第7話 主人公-7



 「じゃあ、オーダーを考えないと」高松

「それより、ポジションは?」山本

「あ、そうだな。ーん、中沢、抜けてくれるか?」高松

「え、ボク?」中沢

「あぁ、悪いな。代わりに、清水さんに入ってもらおう」高松

「あ、ちょっと」あゆみ

「なに?」高松

「あたし、控えでいいですよ」あゆみ

「どうして?」高松

「だって、あたし、バイトがあるから、毎回練習に出れるわけじゃないし、そんなのがレギュラーなんて、変ですよ。ちゃんと、毎回練習に参加している人がレギュラーでないと」あゆみ

「そ…それも、そうだな」高松

「ダメよ、そんなの。あゆみさんがレギュラーでないと」しのぶ

「そうデス。アユミさん、すごいです」サンディ

「でも…、どうしよう」高松

高松は困って周りを見回した。

「いいじゃない、レギュラーで」山本

山本ははっきりと言い切った。

「うまいやつがレギュラー。そんなの常識じゃない」山本

「けどね」あゆみ

朝夢見は、ゆっくりと、諭すように言った。

「野球は、チームプレーなの。あまり練習に参加してない人間が、いきなり試合に出れば、連携プレーなんかうまくいかないわ。でしょ?」あゆみ

「そんなの、何とでもなるよ」山本

「そうはいかないわ。それを無視したら、野球にならないわ。ね、キャプテン」あゆみ

「う、うん」高松

「あたし、別に、試合に出たいとは、思わないの。みんなと一緒に練習して、みんなと一緒に上手になれたら、それでいいと思ってる」あゆみ

「そんなの、もったいないよ。四番で先発してもらわないと」山本

「勝つだけがゲームじゃないわ」あゆみ

「勝たなきゃ話にならないんだよ」山本

「おい、待てよ、山本。それじゃ、野球部と一緒だよ」池田

「え。あぁ…」山本

「大体、話はついたな。でも、やっぱり、試合には出て欲しいな、こっちとしては」高松

「出ないとは言いませんよ。ただ、さぼりの多い、あたしやしのぶちゃんは、やっぱり、レギュラーの資格はないっていうだけです。ね、しのぶちゃん」あゆみ

「ん。…でも、もったいないよ、あゆみさん」しのぶ

「いいのよ。だって、ここは、勝つための野球をするんじゃなくて、楽しむための野球をする、同好会だもん。ネ」あゆみ

朝夢見の笑顔に高松は頷かざるをえなかった。朝夢見はにこにこ笑顔を振りまいている、さっきまでの活躍が嘘のように穏やかな笑顔で。



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