Act.12


 港街ポステルにやって来て、最初に図書館に訪れた日から3日ほど経過した頃。わたしはポステルには宿を取らず、いつも通り自分の家に転移で戻って一夜を過ごしていた。

 魔法の練習をした、一昨日は結局午後まで夢中になってしまい、気付いたときにはもう夕暮れ時だった。これは……うん、反省している。あまり夢中になりすぎるのも良くないな。


 その代わりと言っては何だけど、闇と光の魔法についてはかなり色々と出来るようになったと思う。多分、普通の敵なら追っ払えるとは思うけど、あまりそんな事には遭遇したくない。

 とはいえ、実際に盗賊に襲撃された訳だしそうも言ってられない。最悪転移で飛べば大丈夫だろうしね。


 でもって、昨日。流石に同じ過ちを繰り返してないよ! 昨日はちゃんとポステルの図書館に行って来て他の知識を取り入れるべく、読み漁ってた。

 この世界なんだけど、名前はエレスティア。そしてこの世界の創造神は女神エレスティアとなっており、少なくともフロリア王国はこっちの宗教が多いみたいだね。


 海を作り、大地を作り自然を作り生物を生み出した……としか書かれてない。地球で言う良くあるような神話? っていうのかな。

 宗教とか神様にはそこまで興味はないのはやはり日本人だからだろうか。でも、わたしをこの世界に転生させたのはこの女神エレスティアなのかな?

 そう考えると、ちょっと会ってみたい気もする。本当に居るならの話ではあるけど、実際わたしは地球から転生してる訳だし。


 特に使命みたいなものは無さそうだし、謎は深まるばかり。とはいえ、地球での生き方は空っぽだったので、この世界に来れたのは良かったのかも知れない。

 ま、あくまでわたしはこういう謎の力があるからそう言えるんだけども……転生させてくれた事、力をくれた事……取り敢えず運が良かったと思うしか無いのかな? ありがとう。


 話が少し逸れた。

 今日は何をしているのか? 今日は初めての依頼をやっている最中である。Fランクの掲示板にスライムの討伐依頼とか、ゴブリン討伐ってのがあったのでそれも併せて受注し、現在家のある新緑の森へ戻ってきてる。


 このスライムの討伐依頼は常設みたいで、常に設置されているみたい。普通に売るよりは多少稼げるので受ける人はそこそこ。ただランクが上がればもっと高額な討伐依頼もあるのでそっちに行ってしまうが。


 今更ながら良く考えたらアルタ村にもFランクの依頼は少ないけどあったし、もしかするとスライム討伐の依頼があったかも知れない。


 ……まあ、良く見てなかったわたしの所為だろうけど。


 話を戻そう。

 最低のFランクとは言え、一応討伐依頼も少なからずある。スライムもそうだが、あと一つがゴブリン討伐。人型の魔物を倒す覚悟を身につけさせる為、Fランクに位置している。

 ただ、運悪く集落とかを見つけてしまった場合は即逃げて報告するようにとなってる。規模にもよるけど、大規模な集落は高ランク冒険者たちによる討伐部隊が結成される。


 そんな訳もあり、ゴブリン討伐の依頼は2体倒せば良いという感じに結構緩い。


「早速出たか」


 今回はいつもとは異なる方向を進んでいる。いつもはどっちかと言うとアルタ村のある方向で魔物とかを倒していたけど、今回は反対側に向かっているのだ。

 実の所、反対側はあまり探索してなかったんだよね。いや、探索する気はあったんだけど、それよもり知識とかのほうが優先度が高かったから仕方がないのだ。


 で、そんな新緑の森の中、早速青い液体状の生命体のスライムが現れる。1体2体ではなく、5体くらい居るみたい。

 思ったより多いけど、スライムなので大丈夫だろう。


「<ホーリーアロー>!」


 使い慣れた光属性の攻撃魔法<ホーリーアロー>を10発くらい放つ。光の矢でも撃てるけど、こっちの方が何かかっこいいのでこちらを採用。

 浄化は何故か浄化って言った方がしっくりくるのでそのまま採用。


 スライムは5体、<ホーリーアロー>は10本。1体当たり2本の矢が飛んでいき、次々とスライムを倒していく。

 少しして、5体居たスライムは10本の<ホーリーアロー>によって葬られ魔石のみがポトリと地面に落ちて残る。


「スライムは解体とかしなくても勝手に魔石になるんだよね」


 不思議である。

 とはいえ、確かにスライムの解体ってどうするのか想像がつかない。


 そう言えば、これ図書館の本から知ったのだがトイレとかにスライムを使うのが多いみたい。色んな物を消化するので、それを流用している感じ。

 え? わたしの家? 以前はあの良く工事現場とかにある仮設トイレをイメージして作ったんだけど、今はこのスライム式を参考に創造魔法で作ってある。

 水洗トイレにしようにも、排泄物を流す先が無いので作れない。ならば、タンクに水を入れれば流せるし、排泄物もどっかに流さずに済む仮設トイレが良いと思った次第だ。


 今は知識も手に入れられたので誰かが来た際とかに、不審がられぬよう使われている仕様のトイレにした訳だ。

 初めてした時? うん、ちょっと何というか……自分の体ではあるけど罪悪感があった。後やはり感覚も違うし、我慢もあまりできない……慣れるまで少し時間がかかったよ、うん。


「……」


 ちょっと思い出すともう一つの不安が出てしまう。

 男の時は無かったけど、今はアリスという女の子な訳で……あれが来る可能性もあるんだよね。うげ、わたし大丈夫かなあ。


「いやいや、今考えることじゃないよね!」


 わたしは考えるのをやめた。




□□□□□□□□□□




「せい!」


 わたしは手に持つワンダーデスサイズを大きく振りかぶる。わたしを食おうとせんと襲いかかってくるレッドウルフたちが斬り裂かれる。

 魔法以外にだってわたしにはこの武器があることを忘れてはいけない。ここ最近は魔法ばっかりだったので、偶には武器も使わないとね。こころなしか、WDSが寂しがっていたし。


 あらかたレッドウルフを始末した後、少々雑になるけど早めに解体を行いストレージにしまう。今回の襲撃してきた数は合計で10体くらい。5体の群れ2つに遭遇した。


 他にもレッドウルフくらいの大きさの蛇の魔物にも遭遇した。ポイズンスネーク……毒の蛇の魔物とでも言えば良いかな? 何かここに来て新しい魔物がちらほらと。

 異常完全無効があるので、毒は全然効かなかった。ちょっと油断して毒液食らったけど大丈夫だった。駄目だったら光魔法で即刻治すつもりだったよ。


 しかし、1人だと無理に色んな事は試せないなって思い始める。魔法を突き詰めるためにも、色々と試すしか無いし、どうするかな。

 パーティーは面倒くさいし、わたしは冒険者活動をメインにするつもりもないので却下。

 奴隷を買うか? ……確かに確実な方法ではあるけど、奴隷は安くても50万エルはする。戦闘とかが出来るとなると更に高くなりそうだし、個人的には女の子が良いのでこちらでも高くなりそうな気もする。

 家は拡張できるし、やはり奴隷かな。とはいえ、回復系が使える女の子の奴隷ってそんな都合の良いのは無さそうな気はする。


「ん?」


 森を進んだ少し先の所。


「って、え!? あれはまずいよね!?」


 地面に力なく倒れている人と、それを襲わんとするレッドウルフよりも少し大きな体の魔物……地球で言うなればサーベルタイガーのようなやつがそこに居た。


 何でこんな森の中に人が居るのかも謎だけど、取り敢えずあいつを倒さないと。見殺しには流石にできない。


 わたしは覚悟を決めてその魔物に向けて魔法を放った。


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