②三回目の冒険漫遊のはじまりと新たな旅の仲間

 アルミのペンケースのような容器を持ったレミファが言った。

「科学召喚請け負い業のおっちゃんから頼まれていた実験ぜら、失敗していたら中にはウ●コが入っているだけぜら……成功しているコトを祈るぜら」

 容器を開けるレミファ。

 容器の中を覗き込む仲間たち。

「成功したぜら」

「可愛いでありんす」

「おぉ、これは? 面妖な」

「パンダーッ」

「裸……だよね、これって。小さい時に一緒にお風呂に入ったけれど、その時と形が違う」


 いきなり暗い所から、眩しい明かりの場所に出された拓実は、目を細める。

(なんか、うるさいなぁ……?)

 拓実は、狭い銀色の棺のような場所に入れられていて、数人の巨人に覗き込まれていた。

(えっ!?)

 とんがり帽子をかぶった魔女レミファ。

 赤いガイコツ顔の姉の他に、覗き込んでいたのは。

 耳が尖ったエルフの美女と、ヒゲ面の大男と、アリの触角が生えたゴリラみたいなパンダだった。

 そして、拓実は自分が全裸であるコトに気づく。

「なんだぁ!?」

 ヲワカが、ミニ拓実に挨拶する。

「はじめまして……あちきは魔矢使いのエルフ『ヌル・ヲワカ』でありんす」

「拙者は、魔法戦士の『YAZAヤザ』でござる」

「アリャパンゴラァッ! バンパン」


 姉に説明を求める拓実。

「お姉ちゃん、説明してコレなに?」

「レミファ、説明お願い」

「以前、クケ子どのの弟さんが『お姉ちゃんが往復している異世界が、どんな所か一度は見てみたい』……と言っていたのを覚えていて、科学召喚請け負い業のおっちゃんに話してみたぜら」

「それで?」


「おっちゃんは、科学召喚とは少し異なる方法で、アチの世界からコチの世界に人間を召喚できないモノかと、考えていたぜら」

 レミファの話しだと、体細胞の一部を特殊な容器で密封して、アチの世界からコチの世界へ持ち込む方法を思いついたらしい。

「おっちゃんの説明だと、成功する確率は今のところ数パーセント以下……失敗すれば拓実どのは、容器の中でウ●コになっていたぜら……成功して良かったぜら、なんでも北方地域で頻繁に行われている〝くろ~ん〟とかいう技術の応用みたいぜら」


 説明を聞いた拓実は、ペンケースのような容器の中で自分の体を撫で回す。

「この体がクローン? じゃあ、本物のボクは?」

「何も知らずに、元気に学校に行っているはずぜら」

「そんなぁ」


 ヲワカが、葉っぱを縫い合わせて拓実の服を作って、着せ替え人形のように着せてから。

 キラキラ輝く粉を拓実に振りかける。

「なに? この粉?」

「〝フェアリーの粉〟でありんす……妖精の羽が背中に生えてくるでありんす」

 拓実の背中に虫のような羽が生える、ヲワカは拓実が飛んで逃げたり風で飛ばされないように、細い魔法の蔓で拓実の胴体を縛った。

 レミファが言った。

「さあ、冒険漫遊のはじまりだぜら」



 村の道を歩きながら、クケ子がレミファに訊ねる。

「最初にどこに行くの?」

「クケ子どのがレベルアップしたので、科学召喚請け負い業のおっちゃんが、アフターサービスで、新しい力をクケ子どのに二つばかり与えてくれたぜら」

「科学召喚後のアフターサービスがスゴい……どんな力なの?」


「一つ目の力は、特定の気象条件がそろった時にのみ使える力ぜら、これは相手を驚かす程度の力ぜら……二つ目の力の方が実践的ぜら……ただ、この力を使うためには。あるモノが必要ぜら……着いたぜら」


 到着したのは、鳥カゴとか動物の檻を販売している専門店だった。

 店に入ったレミファは、カウンターで鳥カゴを頭にスッポリとかぶって、魔導書の類いを読んでいた店主に言った。

「頼んでいたモノは、できたぜらか?」

 魔導書を読みながら、店主が店の隅を指差す。

「そこにあるよ、値札に書いてある代金を料金箱に入れて……勝手に持っていきな」

 店主が指差した先にあったのは人間が一人分入いれるサイズの、角柱形の檻だった。

 店主が言った。

「檻のサイズは、あの娘の体型を測って作ってある」

 レミファが料金箱に代金を入れて。アリャパンゴラァが、角柱形の檻を背負って店を出た。


 また、歩きながらクケ子がレミファに質問する。

「このおり、なんに使うの?」

「ある人物が入るためのモノぜら、クケ子どのの新たな力になる者ぜら」

「その、ある人物って誰?」

 のどかな山の風景が広がる牧歌的な村。

 その村から続く道の遥か先には、肩や頭に樹木が生えた巨大なゴーレムが二体並んで、膝抱え座りをした【双子ゴーレム山】が見えた。

 クケ子たちが、のどかな村を歩いていると。ガシャガシャと金属が触れ合う音と共に、聞き覚えのある威圧的な声が、背後からクケ子を呼び止めた。

「まさか、リーダー軍団の仲間と待ち合わせた合流場所に向かう途中に、赤いガイコツと遭遇するとはな」

 甲骨配下のリーダー軍団の一人、全身西洋甲冑の『甲冑騎士』だった。


 剣を抜く甲冑騎士。

「ここで、赤いガイコツを倒せば手間がはぶける、赤いガイコツを倒してオレがリーダー軍団の軍団長だぁ!」

 冷静な口調で、レミファが甲冑騎士に質問する。

「そういえば、リーダー軍団の他のメンバーが『例のモノを見つけたらしい』という噂を聞いたぜら」

「なにぃ? あいつらもう『封印されていた魔獣』を見つけたのか? まさか、オレさまを除け者にして魔獣を操ったりはしていないよな」


 冷ややかな口調で喋るレミファ。

「ふ~ん、そうだったぜらか。探していたのは封印された魔獣だったぜらか……何かを探しているらしいとだけは聞いていたぜら。これで目的がわかったぜら」

「貴様! だましたな!」

「こんなのに引っ掛かる方が、アポだぜら」

 兜の横穴から湯気を出しながら、怒り狂って襲いかかる甲冑騎士。

「しゅねぇ! 赤いガイコツ!」

 すかさず、アリャパンゴラァが。

「ゴラァァァ!」と、ショルダーアタックを甲冑騎士にぶちかます。

 吹っ飛ばされていく甲冑騎士。

 飛んできた甲冑騎士に、今度は走ってきた『アクヤク・レイジョー』が甲冑騎士をショルダーアタックで

明後日の方向に吹っ飛ばした。

「どすこい!」

「どぎゃあぁぁぁ!」

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