第24話 神(自称)の作戦

「アハハハ!このギャグウケるー!」




 ケラケラと笑いながら、カサカサと音を立てる神(自称)。


 俺からすればこの神(自称)も十分ギャグ的な存在だ。


 ただし、ウケもしなければ笑えもしないという注釈がつくがな!


 なんでこんなにリラックスしているんだ。しかも紙袋を被ったままとか。


 どうやって漫画読んでるの?明らかにその被り物邪魔じゃない?




「あー、笑いすぎてなんか喉渇いちゃった。ねぇ人の子ー。悪いんだけど、下から飲み物取ってきてくれない?」




 俺が顔を引きつらせていると、神(自称)はそんなことをのたまった。


 漫画に視線(ほんとどこから見てるんだ?)が釘付けになっているのもあってか、周りを見れていないようだが、ゴロゴロと体を動かしながら寝そべってるせいで、シーツがすっかりしわくちゃになっている。


 布団も吹っ飛ばされており、朝施したベッドメーキングが台無しだ。




「…………」




 その光景に思わずイラっとしてしまい、俺は無言で荷物を下ろすと、神(自称)へと近づいていく。




「冷たいのがいいなー。お茶でいいからさ。あ、あと氷も入れてね」




 なにも言わない俺に、次々と要求を突きつけてくる神(自称)。


 足音を立てないようにはしているものの、ドンドン近づいてくる俺にまるで無警戒なのはいかがなものか。


 やがてベッドのそばで立ち止まるが、相も変わらず神(自称)は楽しそうにページをめくり、こちらに目を向けることすらしなかった。




「ねぇ人の子ー。早く…」




「そぉい!」




 そんな能天気すぎる神(自称)の脳天に、俺は渾身のチョップを繰り出した。




 ボギッ!




「あいたーーーーーーーーーーー!!!!」




 直後、部屋中に響き渡る神(自称)の悲鳴が響き渡る。


 というか声でけぇ。これ、近所にも聞こえてるんじゃないか?




「なにすんのトウマちゃん!!!私がバカになったらどうすんのさ!!!」




 明日以降の我が家の外聞に心を割いていると、神(涙目)が振り返り、こちらを睨みつけてくる。


 紙袋の上から頭をさすっているが、それは果たして効果があるんだろうか。


 ただ紙をなでているだけでは?紙を撫でる神…うん、考えるのはやめとこう。俺までコイツの思考レベルに落ちそうだ。




「安心しろ。お前は既に十分すぎるほどアホの子だ」




「ひどっ!?ちょっと容赦なさすぎない!?そういうところも好きだけどさ!!」




 いや、最後の一文はいらん。


 好きとか紙袋被った不審者に言われても、まったくこれっぽっちも嬉しくない。


 言葉の出しどころをもっと考えて欲しいが、それができないのがこの神(アホの子)がアホの子たる所以だ。


 好感度を稼ぎたいのかギャグで流すつもりなのか、もっとハッキリしてほしかった。




「なにしにきたんだお前。用がないなら帰れよ」




「え、スルー?この人ちょっと冷たいんだけど…もしかして、私の作戦通じてないの?」




 は、作戦?




「作戦ってなんだよ」




「あれ、聞きたい?聞きたいんだ?ふっふっふ、狙い通りだ。トウマちゃんは私に興味あるんだね!やっぱり作戦成功してたんだ!」




 俺の問いかけに答えず、何故か神(自称)は楽しそうに笑う。




「おい、質問に答えろ」




「えー、ふふふふふ。どうしよっかな…あ、ごめん。待ってチョップはやめて。それ痛いんだよぅ」




 俺が再び構えを見せると神(自称)はアタフタと慌て出す。




「じゃあ早く話してくれよ。俺の帰宅を遅らせたことにも関係してんのか?」




「トウマちゃんはせっかちだなぁ…まぁいいや。じゃあ話すね」




 そうしてひとつ咳払いをすると、神(自称)は高らかに宣言した。




「ズバリ!押してダメなら引いてみろ作戦!それを今日私は実行したのでした!」






 …………はぁ?






 なにいってんだ、コイツ

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