第19話

 デートと言う事で私は彼と一緒に歩いている。映画館というのは中々行かないので緊張するものだ。特に横に歩いているのが大好きな人なのよ、仕方ないじゃない。

 今日の一夜はいつもとは違い髪をあげているせいか少しワイルドな感じがしてかっこいい。これは学校では見せられないわね。だって、他の女の子の目の毒ですもの。一夜は別にモテないわけではない。以前誠ちゃんとの会話を思い出す。



「姫奈ちゃんといつも一緒にいる一夜君だっけ? 彼って僕ほどじゃないけど結構イケてるよね」

「そうなの!! 一夜ってね、かっこいいし優しいの!! お風呂あがりとかすっごいセクシーなのよ」

「あはは、本当に首ったけだね、でも……姫奈ちゃんが告白をしないなら僕がもらってしまってもいいかな?」



 私は誠ちゃんの言葉に胸が沈むのがわかる。私だって外見には多少は自信がある。だけど誠ちゃんのような中世的な美しさはないし、かっこよさもない。彼が私よりも誠ちゃんを選ぶなら私は……



「ごめんごめん、軽い冗談だって!! だからそんな世界の終りのような顔をしないでよ!!」

「べ、べつにそんな顔してないわよ!!」



 慌てて反論をするが誠ちゃんを含めて周囲で話を聞いていた皆がにやにやしていたのがとても恥ずかしい。



「どうしたんだ、ボーっとして」



 考え事をしていた私が彼にひっぱられてすとんと胸元に引き寄せられる。その力強さと整髪料の混じった香りと、彼の顏にわたしは思わずドキッとしてしまう。こんなのずるいわよぉぉぉぉ。

 私は胸をドキドキさせたまま彼と映画を観る。ヒロインと使用人を自分と一夜に入れ替えてみていたのはここだけの話よ。盛り上がってつい彼の手を握っちゃったけど変に思われなかったかしら? でも……あのキスはちょっとエッチだったわね……映画を見え終えた私達はカフェへと向かう。



 カフェに座った私は店員さんに合図と共にカップルメニューをお願いする。彼が起きる前に実はこの店に行って作っておいたのだ。私お手製の特製パフェなんだから。




「姫奈さん? あのさすがにやりすぎじゃ……」

「なによ、私とじゃいやなの?」



 カップルメニューという言葉に彼は意識してくれたのかしら? 顔を赤らめながらあたりをきょろきょろと見回す彼をみて思う。だったら作戦通りね。あの映画も効果があったのかもしれないわ。



「いや、嬉しいけど……それでさ、今日デートをしようって言ったのは姫奈が家出をしたのと関係があるのかな?」

「そうね……そろそろあんたにも説明するべきよね……」



 普段と違い積極的な私に疑問を感じたのだろう、ついに彼が質問をしてきた。ごめん、一夜……私はいまからあなたに嘘をつくわ。

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