一月の彼

  一月の彼


 夜半まで酒肴に興せる場所に事欠く頃年に、日常のルーティンもまた欠かして居ることを先ず詫びねばならないだろう。日に一度、週に一度と言う程頻繁ではないにせよ、思い出の公園に足を向ける事は課しもせず行っていた。


 一服を付け乍、時折にはスキットルを干す迄と言った区切りを設けて、彼との逢瀬の心算で独り身を凍えさせる事を愉しんでいた。幼少の、終いの記憶は其処での会話であった筈なのだ。


 喪失による傷心から自己を守る機能の一環なのか、この月に限って自慢の記憶力は全く不労に徹している。キーを叩く手には出処の不明な震えが走っている。マジで何だコレは。


 想起に収穫の目処が付かない為、話を失踪後に進めようと思う。彼からすれば全く冗談にも成りはしないが、私にとっては「黒歴史は?」と問われれば真っ先に挙がる時分と言える。



いや、全く御笑いなんだけど

五年後に再会して第一声が

「生きてたの!?」

は割りと冗談じゃねぇのよ此れが。

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