部活はミリ飯食って、異世界でサバゲーすることです

南極ぱらだいす

第1話プロローグ

「あんた名前は」


「玉子、野々原玉子っていいます」


「何年」


「1年です」


「引っ越してきたんだっけ」


「はい。両親が離婚して、母方の祖父母が住んでるここに転校してきたんです」


「ふーん、ところで、なんで昼休みにいつも水飲み場にいるの」


「それは・・・うちが貧乏でお昼ぬきなんです。だから水でお腹をいっぱいにしないと午後の授業受けられなくて」


「え、そうなんだ。悪いこと聞いちゃったな」


「いえ、別に慣れてますから。それより先輩は」


「ああ、あっしの名前は狩谷トモ。一応3年」


「狩谷先輩は毎日お昼に部活棟でなにしてるんですか」


「ん、あっしは部室で昼飯食ってるんだ。ちなみに部活は狩猟部。で、あっしが部長ってわけ」


「そうなんですか。でも、なんで教室で食べないんですか」


「あっしの昼飯って、ミリ飯なんだ」


「ミリ飯?」


「戦闘糧食。簡単に言えば兵隊が戦場で食べる簡易食のこと」


「それって教室じゃ食べられないんですか」


「温める時に火を使うこともあるから、教室じゃ無理」


「どんな食べ物なんですか」


「いろいろあるよ。缶詰からレトルトバック、デザートやお菓子までついてるんだ」


「デザート・・・お菓子(ごくり)」


「そうだ、これから部室で一緒に食べない。お水だけじゃ、わびしいでしょ」


「いえ、そんな、ただでごちそうになるなんて」


「いいから、いいから、さあ、部室に行こう。今日は奮発して自衛隊の戦闘糧食Ⅱ型をふるまっちゃうから」


「えー、本当に結構ですから」


「玉子ちゃん、ハンバーグとカレーとチキンソテーどれがいい」


「・・・(ごくり)ハンバーグって豆腐のですか」


「違う、違う、ちゃんとしたお肉のだよ」


「・・・カレーって具無しですか」


「まさか、ちゃんと具入りだよ」


「じゃあ、チキンって鳩・・・」


「鶏、鶏だから、玉子ちゃん、普段なに食べてるの」


「もちろん、家のまわりの・・・」


「いんや、もういいよ。聞くのが怖いわ。とにかく、遠慮はいらないから、お腹いっぱい食べていいから」


「・・・そ、それじゃあ、少しだけごちそうになります」


「いやー、気にしないでいいから。新人獲得の餌と思えば安い・・・」


「え、新人?」


「あははははは、さあさあ、おひとり様ごあんなーい!」


「先輩、そんなに強く押すさなくても一人で歩けますから」


「いやー、めでたい。今日は本当にめでたいな」

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