自分の幸せを想像したときに、報復しか浮かんでこなかったあの頃

 すべてを焼き尽くす力に目覚めた少女と、ごく普通の非常勤講師の、出会いの物語、から始まる物語。
 シリアスな現代ドラマです。導入部はファンタジー的ですけど、その実どこまでも生々しくやりきれない現実のお話。

〈 以下はちょっとネタバレになるかもしれませんので注意! 〉

 いわゆる「いじめ」を題材としたお話で、そこに絡めた「メアリー・スー」のあり方そのものが胸に刺さります。本来「すべてが自分にとって都合のいい幸せな妄想」であるはずのメアリー・スー妄想が、しかし世界への報復一色で染め上げられていること。
 この感覚、少なからず覚えがあったりして胸が痛みます。
 そしてそんな中、妄想内で唯一のポジティブな要素が、背伸び的な色恋であるところも。
 手の届かない幸せだと諦めているくせに、それでも空想の中では縋ってしまう、この感じ。彼女ほどには壮絶な人生でなくとも、しかしわかってしまうその手触りの生々しさが、痛烈に胸を刺してくるお話でした。