第23話 久々の帰還




 お昼前、川を越え山を越えやっとたどり着きました。周りは生い茂った森。本当に懐かしいですよ。白雪の国シュネー私の愛しの故郷。おっと自己紹介が遅れました。皆さん初めましてこんにちはこんばんはお久しぶりです葬儀屋のラディアです。






 今私は紫色の長袖ワンピースを着ています。長袖なのは夏なのに結構風が吹いていて涼しいからです。関係なしにいつも長袖ですけどね。しかい残念ながら国に入ればそうでもないとは思いますが。






 六年以上ぶりの帰還ですか、、、。実は一年程前に近くを訪れたことがあるんですが国には入りませんでしたね。変わった所はあるんでしょうか?私は国に入ります。いつものように門番さんがいます。銀の兜を被ったの方でした






「ようこそ白雪の国シュネーへ、帰省ですか?観光ですか?定住ですか?」






「帰省です。」






「名前はなんとおっしゃいますか?」






「ラディアと申します。」






「少々お待ちください。」


兜を被った門番さんは室内に入って行きました。






「ラディア様、いつ頃出国なさいましたか?」






「六年以上前ですね。」






「六年以上前ですか、、、。ありました!ラディア様ですね。」


そのままですね。もっとこうなんかありませんかね?






「写真と一致しました。お帰りなさいませ。」






「はい、ただいま戻りました。」






 私はそのままジープを走らせます。行先は自分の家です。六年以上もいなかったので取り壊されてしまったかもしれません。それでも我が家なので帰りたいんですよ。お父さんとお母さんとの思い出が詰まった場所ですから。






 しばらくジープを走らせています。私の家は少し坂を上った国外れにあり、国門とは真逆な街角の少し大きな家です。ですから帰るのに少し時間がかかります。昔は大きな家だと思っていたのにホテルや旅館城などの見すぎでしょうか?感覚が麻痺してしまいました。子供だったから大きく感じたってのもあるかもしれませんがね。






「あれ?」






 取り敢えず我が家に帰った私はかなり驚きました。なんとまだ家が残っていたのです。嬉しい誤算ではありましたが。






 私は鍵を開けて庭に入ります。余談ですがあの後エテルナ先生がお母さんの葬儀を行ってくださったみたいです。






 私はお母さんの葬儀に出席できなかったので世間的には親不孝者かもしれません。でもわかってほしいです。愛する人の葬儀に出席するのはかなりの勇気がいるということを。私のはそんな勇気ははありませんでした。






 私は荷物をジープから降ろします。すみませんねしばらくお休みしますのでジープさんも休んでください。荷物を降ろしていると身に覚えのない変な箱がありました。”あなたの身が危険にさらされたときにだけ開けなさい”という張り紙まであります。なんなんですかねこれ?まあ危険になればわかりますか。






  鍵を開けて家に入ります。ドアを閉じると目のあたりがジーンとしてきました。十一年前まではお父さんもお母さんが生きていたのに、、、。それにしても六年以上もほったらかしにしていたのに綺麗です。埃っぽさもないですし以前住んでいた時と全く変わりません。誰かが住んでいるのかと一瞬思いましたがそれはないと思いました。なぜなら家具や食器が六年前と変わらないものでしたから。






 住んでいるとしたらいくらなんでも食器は替えるはずです。考えられるのは不法滞在か誰かが掃除してくれたかのどちらかです。私たちの食器が大好きな趣味の変わった人のがいるかもしれませんが。まあ考えても仕方ありませんよね。






 取り敢えずしばらく休んだら私はお母さんのお墓参りに行くことにしましょう。六年以上もたったの一度も会いにいけませんでしたからね。悪いとは思ってるんですよ。






 私は再びジープに乗ってお墓参りに行きます。以前エテルナ先生と会ったときお墓の場所を教えてもらいました。お墓についました。百段以上ありそうな階段が目の前にあります。長い階段を上らなければなりませんね。






 私は長い階段を鳥居をくぐり上り終えて周りを見渡します。日本と同じ墓石で沢山のお墓がありました。お母さんのお墓はどこにあるんでしょう?






 取り敢えず周ってみますかこうしてみると沢山の人のお墓があるんですね。一人一人に大切な物や人、思い出があると考えると悲しいですね。葬儀屋なので尚更。






 お母さんのお墓の前にやって来ると目を閉じて手を合わせている空色の長い髪を伸ばした女性がおりました。






「すみません失礼ながらどなたでしょうか?」






「せ、先生、、、。」






 空色の髪を伸ばした女性は私をみて抱きついてきます。






「え、え、え?」


私はパニック状態に陥ってしまいました。






「先生、生きておられたんですね。死んだと聞いていますがそんなわけないと信じていました。」






「えっと、、、。」


やっと思考回路を取り戻しましたがこの方は何を仰っているんでしょうか?先生、ということはお母さんのお弟子さんじゃないんでしょうか!






「何ですか先生。六年以上も音沙汰なしで何をしてらっしゃったんですか?」






「すみません、もしかしてお母さんのお弟子さんですか?」






「え、あ、え?お母さん?ということは先生達の娘さん?、、、」






「わかりませんがラディアと申します。」






「あーーーやっぱり先生達の娘さんだったあーーー。」


何ですかこの人最初と語尾はあーーーなんですか。変わってますね。






「なにか失礼なことを考えなかった?」






「えーと。何のことやら。」






「アハハハ!人をからかう時の顔も誤魔化す時の顔も先生と一緒だね。ホントに先生達の娘さんなんだ。」






「やっぱりお母さんのお弟子さんなんですね。」






「そっか。先生達は本当に亡くなってしまったんだね、、、。」






「ええ。私がしっかりと看取りました。」






「そう、、、。お母さんのほうね。先生もひどいよね。長い間一緒にいたのにこんなにあっさり別れちゃうなんて。」






「お母さんは誰にも辛い思いをさせたくなかったんだと思います。だから何も言わなかったんですよ。」






「そうよね。先生はそういう人だよね。」






「ええ。そういえば名前まだ伺ってませんでしたよね?」






「ああ、ごめんごめん私の名前はアメリア。君のお父さんとお母さんの第二弟子だよ。」






「改めましてラディアです。よろしくお願いいたします。」






「ラディアは先生達と同じように葬儀屋になったの?」






「はい。紫色の葬儀屋になりました。」


私はポケットから紫色のペンダントを出してアメリアさんに見せます。






「先生達や私たちと同じ色ね。」






「そうなんですか。ということは紫の弟子を輩出したエテルナ先生は優秀な先生ってことですね。」






「へーエテルナが師匠なのね。ノエラも優秀な弟子を持てて幸せだろうね。」






「アメリアさんは弟子は取っていないんですか?」






「教えてあげられる自信がないからね。独り身の方が自由でいいからってのもあるけど。」






「私は一年、たった一年一人でいただけでずっと寂しかったですけどね。」






「私だって寂しいさ。先生たちといたときは賑やかで騒がしくてちょっとうるさいなと思っていたけどね。一人になるとうるさいと思っていた日々も思い出になるの。」






「・・・。一人でいられる人ってすごいんですね。」






「何をいまさら、君だって若いのに葬儀屋として過ごしてきたんだよね。それだけでも充分すごいと思うよ。」






「ありがとうございます。アメリアさんは今日はなにで来られたんですか?」


照れくさいので話をすり替えます。






「徒歩だよ。」






「え、徒歩?」






「うん。なにか変だった?」






「どうやって、、、、。もしかしてアメリアさんって今私の家を使ってますか?」






「うん。先生の昔言われたし、遺言書にも書いてあったからね。」






「なるほど何であんなに綺麗何だろうとずっと疑問でした。」






「使わせてもらってるよ。まあその話は帰ってからしようか。」






 私とアメリアさんは二人でお母さんのお墓に手を合わせます。






 お母さん私は精一杯生きてます。大変なことは多くありありましたが色鮮やかな人生を生きています。だから心配しないでくださいというのは無理でしょうから見守っていてください。見守られながら私はこれからも生きていきます。






 さて伝えたい言葉も言いましたし帰るとしましょうか。じゃあねお母さんまたいつか来るから待っててね。私はアメリアさんと一緒に階段を下りジープに乗ります。運転はもちろん私。いつも通りそのままアクセルを踏みジープを走らせて行くのでした。




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