走族事件】は、まぁ仕方ないかぁ……

アレはこの町じゃ有名な話だから。

て…アレ?大谷さんってまさか???



「あのさ…薫ちゃん、大谷さんが書いてるって、もしかして?のだったりするの??」


「えっ?そうだよ。メインライターの【大谷愛子】さん。知らなかったの?有名じゃない!」


「知ってる訳ないでしょ!!有名なのってごく一部の人達限定だよね!?」


「あははは♪」



だから徳さんと満月の事、観察してたのか。



数ヶ月後…東京にいる大谷さんから私達に、新幹線の切符との映画のプレミアム試写会のチケットが届いたの。



『県立H高校【オカルト研究同好会】の皆さんへ


皆んなのおかげで良い脚本が書けました。

お礼に【映画オニレンジャーVSジクウレンジャー】(前期と今期のヒーローのコラボ映画)のプレミアム試写会のチケットと新幹線の切符を送ります。

皆んなで観に来てね!待ってます。』



「やった~♪【オニレン】のプレミアム試写会のチケットゲット♪♪」


「えーマジかよ……

大谷さん、コレの脚本家だったの?

出来れば遠慮したい…だが東京には行きたい!う~ん悩むなぁ…… 」



まぁ薫ちゃんはファンだから嬉しいだろうけど、坂野君は複雑だよね。

私?私は行くわよ…だって徳さんと満月が行く気になってるんだもの……



私達とは、別口でストロベリームーンウチ宛にチケットが届いてたのよね。



結局皆んなで行く事になった。

引率はアヤメさんがしてくれる事になりました。

りくは試験があるから、無理なんだって。

残念……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(新幹線駅…… )



「で…何で田口さん達まで居るの?」



駅の待合で皆んなを待ってたら、何故か稲荷狐キツネの集団と遭遇した。



「たまたまだよー♪僕達は前から楽しみにしてた、ツアーのチケットが当たってね!奥さんと一緒に京都に行くんだ♪」


「えっ?田口さんって結婚してたの!?」


「そうだよ。彼女が僕の奥さんの花ちゃん♡」


「はじめまして…花です。」


「あ…どうもはじめまして。山根理子です。田口さんにはお世話になってます。」



田口さんの奥さんは、小柄で可愛いらしい和風美人?だった。どうやら稲荷狐キツネではないらしい。



「じゃあ、僕らは先に行くね。」


「では皆さん、お見送りありがとうございました。山根さんお先に失礼します。」



ペコリ



そう言って田口さんは、奥さんと改札を通って行った。



「「「「いってらっしゃ〜い♪お土産よろしくね〜♪♪」」」」



他の稲荷狐キツネ達は、見送りだって。



その後直ぐに皆んなが来て、東京に向けて出発!車内では田口さん達に会わなかったから、1本前の便だったみたいね。



4時間程で東京駅に到着。一旦、大谷さんが予約してくれたホテルに、荷物を預けてチェックインの時間まで、近くを散策。



徳さんと満月は『都内に住んでいる知り合いに、お土産を持って行く。』と言って別行動に……



なんだか私より、東京都会慣れしてるのがなんかモヤっとする。

ところで、『都内に住んでいる豆狸タヌキの知り合い』って誰よ?



夜は大谷さんに、ホテルのレストランで夕食をご馳走して貰いました。東京のホテルだけあって凄く美味しかった。



翌日は、いよいよ【オニレン】のプレミアム試写会。

パンフレットによると、来期のヒーローが出るらしい……



「VS映画の場合、だいたい中盤ぐらいに出てくるのが、定番よね。」


「今度の戦隊も楽しみね♪」



薫ちゃんとアヤメさんは、既に盛り上がっている。坂野君は帽子を目深に被って俯いていた。



「やっぱ、来るんじゃ無かったかも……

居心地が悪過ぎるぜ!」


「大丈夫よ。男性が居ない訳じゃないんだから。」


「けど、圧倒的に少ないだろ。しかもほとんど映画関係者じゃないか……

それにしても、なんで俺まで呼ばれたんだろ?」


「そう言えばそうだよね。薫ちゃんとアヤメさんは、ファンだからわかるけど……

徳さんと満月が、呼ばれた理由もわからないわ。」



その徳さんと満月は、【オニレン】のファンの女性に囲まれて、まんざらでもなさそう。



皆んな騙されないで!ソイツらの正体は、中見ジジィの豆狸タヌキよ!!



会場に入る前に大谷さんから『【藤映】のお偉いさんも来るから、何があっても騒がない様にね!!』と念を押された。



コレはなんかあるわね……



そして、薫ちゃんとアヤメさんの予想通り、映画の中盤に差し掛かった頃、来期のヒーローが登場した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


劇場版【オニレンジャーVSジクウレンジャー】



ドカーン!!



オニレンジャーの必殺技が決まり、敵の西洋妖怪怪人が吹き飛んだ。



「手強い相手だったな!」


「だが、俺達は勝った!」


「これ以上は、もう無理…… 」


「早く帰って、ご飯食べようよ♪」


「…………………… 。」



画面には、オニレンジャーが立ち去った後も暫く怪人と戦った場所が写されている。



やがて場面は夜のシーンに切り替わり、吹き飛んだハズの怪人が、ビデオの逆再生の様に復活した。



「クックックー!バカめ!私には再生能力があるのだ。コレでヤツらの弱点がわかった。魔王デービルド様にご報告だ!!」



と言って立ち去ろうとしたところに、来期のヒーロー登場。



「マジカ帝国の怪人発見!」



チャラレッドが現れた。



「な、なんだ貴様らは!?」



突然現れた、新ヒーローに驚く怪人。



「レッド…ソレ違うんじゃないか?」



とクールブルー。



「えっ?そうなんですの?悪玉反応はありますのに?」



テンネンホワイトは、お嬢様口調で不思議そうに首をかしげる。



「どうでもいいから、早くぶっ倒して帰ろうぜ!」



ヤンチャブラックは、ちょっと単純思考らしい。



「世界の平和のために、サッサと倒してあげるのが世のため人の為よ。」



コモンピンク…どこら辺が常識なのか意味がわからない……



「「「「「まぁとにかく、倒せばいいんだよな(ね)?」」」」」



新ヒーロー【ジクウレンジャー】は、あっという間に怪人を倒して颯爽と帰って行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


えぇっ!?何アレ??

もしかして、私達をモデルにしてるの?



左隣りを見ると坂野君は、くちを開けてポカンとしてた。右隣りにいる薫ちゃんとアヤメさんは、凄く嬉しそう。



徳さんと満月は…とっくに飽きて寝ていた……



だから大谷さん、私達を呼んだのね。モデルが私達だって皆んなにバレたら恥ずか死ぬ!!



こうして私達の東京ツアーは、なんとも言えないモヤっと感を残して終了した。



「ところで、徳さんと満月が会いに行った東京の知り合いって誰だったの?」


「あぁ、大物妖怪の【狸穴まみあな※1の狸】じゃ。」


「こっちに来た時には、必ず挨拶しに行っとる。地方の土産を持って行くと、喜ばれるんじゃ。」


「へぇ~そうなんだぁ。」



そう言えば、コイツら妖怪だったわ。



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※1


麻布の【狸穴まみあな


狸穴の地名の由来については諸説ある。


①この地に生息していた猯(まみ=アナグマ)に因んで『まみあな』という地名がついたのだが、後に狸の字と混同されてしまい、狸穴(まみあな)と書かれるようになったとする説が有力である。


②長い坂下に雌狸の棲む大きな洞穴があったのが、地名の起こりとされる。

寛永21年(1644年)には、三代将軍・徳川家光がこの穴の視察を命じたという話も残っている。



(参考・引用文献 ウィキペディア)

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