第26話 ランドルフ戦1

「お前ポリスマンじゃないよ! 何で来るねっ」


 ポリスマンを呼んだはずのサバチャイさんだったが、目の前には驚いて目を大きくした、警戒心マックスのタマだった。


 とりあえず、タマは僕の目の前にいるので、首をそっとつまむと、用意していた布製のバッグ、タマホームの中に入れてそっと抱っこしてあげる。


 これで捕獲完了だ。


「ルーク、ナイスね。こうなったらもう一度呼ぶよ。チチンポイポイ、ポリスマン!」


 再度、召喚獣を呼び出そうとしたサバチャイさんだったが、何故か何も反応しない。前回はポリスマンとタマを両方呼べていたはず。


 どういうことなのだろう。


「ルーク、どういうことね?」


「わかりませんが、前回と違う点があるはずです」


 サバチャイさんの召喚はランダムに呼び出されるのか? そうだとしても、ポリスマンが召喚されない理由がわからない。


「何があったのか知らないが、こちらから攻撃してもいいのか?」


「ポリスマンが召喚されるまで、ウンディーネと一角ウサギ、それからルークで攻めるわ」


「えっ、僕?」


「ルークというよりは、タマになるんだけどね」


「あっ、なるほどですね。了解」


「風魔法、スピードアップ」


「うおお、お……?」


「ルークさんと一角ウサギには補助魔法をかけました」


「ありがとうございます!」


 一気に体が軽くなった。走っているというよりも、飛んでいるような感覚に近い。ここで、僕がこの拳銃を使えればいいのだけど、やはり使い方がよくわからない。


「雷獣、チャージクラッシュだ!」


 雷を帯びた雷獣がバチバチいいながら突っ込んでくる。


 無理無理無理……。あ、あれっ、でもこのスピードなら避けられるかも!?


「一角ウサギ、回避よ!」


 かなりスピードが上がっていて、予想以上に逃げてしまった……。


「ルーク、ちょっと回避し過ぎよ。それでは逆に狙われてしまうわ!」


 わかってる。わかってはいるんだけど、雷獣バチバチいってるし、恐いんだよね。


 一角ウサギが上手くフォローしながら距離をとってくれたので、何とか戻ることができた。


「ウォーターランス!」


 あっさりと、シャーロット様の魔法を回避すると雷獣は僕のことをジーッと見ている。


「おー、ルーク狙われてるね。完全に倒しやすいのはルークだと思われてるよ」


 一人だけ初心者のような動きをしているのだから当たり前だ。しかしながらそのバチバチは勘弁してもらいたい。


「で、でも、召喚主は攻撃しないってお約束でしたよね??」


「もちろんだ。でも、その腹に抱えてるのはよくわからないが召喚獣なんだろ? そいつを攻撃した時に、ちょっとぐらい当たっちまうのは許してくれよ」


 雷獣の目がピカーンと光った気がした。完全にロックオンされている。


「サバチャイさん、まだですか?」


「うーん、やっぱり分身は二人にしかなれないね」


 自分の財布を地面に置いて、倍にしようとしているのだろう。今は雷獣よりもお金の方が大事と思える。


「サ、サバチャイさん! 今はそんなことしてる場合じゃないですって」


「だって、ポリスマン呼んでも来ないね。サバチャイとっても暇よー。試しにもう一回呼んでみるか? どうせ来ないと思うけどね、チチンポイポイ、ポリスマン」


 すると、今度は眩い光とともに、魔方陣が現れたー!!!!


 この魔方陣の大きさは間違いない。


 相変わらず、黒っぽい服を着用したポリスマンがサバチャイさんの目の前に現れた。


 意味がよくわからないのが、ランドルフさんだろう。


「なんで、あいつ二人になってるんだよ。しかも、また変なやつ召喚しやがって。三対一どころか、六対一になってるじゃねーか」


 ランドルフさんの言葉に何も言い返せない。しかしながら人数は増えてるけど、今回のサバチャイさんは役に立たなそうだし、実質は四対一ってとこだろう。タマは……一応戦力だと思いたい。


「ポリスマン! お前、さっき何で来なかったね?」


「サバチャイさん、そんなことより、早く雷獣を!」


「知らねーよ。今日は、これがはじめて呼ばれたし。つか、なんだよ戦闘中かよ? あのキツネみたいのを吹っ飛ばせばいいのか」


「そうね。いけるか?」


「うーん……。いや、あれはちょっと無理だな。そもそも動物を狙うのは難しいんだ。あれって、めっちゃ俊敏に動きそうじゃん。ピカピカしてっし。五発で仕留めるには無理がある」


 えぇぇー!!!!


「あんな速い攻撃を雷獣は避けられるの?」


「動かねぇ的じゃねぇんだ。音が鳴りゃ、少しは動くだろ。恐怖で動かねぇなら別だが、動かれたらそう簡単には当たんねぇんだよ。しかも外したら俺が狙われそうじゃね?」


「拳銃って、意外と操作が難しいんですね」


「普通の拳銃よりも爆発が大きい分、当たりやすいとは思うけどよ。せめて、少しでいいから奴の動きを止めてくれよ。そうしたら間違いなく仕留めてやるぜ」


「ポリスマン、僕に拳銃の撃ち方を教えて! 拳銃召喚したんです」


「ルークさん、マジか……。つか、拳銃、こっちに向けるんじゃねぇよ。危ねぇだろうが!」


「五発で少ないならルークのと併せた十発ならどうね?」


「どうって言われても、ルークは撃つの初めてだろ。普通に無理だろ」


「シャル、雷獣の動きを押さえることは?」


「動きを止めるのは難しいわ。でも誘導することなら」


「わかった。そうしたら壁際に追いつめよう。僕に作戦があります」


「わかったわ、ルーク。それで、どうすればいいの?」


「まずは三分だけ時間を稼いでもらえますか」

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