第18話 葬儀屋の過去語りⅠ



 周りは白色の霧に包まれている辺り一面が全てが草木が薄暗くなるまで生い茂った木で囲まれたの深い深い森だ。前がギリギリ見えるレベルの濃い霧だ。ここを抜ければ故郷に帰れる。川を沿って走っていたら立派にそびえ立つ崖に神秘的で生命力溢れる滝があった。20メートル程だろうか。なかなか大きい。昔見た時よりも更に大きく感じる。身長はあまり変わっていないのに。落下する水が川に突き刺さる。誰も何もないので水の音が鳴り響く。ジープを降りて空気の匂いをかぐ。鼻がツンとする。冷たい。なんとも幻想的な風景だ。近くいよってみた。






 動物たちも近くにやって来る。滝の下の湖に手を入れる。冷たくて気持ちのいい。そっと口に水を注ぎ込む。ああおいしい。ずっと運転していたから疲れてきた。地面に寝そべり目を閉じる。草が茂った地面は柔らかく私を受け止めた。動物たちも寄ってくる。私はそのうちのリスを手にそっと乗っける。これは私の過去語り。今世の過去語り。最後までお付き合いくださいね?










 私は唐突に目が覚めた。全く知らない天井だった。あれここは病院?いや背丈が縮んでる。まさか転生した!!!






 可笑し過ぎて思わず心の中で叫んでしまった。前世は奪うだけだった癖に転生させるとは神も中々気分屋みたいだ。まあいいや。そんないるかどうかわからない曖昧なものを信じるほど私は暇ではない。






 上を見上げると真っ白な天井。横を向いくと白衣をきた人たちが多くいる。恐らくここは病院なんだろう。異常がないか検査でもしてるのかな。おとなしく待っているのが賢明だろう。






 転生したということはここはどんな世界なのだろうか。剣と剣が交差する世界なのかな?魔法を使う世界なのかな?それとも毎日のように戦争をするような世界なのかな?気になることが山ほどある。お父さんとお母さんはどんな人なんだろう。兄弟や姉妹はいるのかな?早くこんなところから抜け出して家族に会いたい。考えていると眠くなってきちゃった。起きた時には家族と会えているといいな。私は目を閉じて眠りについた。






 起きた時にはこれまた知らない天井だった。茶色い天井で白色のシャンデリアがついている。貴族のような立派な家だ。あれからどのくらい経ったんだろう。赤ちゃんが寝るような壁のあるベッドで寝ていたっぽい。






「お父さん~。ラディアが起きましたよ。」






「どれどれ本当だ。おはようラディア。しかし我が子とは言えど可愛いなあ。」






「それはそうでしょう。あなたと私の娘なのだから。」






「あははは。そうだね!ミルク持ってきたから飲ましてあげよう。」


そういい茶髪なお父さん?と乙女色の髪をしたお母さん?は私を持ち上げて液体を飲ませた。うっ、粉っぽい。


これを毎日飲まないといけないのか、、、。私は少し落ち込んだ。






 しかし私はぶっきらぼうな子供だった。お父さんとお母さんが私を楽しませようと色々なこととしてくれたけれども笑い方がわからない。愛想笑いですらすらどうやればいいのかわからない。だってそうだろう。前世では笑える状況ではなかったから。






 そんな私だったけれど。話はちゃんと聞いていた。お父さんとお母さんと話してみたかったから。(兄弟や姉妹はいなかったけれど。)だから必死に勉強した。それで生後1年で話せるようになった。お父さんもお母さんも驚いてた。






「すごいよ。ラディアは天才だ!」






「そうですね。真面目にお話を聞いている様子でしたけれどここまで早く話せるようになるなんて物心初めからついていたみたいですね。」






「ああ。本当に驚いたよ。将来が楽しみだね。」






「そうですね。ちゃんとした子に育てていきましょうね!」


会話がわかるというのは実にいい。お父さんもお母さんも葬儀屋の仕事をやっているらしい。向こうの世界よりもこの世界は死というものを大事にするらしい。だから葬儀屋というのは大変名誉ある仕事だそうだ。






 私は4歳になった。ここは白雪の国シュネーという国らしい。家の外を見た。雪は降っていないけど。今思えばかなり大きな家だ。庭もついている。鏡を見てみる。自分で言うのもあれだが雪のように透明な肌、美しい乙女色の髪、紫陽花の目。前世じゃ考えられない程の美人だ。毎日のように鏡の前から離れないから親から見たらおかしな子供に見えたことだろう。見かねたお父さんもお母さんは私を連れてジープを運転させて色々な所に連れまわした。






 最初はあまりにもつまらなかった。世界が嫌いな私は不機嫌に窓の外を眺めていた。曇っていた灰色の綺麗とは程遠い空だった。けれど色々な国に言っているうちに少しずつ変わっていった。お父さんもお母さんが面白かったということもあるかもしれない。






「こっちの道は右だよ。地図通りに進もうよ。」






「いいえ。こっちの道は左です。来たことがあるので知っています。」






「うーんわかったよ。運転しているのは君だから君が決めなよ。」






「ありがとうございます。それではいきましょう!」






1時間後・・・。






「またUターン!この道ずっと間違えて来たということ!?」






「・・・。そうかもしれません。どうしましょう迷いました。」






「あははは。君は昔からそうだよね。仕事の時は尊敬できるけど私生活はまるでだめだね。」






「悪かったですね。」


ムッとお母さんの頬が膨れ上がる。






「あははは。」


思わずわらってしまった。急いで口を押さえる。






「ラディア別に笑うことは恥ではありませんよ。もっとあなたの笑顔を見せてください。」






「そうだよラディア。女の子は笑っていた方がかわいいよ。」


違うんだよお父さん、お母さん私は笑いたくなかったんじゃないんだよ。でもそんなことはいえなかった。別に言う必要もないけど。






「・・・。はい。」


そういう返答しかできなかったけれど初めて家族って感じがした。幸せに慣れた気がした。






 それから私達はたくさんの国を周った。毎週家族で色々なところに行った。昔お父さんとお母さんがいった国々だそうで知り合いも多かった。でもそんなことどうでもよかった。お父さんとお母さんと一緒にいられればそれ以外何もいらなかった。そう何も要らなかったんだ。






 家の中でもお父さんは葬儀屋だから週末以外はどこかに行ってしまっていたけれどもお母さんは私を産んでから引退しているので四六時中一緒にいた。時には二人だけで色々なところにいった。その中でもお母さんさんの言ったこのセリフは印象に残っている。運転中に助手席で聞いた言葉だ。






「人生において大切なことは多くあります。例えばですね憲法だとか道徳とかですね。それらの基礎が書いてあるのは教科書です。しかし教科書にすべてのことは書いていません。なので作るんですよ自分だけの人生の教科書を。基礎だけでなく他の多くのことをまとめる。人生はその連続です。それを誰かに伝えても恥ずかしくない人生を送りなさい。そしてあなたなりの教科書を作ってみなさい。願わくばその教科書を見てみたいですね。」






「そんな簡単に作れるものなんでしょうか?」






「そうですね、、、。では私の教科書をいつか見せてあげましょう。」








 家族でご飯を食べている時お母さんが急にこう言い出した。






「ラディアはなりたいものとかあるんですか?」






 私は自信をもってこう答えた。前世だったらこんなに自信をもって答えることはできなかったかもしれない。成長しているのかな。


「葬儀屋になりたいです。」






「え!?葬儀屋になりたいっていった?」






「?。はい、、、。ダメでしょうか?」






「その逆さ!僕はとっても嬉しいよ。無理矢理言わせたわけじゃないよね?」






「はい。お父さんとお母さんがカッコイイので。」






 お父さんとお母さんが顔を見合わせた。






「応援していますよ。くれぐれも無理はしないでくださいね。」






「頑張ってねラディア。」






 嬉しかった。私を大切にしてくれる人がいるのだから。5歳になった頃にはどこでいるようなの少女のようになっていた。ずっと一緒にいるからなのだろうか?しぐさなどが似ているような気がした。5歳になってレイピアを使うようになった。お母さんが昔使っていた代物らしい。どんな世界でも強盗や殺人鬼などはいるのだから強くて困ることはない。異世界無双に憧れていたのもあるけど、、、。私の口調はお母さんの敬語口調を真似して今のような口調になった。


いつも通りレイピアを振り回していたら頭の中に久しぶりに日本語が聞こえてきた。






[もしもし。聞こえますか?]


恐ろしい程流暢な日本語だった。あたりを見渡すが誰もいない。これはまさか、、、。


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