ついに魔獣の正体判明……それは
①魔獣『ガニィ・フェンリル』復活
超獣町から、さほど遠くない東方地域の海岸の洞窟──岸壁を打ちつける潮騒、磯の香りが漂う洞窟の中に、はぐれルググ聖騎士団はいた。
潮が満ちれば、傾斜がある洞窟の半分が膝の高さまで水没する。
洞窟の入り口を塞いでいる木造の難破船が、より洞窟の入り口を隠して目立たないようにしていた。
クラウンが、魔具を手にしている片メガネに訊ねる。
「本当にココで間違いないのか? 行き止まりで、ただの岩の壁だぞ」
「間違いない……です、行き止まりから、強い魔獣反応があります……たぶん」
「たぶんじゃ、困るんだがな」
クラウンが困り顔で頭を掻いていると、頬ハートが一歩前へ進み出てきた。
「あはぁ♪ あたしが探りいれてみようか」
剣を抜く頬ハート、はぐれルググ聖騎士団は一斉に頬ハートから、後方に距離を空ける。
頬ハートの持っている剣が、鞭のように伸びて岩壁を打つ。
「あはぁ♪」
行き止まりの岩壁が、ガラスのように崩れ消滅して。
彫られた壁画と石棺、それと岩に半分以上埋もれた、銀色の奇妙な
クラウンが、銀色の見たことが無い物体を見て言った。
「なんだ、ありゃ?」
そして、石棺に近づくと石のフタをずらす。
石棺の中から白い水蒸気が噴き出してきた。
水蒸気の中で片メガネが叫ぶ。
「魔獣反応あり!」
石棺のフタが、さらにズレる音が聞こえ。石棺の中から男の声が聞こえてきた。
「なんだよ、気持ちよく寝ていたのに起こしやがって」
石棺の中から出てきたのは、狼の獣人のような姿をした生物だった。
「起こしたのは、おまえたちか……寝起きが悪い、オレさまを起こしたからには、それなりの覚悟はできているんだろうな」
少し口が悪い、狼獣人の両手は目のような模様が表面に入った、ラグビーボール形のハサミになっていた。
両手ハサミの獣人は、棺の縁に座ると、ルググ聖騎士団を見回して言った。
「たいして、文明レベルは上昇していねぇな」
クラウンが、少し機嫌をうかがいながら、魔獣に訊ねる。
「あなたさまは、封印されていた魔獣ですか?」
「魔獣? あぁ、確かこの世界の下等生物は、そんな呼び方をしていたな……オレさまは、宇宙人の『ガニィ・フェンリル』さまだ」
「ウチュウジン?」
「宇宙の星に住んでいる住人のコトだよ……まったく、文明レベルが低い下等生物相手に、何回同じこと説明すりゃいいんだ」
頬ハートが、ガニィ・フェンリルを指差して笑う。
「あはっ♪ うっそだぁ! あんな空の穴に人が住んでいるワケないじゃん」
頬ハートと口喧嘩をはじめるガニィ・フェンリル。
「てめぇ、ぶっとばすぞ! オレたちガニィ・フェンリル星人は、高度な文明を築き上げたんだよ!」
「またまた、ウソだぁ。そんなハサミみたいな手で、文明なんて作れるワケないじゃん」
「そこは気づいちゃいけねぇ箇所なんだよ! マジで宇宙人にケンカ売ってんのか!」
片メガネが、場の険悪な雰囲気を変えようと、ガニィ・フェンリルに質問する。
「で……そのウチュウジンさんが、なんでコチの世界に?」
「話せば長くなるが」
「あ、だったらいいです……話さなくても、本当はそれほど興味ないんで」
「自分から質問してきたんだから、ちゃんと聞けよ! 最初は、おまえたちがアチの世界と呼んでいる別世界を侵略するための、先兵として宇宙から来たんだよ」
ガニィ・フェンリルの話だと、彼らは一機の宇宙船で様子見を兼ねて。
アチの世界に来て前線基地を作る場所を探して、ある洞窟に宇宙船で入ったと言った。
「たった一機の宇宙船でもバカにするなよ、少数先鋭の部隊だ」
ガニィ・フェンリルは、岩に食い込んだ銀色の宇宙の方に目を向けて怒鳴る。
「ごらぁ! 宇宙船を喰うんじゃねぇ!」
見ると、ハミ肉と頬ハートが銀色の宇宙を刃物でえぐり取って食べていた。
「あはっ♪ だって、この乗り物、おいしいよ」
「それは、緊急時には非常食になる食用宇宙船なんだよ! まったく下等生物は油断も隙もあったもんじゃねぇ」
ガニィ・フェンリルは、両腕のハサミをパクパクさせて話し続ける。
「一機でも侵略は楽勝と考えて前線基地を造る場所を探して、アチの世界の洞窟に入ったら。コチの世界に出てきてもどれなくなった」
ガニィ・フェンリルが、カプセル錠剤の種のようなモノを地面にバラ蒔くと、土色の肌をした人型の生き物がニョロニョロと現れた。
卵型の頭に、穴のような二つの目、口は横長の棒状穴で鼻は二本の縦線だった。
不気味な人型生物がニョロニョロ動く。
「なんですか? その気色悪いの?」
「雑兵の『キショーイ星人』だよ……あまり知能は高くない、オレたち先鋭部隊は援軍を呼ぶために、キショーイ星人数名をコチの世界の洞窟から、アチの世界へ向かわせた……しばらくして、一体のキショーイ星人が帰ってきて。オレたちが見ている前で倒れて、ウ●コに変わった……オレたちは、この異世界からもどれないと悟って眠りについた……この世界には、オレたちを魔獣呼ばわりして仲間を封印する、厄介なヤツもいたからな」
片メガネが、取り出した皮メモにメモをしながら訊ねた。
「いったい何人で、コチの世界に来たんですか?」
「キショーイ星人を除けば、ボスの『ドン・カベギワ』さま、カベギワさまの側近二名、豪将『アリャバンゴラァ』さま、そしてオレさまの五人だ……アリャバンゴラァさまは、魔獣球とかいう変なモノに封印されちまって………」
ガニィ・フェンリルが話し終わる前に、洞窟の入り口の方から声が響いてきた。
「その魔獣、こっちによこせ!」
見ると、リーダー軍団がそこにいた。
甲冑騎士が、ガニィ・フェンリル星人指差して言った。
「その魔獣の首に首輪を付けて鎖で繋いで、オレたちが飼い慣らす」
甲冑騎士の言葉に、怒るガニィ・フェンリル。
「オレさまは犬じゃねぇ!」
ガニィ・フェンリルの目の模様があるハサミから、反重力光線か引力光線みたいなモノがリーダー軍団に向かって発射され。
咄嗟に甲冑騎士は、仲間の盾の武人を自分の前方に引っ張り出して、光線の盾にする。
盾を装着した両手を揃えて、盾の武人が光線を防御したがムダだった。
盾の武人、甲冑騎士、海賊女勇者、蛮人戦士と次々に玉突き状態領で連なって。
洞窟の外に光線で吹っ飛ばされて空の彼方に消えた。
「ひぇぇぇぇぇ!」
リーダー軍団を吹っ飛ばした、ガニィ・フェンリルがルググ聖騎士団に向かって言った。
「おまえたちオレさまに協力して、ボスの『ドン・カペギワ』さまを探し出して復活させるのを手伝え……従わないと、脳にチップを埋め込んで洗脳して操るからな」
片メガネが質問する。
「チップってなんですか? お金ですか? あたしたちにお金をくれるんですか?」
「そっから説明しないといけねぇのかよ!」
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